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連載:第8回 【Inside Sales Conferenceイベントレポート】

<ABMの徹底討論>手段ではなく経営戦略。問いただす、これから不可欠なアカウントベースドマーケティングの本質【Inside Sales Conference2019 winterイベントレポート】

BizHint 編集部 2020年6月30日(火)掲載
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アカウントベースドマーケティング(ABM)は、BtoBマーケティング戦略の1つ。インサイドセールスと深く関わるABMに取り組む企業は増えていますが、成果を実感できないケースもあります。ABMを成功させるポイントや仕組みは何か、ABMを提供しかつ、実践している、Sansan株式会社 久永航さん、株式会社ユーザベース 酒居潤平さんが語ります。本記事は、2019年12月5日『Inside Sales Conference2019 winter』で13:40~開催されたセッション『<ABMの徹底討論>手段ではなく経営戦略。問いただす、これから不可欠なアカウントベースドマーケティングの本質』の模様をレポートします。

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アカウントベースドマーケティング(ABM)は、BtoBマーケティング戦略の1つです。予め定義したターゲットアカウントに関する様々な情報やデータを集約・分析。アカウント別にマーケティングと営業が連携してアプローチをすることで収益の最大化を目指します。

【参考】アカウントベースドマーケティングとは?意味と必要性、メリット、導入方法やおすすめツールなどご紹介/BizHint

~この記事でわかること~

  1. ABMは経営戦略、アウトバウンドは戦術の1つ
  2. 定量と定性両方のデータでターゲティング精度を上げる
  3. 成果を出すために必要なのは、連携できる組織づくりとデータ環境づくり

ABMは戦略、アウトバウンドは戦術。ABMの肝はターゲティング

茂野明彦さん(以下、ビズリーチ茂野): ABMって要するにアウトバウンドですよね? ABMとアウトバウンドの違いについてお伺いできますか?

酒居潤平さん(以下、ユーザベース酒居): ABMは従来のファネルとは真逆の考え方です。まずターゲット企業をバイネームで決め、逆算してマーケティング施策やセールス活動をしていきます。一番重要なのはターゲティングです。社内の顧客情報やマーケティングデータを集約・分析してターゲット企業を特定し、さらにマーケティングやセールスが連携しやすい組織に再編成してLTV(顧客生涯価値)の最大化を目指すものです。そもそも、経営戦略に近いです。

つまり、「ABM」は戦略で、「アウトバウンド」は戦術。より突き詰めると、ABMで「成約確度が高く、より有効活用してくれる顧客」を特定するもの。アウトバウンドは「顧客の開拓や繋がりを強める1つの手法」だと思います。

ABMのプロセスは大きく3つあります。まず「ターゲットを決める」。次にターゲットに対してさまざまな方法でアプローチをして興味関心を持ってもらい、「エンゲージメントを高めていく」。最後は「施策の効果検証をする」。この3つを回しながら精度を高めていきます。

ターゲティングはABMの肝です。自社の本当の価値を届けられる企業をきちんと特定することが一番重要です。だから、「売上が何億円以上の企業」などのざっくりとした想定はターゲティングになりません。

ABMのターゲティングには「定量」と「定性」どちらも必要

ビズリーチ茂野: 肝となるABMのターゲティング。どれくらいの粒度で設定すればよいのでしょうか?

ユーザベース酒居: 「規模」「業界」「地域」の3つのセグメントで切るレベルの一般的なターゲッティングでは粒度が大きすぎます。同じ規模で同じ業界の同じ地域に属する企業であっても、ニーズや課題感は全く異なります。提供しているサービスがBtoB、BtoCなのかによっても変わっていきます。だから「ユーザーニーズ」、顧客の課題感でセグメントをとるのが重要です。

久永航さん(以下、Sansan久永): 例えば、富士フイルムのように業種と主力商品が異なるケースもあります。自社サービスとターゲットアカウントがフィットするか。それを見るために、過去の受注企業と一番フィットするサービスの相関も見ています。

ビズリーチ茂野: もっと綿密にターゲットを絞るためには、どんなデータが必要ですか?

ユーザベース酒居: ユーザーの情報が重要です。そもそも「なぜ使っているのか」「なぜ導入したのか」がわかること。特に導入理由には課題感やニーズが集約しています。「ユーザーの定性的な特徴に共通点があるか」を分析します。例えば、FORCASはマルケトやパードットを導入しているユーザーも多く、MAを利用する企業との相性がとても良いんです。

企業規模や業界のファーモグラフィックデータといった「定量データ」だけでなく、ユーザーニーズやセールスやカスタマーサクセスの仮説と実際の肌感など「定性データ」も重要視して、トータルで絞り込んでいます。

ビズリーチ茂野: FORCASをはじめユーザベースグループは、ユーザーインタビューやユーザー会などのイベントを精力的にやっていて顧客接点に強いイメージがあります。定性的なユーザー情報を上手く取れているのには何か理由があるのでしょうか?

ユーザベース酒居: FORCASはビジョンとして、ユーザーとの「共創」を通して未来のマーケティングを創っていきたいと考えており、ユーザーの皆さまにもこの思いを共有しています。オフラインの機会を作ったり、一緒に飲み会の場を設けさせてもらったりと、個別の繋がりも強い。草の根の活動から広がっているのだと思います。

テクノロジーを実際に使うのは人間です。人間とテクノロジーを融合させるには、「地道なことの積み重ねが必要なのかな」と思います。

ビズリーチ茂野: ユーザーのニーズを測るために何か取り組んでいることはありますか?

ユーザベース酒居: マーケ施策をやるのであれば……。手間をかけてでも僕やマーケのメンバーが直接会いに行きます。繋がりがなければ社内メンバーに紹介してもらったり、イベントに登壇いただいたユーザーから紹介してもらうこともあります。

コンテンツ作りやイベントを企画するときは「どうしたら○○さんに響くか」から逆算して考えます。生の声、しかもバイネームにこだわっています。自分が届けたい方の生の声を聞いて、ニーズを深掘りするのが重要だと思います。

あと、カスタマーサクセスチームが窓口となり、ユーザーの方々とSlackで直接やりとりが出来るようにしています。各社とのSlackチャネルがあるほかに、ユーザー全員が入っているチャネルがあり、使い方に関するご質問をいただいたり、開発要望や機能に対するフィードバックをいただいたり、気軽にコミュニケーションが取れるようになっています。色々なチャネルを作って繋がりを複数化させるのも重要です。

ABMの成果を出すには、目的とユーザー同士の繋がりがポイント


ビズリーチ茂野: ABMで成果が出る会社と出ない会社の差、何が違うのでしょうか?

ユーザベース酒居: ある意味でABMを行うのは「文化」です。だから、成果を大きく左右する要因には、「組織体制など全社的な方向性を揃える、アラインメントづくり」と「全員がコミットメントできるデータを含めた環境づくり」が大事です。

Sansan久永: 「戦略」「データ」「組織」がポイントだと思います。事業戦略に基づいて、立てたターゲットへの提案内容とABMの施策の軸がぶれていないこと。そして、提案の実施に必要なデータが揃っていること。ただ、それを実行するのはあくまで現場。なので、Sansanでは役割に応じて組織体制を変えています。

ビズリーチ茂野: 既にABMを実践するなかで、判断できるデータや分析や提案に役立つツールが足りずツールを入れるケースと、ツールの導入時に組織体を変えていくケース。どちらがベストプラクティスでしょうか?

Sansan久永: ツールはあくまで手段。なので、目的が設定されていることが重要です。仮に組織体まで落とし込めなくても、戦略とツールの導入の軸がぶれていないことが必要です。

ユーザベース酒居: どちらのタイミングかは、目的によると思います。

サイボウズ式で青野社長とSlack Technologies, Inc.のCEOスチュワート・バターフィールドさんの対談記事「オープンコミュニケーションってそもそもなんで大事なの?──Slack CEOと情報共有について考えた」のなかに、「Slackを導入すれば『自然に』社風が変わるのではない。Slackは『社風を操作する』1つの方法だ」とありました。

FORCASも同じです。導入することで売上が自然に上がるわけではなく、文化や体制を操作できる1つの方法。関わる人たちが主体となって、社内を新しい方向性にリードできる機会を提供しているのだと思います。

実際、最初から目的意識を持ってツールを入れるのは結構難しい。なので、形から入るのもアリだと思います。まずはツールを入れて、「どうしたら使えるか」を考える。それを発火点に徐々に体制へも波及させていく。「逆算して成果を出せるのでは?」と思います。

ビズリーチ茂野: ちなみに僕がITツールの導入を決めるポイントのひとつに「コミュニティがあるかどうか」があります。ユーザーコミュニティがあると「こんな使い方があるよ」など、指南してもらえる。良いものは徹底的に真似たほうが近道だと思います。

ユーザベース酒居: 仰るとおりです。マーケティング施策として制作するコンテンツの王様は、やはりユーザーの導入事例。似た課題で悩んでいる他社の取り組みは参考になると思いますし。サービスを提供するベンダーサイドができることには限界があるので、ユーザー同士の繋がりは重要だと思います。

明確なターゲティングは、社内コミットメントとリソースの効率化にも繋がる

ビズリーチ茂野: サービス提供開始まもない時期(受注企業の傾向もあまり見えていないフェーズ)で、ABMを行うのはアリですかナシですか?

ユーザベース酒居: 難しい所ですね……。実体験がありターゲットが明確にみえていたらアリですが、安直にABMを行うのはNGだと思います。プロダクトとマーケットがフィットしていないなか、仮説だけでターゲットを固定して攻めるのは機会損失です。

FORCASでも、マーケティングを立ち上げて半年は顧客が少なく、アプローチできそうなお客様もほぼいない状態でした。まずはデータを取るためにアプローチができた企業の情報をベースにマーケティングを行い、ABMの体制に移行しました。

顧客の課題を満足させる製品(プロダクト、サービス)を提供し、それが適切な市場に受け入れられている状態(プロダクトマーケットフィット)ができていることは、施策による収益に直結するだけでなく、コミットメントにも影響します。だから、ターゲットを決める際に顧客関係を整理してデータ分析を行います。ターゲットセグメントの受注企業とアプローチ済みの企業群であるハウスリストを比べ、それぞれの商談率と商談からの受注率の過去平均を出します。FORCASでは優先順位に応じてターゲットをTIER1~3まで3段階に分けています。TIER1の受注率はTIER2と3と比べても圧倒的に高い。「確かにTIER1を狙うしかないよね」と社内でも同意がとれやすいです。

それに、ターゲットを絞るとリソースが集中でき、逆に受注は増えます。FORCASでは4半期毎にターゲットを更新しています。1つABMのサイクルを3か月で回すので、限られた「期間」でリソースの効率を上げるためにもターゲティングは非常に重要です。

また、TIER1~3を決めるときには、社内の繋がりの有無も見ます。例えば、ハウスリストや名刺情報、コンタクト情報のほか、ユーザベースグループでは繋がりがあるか否かなどを確認します。社内から紹介してもらうとABMはスムーズに進みやすいです。ちなみにABMへの移行後に一気に受注数が倍増したときの牽引役は「社内からの紹介」でした。

アウトバウンドで代表電話にかけるのは非常に非効率。社内に繋がりがあるなら絶対に使うべきです。

ビズリーチ茂野: お話を聞いて「データ管理が甘い」と感じている企業がABMをやろうとしても「アウトバウンドになってしまう」という感想を持ちました。

ABMは経営戦略に近いものです。定量と定性、2つのデータに基づくターゲティングが重要で。更にアプローチの効果検証をして改善していくサイクルを回しながら精度を高めていくことがマストです。特に定性的なデータはユーザーから出てくるもの。その解像度を上げるためにも組織づくりは非常に重要ですね。

写真左から、株式会社ビズリーチ 茂野明彦さん、Sansan株式会社 久永航さん、株式会社ユーザベース 酒居潤平さん

※本セッションの講演内容は2019年12月当時のものです。

(文:川畑文子 編集:上野智)

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