連載:第3回 よくわかる補助金・助成金 設備投資
エアコンの入れ替え時には「省エネ補助金」の活用を
「電気代が年々高くなり困る」「エアコンの効きが悪いとクレームが入る」「補助金があるのは知っているが面倒くさそう」などのお悩みを抱える企業は多いのではないでしょうか。省エネ補助金は今お使いのエアコンを省エネ効果の高いものに入れ替えたりする際に必要な費用を補助するものです。「補助額の上限は?」「どんな場合に対象になるの?」「いつでも申請できるの?」など、省エネ補助金に関する疑問に答えるべく、支援制度の概要と具体的な内容についてまとめました。
1.省エネ補助金とは
エアコン等空調設備投資に関わる補助金といえば、エネルギー使用合理化等事業者支援事業(通称:省エネ補助金)が最も有名です。この補助金は日本の省エネ政策の根幹をなす「省エネ法」に由来します。1973年と1979年に起こったオイルショックでの大混乱を教訓にエネルギーの効率的な利用を促進する省エネ法が制定されました。化石資源に乏しい日本で貴重なエネルギーを大切に使うため、省エネ法による法規制と省エネ補助金などの支援策により、日本は経済成長と世界最高水準の省エネを同時に達成してきたのです。
(出典:省エネルギー投資促進に向けた支援補助金について|平成30年6月 資源エネルギー庁)
では省エネ補助金とは具体的にどういったものなのかを見ていきましょう。
(1)概要
省エネ補助金は、企業が省エネのために必要な措置を講じる際に、費用の一部または全額を支給するものです。エアコンであれば、20年前に設置したものより最新の設備の省エネ性能が高くなることは容易に想像できますよね。
※以下は平成31年度に実施された省エネ補助金についての情報を一部抜粋したものです。 以降で実施される内容は公募要領の発表をもって確定となります。
補助対象事業
①工場・事業場単位での省エネルギー設備導入事業
エネルギー管理を一体で行っている工場又は事務所その他の事業場(以下「工場等」という。)において実施する次に掲げる事業(投資回収年数(注)が5年以上の事業に限る。)
(a)一般事業
省エネルギー設備への更新、改修等、計測・見える化・制御等の機能を備えたエネルギーマネジメントシステム(以下「EMS」という。)の新設により、原油換算量ベースで、省エネルギー率5%以上又はエネルギー消費原単位改善率5%以上(注)のいずれかを達成する事業
(b)大規模事業
省エネルギー設備への更新、改修等、EMSの新設により、原油換算量ベースで省エネルギー量500kl以上を達成する事業
※(c)および(d)は割愛
②設備単位での省エネルギー設備導入事業
次に掲げる設備区分に該当し、SIIが定める基準値を満たす省エネルギー性能を有する設備に更新する事業(大企業※を除く。)
(ア)高効率空調
※(イ)~(ク)は割愛
経済産業省 省エネルギー庁のHPでは上記のように書かれています。なにやら難しそうですが、「補助対象事業」とは読んで字のごとく「補助金が受けられる対象となる事業」のことです。そして、その事業は①と②の2つがあり、省エネ設備を導入すれば補助金を受けられる可能性がありますよ、という程度の理解でまずは大丈夫です。
それよりも大事なことは、「補助対象経費」つまり補助金の対象となる経費が①と②で異なるという点です。エアコンの入れ替えに使うお金でも、補助対象外の経費は支払い対象とはならないからです。
補助対象経費
①の場合:省エネルギー設備導入等に係る設計費・設備費・工事費
②の場合:省電力設備導入に係る設備費
つまり、①の場合はエアコン設置のために要した設計費、機械代、として取付工事費までが補助対象経費となるのに対し、②の場合は機械代した補助対象経費となりませんよ、ということです。
もちろん①がいいですよね。もう一度補助対象事業の①を見てみます。
次に掲げる事業(投資回収年数(注)が5年以上の事業に限る。)
(a)一般事業
省エネルギー設備への更新、改修等、計測・見える化・制御等の機能を備えたエネルギーマネジメントシステム(以下「EMS」という。)の新設により、原油換算量ベースで、省エネルギー率5%以上又はエネルギー消費原単位改善率5%以上(注)のいずれかを達成する事業
(b)大規模事業
省エネルギー設備への更新、改修等、EMSの新設により、原油換算量ベースで省エネルギー量500kl以上を達成する事業
エネルギーマネジメントシステム(EMS)とは、
1.電気などのエネルギーの使用状況を「 見える化 」する
2.「 見える化 」したエネルギーの使用状況を分析する
3.削減可能な個所を見つけ、経費削減に繋げる
このような目的で導入されるシステムを指しますが、このシステムを導入する場合は①に、しない場合は②に該当します。
EMSを導入し省エネルギー率の基準値を上回る場合は①を、EMSを導入しない場合や基準値を下回る場合は②を検討します。
お読みいただいている多くの方は②に該当すると予想されますので、以下は②を実施する前提で進めていきます。
(2)補助額はいくらからいくらまで?
補助対象経費の1/3以内、上限3,000万円、下限30万円です。つまり、100万円以上のエアコン(1台当たりではなく、設備の合計額)を導入する場合が対象となります。
仮に合計120万円のエアコンに入れ替えた場合、40万円の補助金が下りる計算になります。
(3)申請スケジュールは?
例年4月~6月の間の1ヶ月程が公募期間となっています。
注意が必要なのは、交付決定後にエアコンの入れ替え工事をしないと補助対象とならない点です。交付の決定は例年8月下旬頃ですので、9月以降に入れ替える計画を立てましょう。
(4)採択される確率は?
平成30年の省エネ補助金執行団体である一般社団法人環境共創イニシアチブが以下のように公表しています。
<1.事業区分別 申請・採択結果概要(設備単位のみ抜粋)>
<2.事業区分別 採択事業概要(高効率空調のみ抜粋)>
毎年採択率は異なりますが、平成30年では申請件数の約7割が採択されました。
(出典:平成30年度 エネルギー使用合理化等事業者支援事業新規採択事業の結果について/一般社団法人環境共創イニシアチブ)
(5)申請するメリットとデメリット
以下、メリットとデメリットについて説明します。
メリット
・設備導入コストの軽減
当然ですが、設備機器代の1/3について補助を受けられますので負担が軽減し、設備入れ替え計画が進めやすくなります。
・最新の設備機器導入による電気使用料の低下
冒頭に述べたとおり、20年前の設備と比較すると最新設備は省エネ性能に優れます。設備機器を導入することで月々の電気資料量が下がります。
デメリット
・申請作業の負荷
省エネ補助金の申請を出すためにはそれなりの事務作業が発生します。不採択となる場合ももちろんありますので、そうなると申請作業に費やした労力が浮かばれません。
・入れ替え時期が限定される
先にも述べましたが、採択後に入れ替え作業を実施しないといけません。
・一旦費用の全額を負担する必要がある
入れ替え工事が完了し、様々な報告をしたあとに補助金が入金される流れとなっていますので、補助金が入金される前に業者へは一旦全額を支払う必要があります。
・導入設備の変更や処分が難しくなる
国の補助金を受けて設備を導入しますので、申請した導入設備の変更や処分をする際は簡単ではありません。
(6)最新情報の入手先は?
現時点では次の省エネ補助金について公表がされていません。公表された場合は以下のサイトに掲載されると思われますので、公表を待ちましょう。
2.まとめ
いかがでしたか。まずはエアコン入れ替え時に補助金を使うのか使わないのかを検討することから始まるかと思います。事前にメリットとデメリットを知っておくだけで検討がスムーズに進むと思います。また、事前に補助金に関することを知っておくことでチャンスを逃さない準備ができます。
エアコンの入れ替えを検討されている企業様は、是非、省エネ補助金の活用も検討してみてくださいね。
(執筆)
株式会社プロデューサー・ハウス 花岡貴志
中小企業診断士
ファイナンシャルプランナー
宅地建物取引士
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