連載:第5回 よくわかる補助金・助成金 設備投資
照明・空調を変更することで補助金が!?「省電力補助金」をご紹介
事業をする際に必ず必要になるもの、それが電気です。毎月の電気料金の請求書をみてため息をついている方も多いのではないでしょうか。 電気料金を削減するための方法は主に2つあります。1つは、電力会社やプランを変更し、料金単価を下げる方法です。もう1つは、設備自体を省電力のものに更新し、電気の使用量を下げる方法です。 今回は、設備を省電力のものに更新する際に使える「省電力補助金」をご紹介いたします。補助金を活用しコスト削減に取り組みましょう!
1.省電力補助金について
(1)補助金の目的
省電力補助金の正式名称は「電力需要の低減に資する設備投資支援事業費補助金」です。平成31年度に、エネルギー使用合理化等事業者支援事業(通称:エネ合)をベースに新設された補助金となります。
公募要領によると、「事業者が計画する電力需要の低減に資する機器及び設備の導入に要する経費を補助することにより、各部門の省電力を推進することで、電力系統の負荷を低減し、もって、効率的に電力需給構造の強靱化を図ること」が目的です。簡単にいうと「補助金により省電力化を促進し、自然災害等が発生した際のリスクを低減すること」と考えてよいでしょう。
管轄省庁は、資源エネルギー庁です。
なお、当記事の内容は「平成31年度 省電力補助金」の公募要領を基にしています。年度により補助金内容が変更になる可能性がありますので、申請時には該当年度の公募要領をご確認ください。
(2)概要
省電力補助金は、既存設備を省電力性能の高い設備に更新することで、電力使用量を削減が見込まれる事業に対して、費用の一部を補助する制度です。主な活用例は、蛍光灯をLED照明に変更したり、エアコン等の空調機器を最新型にすることが挙げられます。 申請の単位はある程度大規模な更新となる「工場・事業場単位」、小規模な更新にも使え、申請手続きも簡素な「設備単位」に分かれており、更新内容により選択可能です。
しかし「工場・事業場単位」は、補助限度額の上限が15億円と高く、対象経費の幅が設計費、設備費、工事費と広い代わりに申請要件が複雑であり、採択件数は全体の10%程度です。 そのため、今回は多くの事業者が対象となる「設備単位」に絞ってご紹介します。 また、エネルギー関連の設備投資については、省エネルギー投資促進に向けた支援補助金(通称:省エネ補助金)が有名ですが、省電力補助金とどちらで申請するか悩むケースがありますので、その点は「(3)対象の事業」で説明します。
(3)対象の事業
平成31年度の公募要領によると、以下の3点を満たす場合に補助対象となります。
① 国内で既に事業活動を営んでいる工場・事業場等(以下「事業所」という。)において、現在使用している設備 を本事業で定められたエネルギー消費効率等の基準を満たす補助対象設備に更新する事業であること。
太字部分 がポイントであり、移転・集約等に伴う更新、新設事業所への新規導入、既存事業所内の増設、故障等で使用していない設備の更新等は対象外となります。
② 既存設備を補助対象設備へ更新して、電力使用量を10%以上削減する事業であること。
最近の設備は省電力化が進んでいるため、古い設備を使っている場合、電力使用量の10%削減は難しいことではありません。
③ 既存設備及び導入予定設備がいずれも電力のみを使用する事業であること。
これが省エネ補助金との大きな違いです。つまり、既存設備及び導入予定設備とも電力を使用する場合は「省電力補助金」の対象となり、既存設備及び導入予定設備のいずれかの設備が電力以外のエネルギーを使用する場合は「省エネ補助金」の対象となります。
(4)対象の設備
以下の設備が対象となります。
高効率照明
高効率空調
業務用給湯器
産業ヒートポンプ
業務用給湯器
高性能ボイラ
低炭素工業炉
変圧器
冷凍冷蔵設備
産業用モータ
設備ごとに省電力性能の基準値があり、基準値を満たしている設備が対象になります。 「高効率照明」「高効率空調」 で申請件数の80%以上を占めているため、照明のLED化やエアコンの入替に活用している事業者が多いと考えられます。
(5)対象となる事業者
「国内において事業活動を営んでいる法人及び個人事業主」となります。省エネ補助金が中小企業者等を対象にしているのとは異なり、大企業も対象です。 個人事業主は青色申告者が対象等、その他条件があるため公募要領にて確認しましょう。
(6)対象金額について
補助金の限度額は上限額が3000万円、下限額が30万円となっています。そして補助率は中小企業者等・大企業共通で1/3以内となっています。そして「設備費」のみが対象となる点に注意が必要です。つまり、「設計費」「工事費」といった経費は補助金額の対象外となります。
まとめると以下の通りです。
つまり、設備費で90万円以上の場合に、補助を受けられることになります。
(7)採択率は?
平成31年度の執行団体である一般社団法人環境共創イニシアチブの公表結果によると、採択率は約70%となっています。比較的採択率が高いため、トライする価値があるのではないでしょうか。
(8)申請時・交付後の注意点
申請時
- 3者見積もりが必要
- ポータルサイトに入力し資料を作成するため、ある程度のパソコン操作の知識が必要
- 公募期間が短いため(平成31年度は5~6月にかけて1ヵ月程度)、事前に書類作成の準備をしておく必要がある
交付後
- 交付決定後に発注をする必要があること
- 事業完了後の補助金交付のため、資金調達が必要になること
- 事業完了の期限があること(例:平成31年度分は2020年1月31日までに事業を完了させる必要がある)
(9)詳細の確認方法
平成31年度の執行団体は「一般社団法人環境共創イニシアチブ(略称:SII)です。当団体のホームページ上に平成31年度の公募情報等があります。令和元年度の実施は未定ですが、実施の場合は平成31年度の内容がベースになる可能性が高いため、補助金の検討をしている方は事前に公募要領を確認しておくことをお勧めします。
[平成31年度 電力需要の低減に資する設備投資支援事業費補助金|一般社団法人環境共創イニシアチブ] https://sii.or.jp/shodenryoku31/
2.まとめ
電力会社や契約プランの変更とくらべて、省電力補助金は書類の作成や申請作業といった面倒な作業が多いため、二の足を踏む方も多いかと思います。しかし、補助金を活用することにより、設備更新の費用対効果を上げることができます。 また、販売店等で申請書類の作成サポートをしてもらえる場合もあるため、照明やエアコン等の設備更新を検討しているのであれば、付き合いのある販売店等に相談してもよいでしょう。
補助金をうまく活用して、コスト削減を実現しましょう!
出典:
平成31年度 「電力需要の低減に資する設備投資支援事業費補助金」公募要領
平成31年度 「電力需要の低減に資する設備投資支援事業費補助金」新規採択事業の結果について
(執筆) 株式会社プロデューサー・ハウス 鎌市 航太郎
中小企業診断士
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