連載:第80回 経営危機からの復活
「社長のようにはなれません」で目が覚めた。組織崩壊から過去最高売上に至ったマネジメントの要諦


「経営危機に直面し、社員に転職活動を促したんです」——そう振り返るのは、シーズアンドグロースの河本英之社長。新卒採用と人材育成支援事業を展開する最中、新事業に失敗して5000万円の赤字を抱えました。組織のスリム化を図るために自主退職を促し、その結果社員は30名から3名へと大幅に減少。経営スタイルの根本的な見直しを迫られました。しかし、2024年には過去最高売上を達成。一人当たりの売上も2倍以上にすることができました。組織崩壊からV字回復を遂げるまでにどのような取り組みを行ったのか、その過程で気づいた「大切なこと」とは。詳しく伺います。

シーズアンドグロース株式会社
代表取締役社長 河本 英之 さん
2005年に上智大学経済学部経営学科を卒業。同年、株式会社リンクアンドモチベーションに入社し、採用を主とした組織人事領域全般のコンサルティングに従事。大手から中小まで600社以上の採用・育成支援を担当し、2009年には社内MVPを獲得。2010年にシーズアンドグロース株式会社を設立し、新卒採用と人材育成支援事業を展開。
「自分のようになれ」と強制していた過ちで目が覚めた
――30名いた社員が3名まで減少するという大きな危機に直面されました。どのような経緯があったのでしょうか。
河本 英之さん(以下、河本): 2017年から2019年にかけて、大きく2つの波で社員が退職していきました。最初のきっかけは、2016年からの2年間で総額5000万円の赤字を出してしまったことです。主に、新規事業に失敗したことが大きな原因で、その立て直しを図るため、社内のスリム化を目的に私から全社員へ 「うちの会社に合わないと思う人は、転職活動をしてもらっても構わない」と宣言したのです。
正直なところ、大っぴらに社員の転職活動を解禁することには強い抵抗がありましたが、「今こそ組織を一度崩して本当の意味で社員一人ひとりと向き合い、再構築するフェーズなのかもしれない」と思えたことで、実行に移すことができました。
その結果、第1波として社員30人のうち約10名が退職。それでも残ってくれた社員たちの中には「危機を一緒に乗り越えましょう」と言ってくれた者も複数人いました。その後、事業の選択と集中を徹底し、新卒採用コンサルティングの領域だけに注力。それが奏功し、2018年には3000万円の黒字化を達成することができたんです。
しかし、その直後に予想外の事態が起きました。
今度は中核メンバー5名が「危機を乗り越えて一区切りついたから」という理由で退職を申し出てきたのです。そして、その5名の退職に伴いその他の社員も10人以上辞め、 結果的に残されたのは入社3年未満の若手社員と私だけになってしまいました。 それに伴い売上も減収となりました。
――なぜ、中核メンバーは辞めていったのでしょうか?
河本: 今振り返ると、 私の「人との向き合い方」そのものが間違っていたことが原因 だと思います。創業当初から私は自信満々で 「自分の分身を作って会社を拡大するんだ」と意気込んでいました。
「自分という見本を真似れば、社員は経営者になれるはずだ」とすら思っていたんです。常に自分の経験を基準にしていたので、社員が思うような成果を出せないと 「なぜ自分ができることをできないのか。社員自身の努力が足りないのではないか」 と考えてしまっていたところがありました。
しかし、社員が次々と退職していく過程で、社会から「君のやり方は間違っている」と全否定されたような気持ちになりました。実際に 「社長のようにはなれません」と言って辞めていくメンバーもいたことで、「自分のようになれ」と強制すること自体が誤りだったことに気付かされました。
どん底から這い上がるため辿り着いた、組織改革の道筋
――どのように組織を復活させ、過去最高売上を達成するまでに会社を成長させていったのでしょうか?
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バックナンバー (80)
経営危機からの復活
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