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2018年11月1日(木)更新

二重派遣

1986年に労働者派遣法が施行されてから31年が経過し、派遣労働という働き方が世の中で定着しましたが、その裏で二重派遣という違法行為が横行するようにもなりました。労働者派遣が必ずしも企業にとって使い勝手の良い制度ではないことがこのような事態を引き起こす原因なのですが、労働者の権利を著しく侵害するだけではなく、違反した企業も法律に基づいて厳しく罰せられます。労働者派遣を行う企業や派遣労働者を受け入れる企業は、どのようなことが二重派遣に該当するのかを正確に理解したうえで、適切な対応を図る必要があります。

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二重派遣の概要

派遣労働者を受け入れた企業が、自社の業務に就かせることなく、第三者に受け入れた派遣労働者を労働力として供給する行為を二重派遣と言います。

「労働者派遣」とは

「労働者派遣」とは、派遣会社(派遣元企業)が、自らが雇用する労働者を、派遣契約に基づいて第三者(派遣先企業)のもとに派遣し、派遣された労働者が派遣先企業の指揮命令に基づいて業務を遂行する就労形態です。労働者にとっては、働く場所は派遣先企業ですが給料は所属する派遣会社から支給されるという形態になります。

この形態に関して、派遣先企業が更に別の第三者のもとで派遣労働者を働かせる行為が『二重派遣』となるのです。

【参考】二重派遣は派遣法違反ですか

【関連】労働者派遣とは?改正派遣法のポイントや注意点も解説 / BizHint HR

派遣労働者数の現状

2017年現在、全国で派遣労働者として働く人は約129万人で、雇用者全体の中での割合は2.4%となっています。2017年で少し下がったものの、2010年以降は毎年微増が続く傾向にあります。

【参考】派遣の現状|一般社団法人日本人材派遣協会

二重派遣が生まれる背景とは

二重派遣が生まれる背景にあるのは、取引先との力関係と人手不足です。 労働者派遣は、法律で定められたルールに基づいて実施しなければならないのですが、ルールを守ることで不効率な状況が生まれることを嫌った力関係が、上位の取引先からの求めに応じることで、二重派遣という構図が生じてしまうことが多くあります。加えて、派遣労働者を受け入れる側が、人手不足が原因で派遣労働者の管理が疎かになり、二重派遣という構図が生じてしまうケースもあります。

二重派遣になるケース

派遣労働者を受け入れた企業が、当該派遣労働者を第三者のもとで働かせる場合に二重派遣が発生します。二重派遣になるかならないかのキーワードは、第三者との間での契約の種類と派遣労働者に対する指揮命令の形にあります。

違法となるケース1:派遣の派遣

派遣労働者を受け入れた企業が、受け入れた派遣労働者を第三者のもとに派遣するケースです。

例えば、派遣会社A社から派遣労働者を受け入れたB社が、当該派遣労働者を人手の足りないC社に派遣し、C社から派遣手数料を得るような行為です。仮にB社が労働者派遣の許可を得ていたとしても、違法行為になります。

理由は、労働者を派遣する場合は派遣元企業と派遣労働者との間に雇用関係がなくてはならないからであり、前述のケースでは、B社と派遣労働者との間に雇用関係はないので、派遣することはできません。

違法となるケース2:偽装請負

派遣労働者が、派遣先企業が請け負った業務を遂行するために第三者のもとで働くときに、第三者が派遣労働者に対して直接指揮命令を行うケースです。

例えば、派遣会社A社から派遣労働者を受け入れたB社が、当該派遣労働者を業務請負契約を結んでいるC社のもとで働かせ、その時にC社が派遣労働者に対して直接指揮命令を行う行為です。

いわゆる偽装請負に該当する行為であり、業務請負契約が交わされている場合は、請負を依頼した側は請け負った側に対して業務の進め方に関する指示を行うことはできないのです。

IT企業における二重派遣問題

IT企業では、自社の従業員(技術者)を発注先企業の現場に常駐させて、請け負った業務に係る作業を行わせている形態が多く見られます。それに関して、自社の技術者を労働者派遣という形で現場に常駐させ、もしくは派遣会社から受け入れた技術者を現場に常駐させる形があるのですが、その時に発注企業側が直接指揮命令を行うことが横行しています。

発注企業側にとっては、自分たちのペースですべての作業を進めていくことが効率的であり、仕事をもらう側のIT企業がその要望を断れないことが、この問題の根底にあります。

二重派遣にならないケース

違法パターンその2のケースで、派遣先企業の人間が、第三者のもとで働く派遣労働者に対して指揮命令を行う場合は、違法とはなりません。即ち、派遣労働者を管理する人間が、派遣労働者が働く現場に常駐しながら業務指示を行うという形態です。

業務を遂行する場所が第三者のもとであるというだけのことであり、請け負った業務を自分たちの裁量に基づいて遂行する形は崩れていないので、まったく問題はありません。

「派遣」と「請負」、「出向」の違い

「派遣」と「請負」の違いは、労働者が就労する現場での指揮命令の形にあります。

「派遣」の場合は、就労する現場の人間が派遣労働者に対して直接指揮命令を行うことができます。一方、「請負」の場合は、就労する現場の人間は派遣労働者に対して直接指揮命令を行うことはできません。業務の遂行方法は、請負先の裁量に任せるしかないのです。

「派遣」と「出向」の違いは、「派遣」の場合は、労働者は派遣先企業とは雇用契約を結びませんが、「出向」の場合は、労働者は出向先企業とも雇用契約を結びます。「出向」には、出向元企業と労働者が雇用関係を維持したまま出向契約に基づいて出向を行う「在籍出向」と、出向元企業と労働者が雇用関係を解消したうえで出向を行う「転籍出向」とがあります。

二重派遣によるリスク

二重派遣は、派遣先の現場で働く労働者に対して様々な不利益を及ぼします。

労災事故が発生した場合の責任の所在が曖昧になる

派遣労働者が労災事故に巻き込まれた場合、派遣会社(派遣元企業)の労災保険を使用することになりますが、労災保険の給付を申請する時には派遣先企業による証明が必要です。

しかし二重派遣であった場合、派遣先企業が、「どのような場所で、どのような業務に従事していて、どのような経緯で労災事故が発生したのか」を証明することが難しくなります。労災事故発生の状況を正確に掌握しておらず、加えて二重派遣であることが明らかになることを嫌うからです。

そうなると、派遣労働者が労災保険の給付を受けることができなくなるケースが発生します。

派遣労働者の労働環境悪化

派遣労働者は、本来労働者派遣契約の中で定められた労働条件に基づいて、契約業務を遂行します。しかし二重派遣の場合は、実際の就業先は労働者派遣契約に拘束されないことにより、契約内容から逸脱した働き方を派遣労働者に要求することが一般的です。

そうなることで、派遣労働者が不利な働き方を強いられる要素が生まれてしまいます。

手数料上乗せによる賃金引き下げ

派遣労働者が手にする賃金は、派遣先企業が派遣元企業に支払う単価から派遣元企業の手数料(マージン)を控除した金額となりますが、二重派遣が行われた場合、中間にいる仲介会社が手数料(マージン)を控除することにより、派遣労働者が手にする賃金が少なくなってしまいます。

例えば、C社が時間当たりの単価3,000円でB社を経由して派遣会社A社から派遣労働者を受け入れるという二重派遣の構図があった場合、B社が自社の手数料として20%を控除した金額でA社に再発注する形を取ってしまうと、派遣労働者が手にする時間当たりの賃金は2,400円からA社の手数料を控除した金額になってしまいます。

二重派遣による罰則

二重派遣は労働者供給事業の一つと見なされ、法律で厳しく罰せられます。

労働者供給事業とは

労働者供給事業とは、労働者を供給する契約に基づいて、労働者派遣以外の形態で自社の支配下に置いた労働者を、他の事業者のもとで働かせることを言います。

例えば、派遣会社A社が雇用関係のある派遣労働者をB社の指揮命令下で働かせるのは、れっきとした労働者派遣です。しかし、A社が雇用せずに支配下に置いた労働者をB社で働かせるケースや、A社とB社双方が雇用関係を持つケース、派遣の派遣を行うケースは労働者供給事業に該当します。

双方の企業が雇用関係を持つケースとして気をつけなければならないのが「在籍出向」です。出向の中身が業として行われている(ビジネス的なものとして反復継続的に行われている)と見なされた場合は、労働者供給事業であると判断されます。

これら労働者供給事業は、労働組合等が厚生労働大臣の許可を受けて無料で行う場合以外はすべて違法行為となります。

二重派遣で適用される罰則の内容

二重派遣に対しては、職業安定法違反、労働基準監督署違反による罰則が適用されます。

職業安定法違反

職業安定法の中で労働者供給事業を禁止しています。二重派遣は労働者供給事業に該当するので、1年以下の懲役もしくは100万円以下の罰金が適用されます。

労働基準監督署違反

二重派遣において仲介する会社が、手数料を控除したうえで他の会社で派遣労働者を働かせた場合、労働基準法が禁止している中間搾取(ピンハネ)に該当し、1年以下の懲役もしくは50万円以下の罰金が適用されます。

罰則の対象者

二重派遣に関する罰則は、当然のことながら、関わった側のすべてが罰則の適用を受けます。仲介した会社と実際に派遣労働者を働かせた会社だけではなく、大元の派遣会社(派遣元企業)も、二重派遣が行われることを知りながら派遣契約を結んだ場合は罰則が適用されます。

中間搾取に関しても、大元の派遣会社や実際に派遣労働者を働かせた会社がそのことをあらかじめ知りながら加担していたのであれば、罰則の対象となります。

二重派遣の回避策

労働者派遣の業務を本業としている企業はもちろんのこと、IT企業を始めとした客先に常駐する業務に対応するために労働者の派遣を行っている企業は、二重派遣を防止するための対策を講じる必要があります。

二重派遣を防止するための対策として考えられるのは、次の三点です。

派遣元企業による直接雇用

労働者派遣には、派遣先が決まる都度派遣元企業と派遣労働者とが雇用契約を結ぶ一般派遣と、派遣元企業が常時雇用している労働者を派遣する特定派遣があります。一般派遣の場合は、派遣元企業と派遣労働者との結びつきが弱いため二重派遣に関するリスクが生じやすくなるので、直接雇用した労働者を派遣する特定派遣の形態を選ぶ方が賢明だと言うことができます。

なお、今まで一般派遣は国の許可が必要であり、特定派遣に関しては届け出だけで事業を行うことができましたが、平成30年9月30日以降に行う派遣事業に関してはすべてが許可制となるため、現在特定派遣で対応している企業が今後も労働者派遣に関係する事業を続けていく場合は、早期に一般派遣の許可を取得する必要があります。一般派遣の許可を取得するためには、いくつかの基準を満たす必要があります。

【参考】許可要件の詳細:一般労働者派遣事業許可申請センター

派遣労働者の就労実態の確認

派遣元企業が派遣労働者の就労実態の確認をこまめに行うことが、二重派遣その他違法な派遣を防止することに対して効果的です。派遣契約で定めた場所で働いているか、派遣契約で定めた業務に従事しているか、業務請負の場合は請負現場で発注先企業から直接指揮命令を受けていないかなどを、派遣労働者に対する聞き取りも交えながら定期的に行う必要があります。

このことは、労働者派遣を行う場合は派遣元責任者を選任し、選任された派遣元責任者は派遣労働者に対して必要な助言や指導を行い派遣労働者から受けた苦情に対応しなければならないという義務を果たすことにもつながります。

派遣契約の厳格化

二重派遣は、派遣労働者を受け入れる側の悪意や認識の甘さが原因で生じます。よって、労働者派遣に関する契約を結ぶときに、法令遵守の徹底や二重派遣に当たらないことなどの確認を行い、不正の抑止につなげることが効果的です。

加えて、労働者派遣契約の中で、派遣元責任者が派遣労働者の就労実態の確認を行うための体制を取り決めることで、不正を抑止する効果が一段と高まります。

まとめ

  • 二重派遣は違法行為であり、厳しく罰せられる。
  • 二重派遣を行うことで、労働者側に、労災給付が受けられなくなる可能性がある、賃金、その他の労働条件が劣悪になる可能性がある、といったリスクが発生する。
  • 労働者の派遣を行う場合は、直接雇用した労働者を対象とし、労働者派遣契約を交わす際に不正を抑止するための確認を行い、派遣後も派遣元事業主が随時派遣労働者の就労実態の確認を行うことで、二重派遣を防止するための効果が生まれる。

<執筆者>大庭真一郎 中小企業診断士・社会保険労務士(大庭経営労務相談所)

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