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2017年11月15日(水)更新

改正派遣法

2015(平成27)年に、労働者派遣法が改正されました。ところで、労働者派遣法とは、いつ、どのような目的で制定された法律なのでしょうか。労働者派遣法の歴史についておさらいしておきましょう。

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1.労働者派遣法とは

労働者派遣法の正式名称は、「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律」です。初めて労働者派遣法が制定されたのは1985年です。1970年代後半以降、ビル清掃やコンピュータ操作などの分野で今の人材派遣会社のような企業が発展していきました。これらの事業は、職業安定法の要件を満たさない違法な労働者供給事業である疑いが強かった反面、労働者派遣事業を認めるべきという市場のニーズは強かったことから、一定の法規制の下で認められることとなったのです。

労働者派遣法が制定された当初は、派遣が可能な業種は限定されていました。

1999年までは、「ソフトウェア開発」「翻訳」「財務処理」などの26の専門的業務のみが労働者派遣法で派遣が可能とされていましたが、1999年の改正で、原則自由化され、現在は、法令上列挙された業務(港湾運送業務、建設業務、警備業務、医療関係業務)以外のすべての業務について労働者派遣を行う事ができるようになっています(ネガティブ・リスト方式)。

労働者派遣法は比較的頻繁に改正されていますが、本稿では2015(平成27)年の法改正について説明します。

2.改正労働者派遣法のポイント

労働者派遣法の法改正のポイントとしては4つです。順に説明していきます。

①派遣社員の上限勤務年数が「3年」に

2015年に労働者派遣法の改正が行われ、それまでの期間制限(いわゆる26業務について派遣制限の上限を設けず、26業務以外の業務に対する労働者派遣について派遣期間の上限を原則1年、最長3年とするもの)が見直されました。

改正前は、派遣社員の中でも専門的なスキルが必要と認められていた26業務には、雇用期間の定めはありませんでした。26業務に該当する場合、派遣期間を延長し続ければ、同じ企業で長く派遣社員として働き続けることができたのです。

他方、26業務以外の職種にはという派遣期間の制限(原則1年、最長3年)がありました。

改正で、これまで期間制限を受けなかったいわゆる26業務の区分は廃止。業務内容によって期間制限が異なる制度から大きく変化し、派遣先事業所単位、派遣社員個人単位の2軸の期間制限になりました。施行日以後に締結/更新される労働者派遣契約では、すべての業務に対して、派遣期間に次の2種類の制限が適用されます。

派遣先事業所単位の期間制限

同一の派遣先の事業所では、改正法施行日以降、その事業所で最初に締結した改正法契約の開始日(起算日)から3年間、派遣の受入が可能です。派遣先が3年を超えて受け入れようとする場合、派遣先の過半数労働組合等の意見を聴く必要があります。

労働者個人単位の期間制限

同一の派遣労働者を、派遣先の事業所における同一の組織単位に対し派遣できる期間は、3年が限度となります。たとえ派遣会社が変わっても、同一の組織単位(たとえば経理課)で3年を超えて同一派遣労働者を受け入れることはできません。

なお、次に該当する派遣労働者は、期間制限の対象外です。

  • 派遣会社に無期雇用される派遣労働者を派遣する場合
  • 60 歳以上の派遣労働者を派遣する場合
  • 終期が明確な有期プロジェクト業務に派遣労働者を派遣する場合
  • 日数限定業務(1か月の勤務日数が通常の労働者の半分以下かつ 10 日以下であるもの)に派遣労働者を派遣する場合
  • 産前産後休業、育児休業、介護休業等を取得する労働者の業務に派遣労働者を派遣する場合

後に述べる「労働契約申込みみなし制度」や派遣終了後の「雇入努力義務」とも関連しますが、派遣期間を業種を問わずに「一律3年」に限定した背景には、「正社員の数を増やしたい」という政策的な狙いがあります。

さらに知っておきたいこととして、事業所単位の期間制限、個人単位の期間制限の両方に、いわゆる「クーリング期間」の考え方が設けられます。

事業所単位のクーリング期間

労働者を派遣終了後に再び派遣する場合、派遣終了と次の派遣開始の間の期間が3か月を超えないときは、労働者派遣は継続しているものとみなされます。逆にいえば、派遣空白期間が3か月を超えた場合には、事業所単位の期間制限はリセットされ新たに3年がカウントされます。

個人単位のクーリング期間

派遣先の同一の組織単位に、同一の労働者を派遣終了後に再び派遣する場合、派遣終了と次の派遣開始の間の期間が3か月を超えないときは、労働者派遣は継続しているものとみなされます。逆にいえば、派遣空白期間が3か月を超えたときは、個人単位の期間制限はリセットされ新たに3年がカウントされます。

これらのクーリング期間は、派遣期間制限を潜脱するために用いられるべきではありません。派遣可能期間の延長手続回避を目的として、「クーリング期間」を空けて派遣の受入れを再開する、本人が希望しないのにクーリング期間を設けて再び同一組織単位の業務に派遣する、といったことは法の趣旨に反するものとして行政指導等の対象になりえます。

②労働契約申込みみなし制度

2012年の労働者派遣法改正で設けられましたが、2015年改正法施行に合わせて2015年10月から施行されている制度です。

派遣先が次に掲げる違法派遣を受け入れた場合、その時点で、派遣先が、派遣社員に対して、その派遣社員の派遣会社における労働条件と同一の労働条件を内容とする労働契約の申込みをしたものとみなされます。

  • 労働者派遣の禁止業務に従事させた場合
  • 無許可の事業主から労働者派遣を受け入れた場合
  • 期間制限に違反して労働者派遣を受け入れた場合
  • いわゆる偽装請負の場合

期間制限違反については、事業所単位・個人単位の2つの期間制限のどちらか一方だけ違反した場合でも、労働契約申込みみなし制度の対象となります。

③派遣社員の雇用の安定とキャリアアップ

雇用の安定

以前より、派遣社員の「安定雇用」が叫ばれてきました。今回の改正では、派遣会社および派遣先の企業に対して「雇用安定措置」が義務化されました。

派遣会社には、同一の組織単位に継続して3年間派遣される見込みがある派遣社員について、以下の4点が義務付けられました。(1年以上3年未満の派遣社員については努力義務)

  1. 派遣先への直接雇用の依頼
  2. 新たな派遣先の提供
  3. 派遣会社での無期雇用
  4. その他安定した雇用の継続を図るための措置

つまり、3年という期間が定められている場合にも、派遣社員が期間終了後も安定して働けるような措置が求められているのです。

キャリアアップ

派遣社員は正社員に比べキャリアアップの機会が少ないと言われています。これは、派遣社員自身が必ずしもキャリアアップに対する高い意識を持っているわけではないこと、派遣社員が企業研修の提供対象外となっていることが多いこと、派遣先が派遣社員の継続的な雇用への転換・派遣対象業務以外の能力の発展を必ずしも期待していないことなどが原因です。

改正労働者派遣法では、派遣会社は、派遣社員に対して、

  • 段階的・体系的に必要な知識や技能を習得するための教育訓練
  • 希望者に対するキャリア・コンサルティング

等を実施することを義務付けました。

均等待遇の推進

同じ仕事をしている派遣社員と派遣先の労働者とで同じ取り扱いをする均衡待遇に関して、新たに規定が設けられ、さらに推進されています。

  • 派遣会社は、派遣先で同種の業務に従事する労働者との均衡を考慮しながら、賃金の決定、教育訓練の実施、福利厚生の実施を行うよう配慮する義務があります。(改正前からの責務)
  • 派遣会社は、上記の待遇の確保のために考慮した内容を、希望があれば本人に説明する義務があります。派遣社員が説明を求めたことを理由として不利益な取扱いをしてはいけません。
  • 派遣会社に無期雇用される労働者と有期雇用される派遣社員との間の通勤手当の支給に関する労働条件の相違は、不合理なものではいけません。
  • 派遣先は、派遣会社が派遣社員の賃金を適切に決定できるよう、必要な情報を提供するよう配慮しなければなりません。
  • 派遣先は、派遣先の労働者に対して教育訓練を実施する場合、派遣会社から求めがあったときは、派遣社員に対してもこれを実施するよう配慮しなければなりません。
  • 派遣先は、派遣先の労働者が利用する食堂など一定の福利厚生施設については、派遣社員に対しても利用の機会を与えるよう配慮しなければなりません。
  • 派遣先は、派遣料金の額の決定に当たっては、派遣社員の就業実態や労働市場の状況等を勘案し、派遣社員の賃金水準が、派遣先で同種の業務に従事する労働者の賃金水準と均衡の図られたものとなるよう努めなければなりません。

④2つの派遣事業者が1本化

2015年改正前まで、派遣会社は「一般労働者派遣事業」(許可制)と「特定労働者派遣事業」(届出制)とに区別されていました。今回の改正で2つの区分が廃止され、すべての労働者派遣事業は、新たな許可基準に基づく許可制となりました。

3.結局得なの?改正の影響

労働者派遣法の改正は、派遣会社・派遣先・派遣社員にとって、どのようなメリット・デメリット等の影響があるかをまとめました。

派遣会社への影響

派遣法改正により派遣会社が受ける影響として、事業の一律許可制、派遣社員や派遣先に対する義務が増えるなどデメリットに思える点があります。けれども、長期的な派遣が可能になったり、従来の法律で煩雑とされていた派遣社員の契約管理などが楽になる面もあります。

派遣先への影響

派遣先の受ける影響として、条件を満たせば長期的に同一派遣社員を雇えるようになるのは魅力的です。

派遣社員への影響

派遣社員への影響としては、3年の期間制限が重要です。直接雇用される機会が増えるという点ではメリットですが、これは、3年で職場を変えなければならないかもしれないというデメリットともなります。

4.派遣法改正で問われる派遣社員への対応

2015年の労働者派遣法改正によって、派遣会社および派遣先がどのように対応していくか注目されます。

例えば、3年という期間制限について、3年経過後に正社員として雇用するのかどうか。キャリアアップのためにどのような制度設計をするのか。企業の派遣社員に対する考え方が問われていると言えるでしょう。

【関連】派遣・契約社員が無期雇用申込み可能に?2018年問題とは? / BizHint HR


<監修>

岡 英男 弁護士(大正法律事務所)

京都大学大学院法学研究科修了・法務博士(専門職)。2007年より弁護士登録。独立行政法人国際協力機構(JICA)長期派遣専門家として、モンゴル国最高裁判所での勤務を経て、2016年、大正法律事務所設立。日本弁護士連合会国際交流委員会幹事、神戸学院大学経済学部・非常勤講師を務める。(2016年現在)


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