連載:第3回 採用管理システムの必要性と選び方
「どこまで求める?」採用管理システムのデータ分析機能(後編)
BizHintでは、人事・採用に関わる方々のニーズに、より的確にお答えするため、新企画「人事担当者座談会」シリーズをスタートしました。
この企画は、毎回特定のテーマについて実務経験をお持ちの方々にお集まりいただき、歯に衣着せぬ、率直なご意見を交わしていただきながら、その内容を記事化するものです。
第1回のテーマは「採用管理システム」。前編では「採用管理システムはなぜ必要か?」というテーマについて、そして中編では自社の採用活動に合ったシステムの選び方について、急成長企業6社の採用担当者にお話を伺いました。
後編では、「採用管理システムのデータ分析機能に求められるものは何か?」というテーマについて参加者に伺います。
採用管理システムのデータ分析機能はこう使われている
ここまで新卒・中途採用それぞれにおいて、採用管理システムに求められる要件を見てきました。では「HRテック」のなかでも注目度の高い人事データ分析について、参加者はどの様に考えているのでしょうか?
話を伺うなかで見えてきたのは、「そもそも採用活動において、 分析に適したデータが手に入る部分と、手に入りづらい部分が有る 」ということでした。
手に入りやすいデータの代表的なものは、「エージェント」や「候補者」といった、採用活動に関わる関係者ごとのパフォーマンスに関する数値です。
エージェントごとの書類通過率や紹介数を評価して、社内でランク付けし、その結果により利用するエージェントを変えたりしています(交通)
この例に見られるように、「どのエージェント経由で採用が決定したのか」「どの媒体からの応募は質が高いのか?」などの問いに対しては、応募から内定・入社までのデータを蓄積し、分析することで答えることが可能です。
また、参加者以外の読者からもパフォーマンス分析の重要性に関する意見が届いています。
職種・採用納期・難易度別にどの手法が最適なのかを分析する こと、またその 結果に基づき、どのようにヒトやカネを再配置するかを決める ことは重要なコア業務です(印刷)
「分析の結果を使って同アクションするか」は人事の腕が問われるところとなりそうです。
一方で難しいのが、選考プロセス自体についての分析です。
中途採用では、候補者が応募してきた職種と入社するときの職種がずれたりしますし、ステップも人それぞれ。
職種もステップもどこに行くかわからないなかで『この職種の一次面接通過率は……?』と分析しても意味がありません(EC)
つまり(特に中途採用においては)優秀な人材を採用するためにフレキシブルに採用フローを組み替えることが求められ、そのために「〇次面接」といった「ステップごと」の分析はそもそも効果的ではないのです。
また次のような意見も、データ分析機能を重視している開発元や、これからシステムを選定しようとしている企業にとっては注目すべきものでしょう。
採用マネージャーの立場からすると、経営陣への報告のためにデータのエクスポート機能は重要。
経営陣は『自分達が必要だと考えるKPI』に合わせてサマリしたレポートを求めてくるので、システム側に分析機能があっても、結局エクセルで自社向けのレポートを作ることになる(金融)
マネジメント層からは、例えば、「目標採用人数に対して達成の見込みがあるか」「採用活動のボトルネックはどこにあるのか」などについてサマリを求められるケースが多いようですが、この分析は結局のところ、エクセルなどで行うのが一般的なようです。
こうした事情もあり、「そもそも採用管理システム自体の分析機能はあまり重視していない」という、次のような意見も多いようです。
Talentioは分析には向いていませんが、API経由でデータを取り出せるのでデータをGoogleスプレッドシートに落とし込んで、Googleデータスタジオに反映しています(広告)
今後はこうなる?採用管理システムの未来
しかし、採用管理システムに求められるのは、本当に比較的シンプルな分析だけなのでしょうか?人事データ分析への関心の高まりを考えると違和感も残ります。
そこで座談会の最後に「自社の採用活動のレベルをさらに上げるには何が必要か?」という質問を投げかけてみました。
それに対する回答として印象的だったのは 「採用の進化には面接ログの可視化が必要」 や 「可能ならボイスレコーダーを置いて、面接官と候補者の会話を記録したい」 という意見でした。
採用活動では社員が業務の合間に面接官を務め、候補者を選考することが一般的です。
しかしながら「自社についてどの様に説明し、候補者の意向を上げるか」「面接で何を聞くか?」「回答をもとにどう評価するか?」といった点は面接官に一任されているケースが多いのではないでしょうか?
面接官によって質問が異なるため、当然のことながら候補者の回答にも違いが出てきます。また候補者の回答内容が詳細に記録されていることも稀ですから、 「何を聞いてどう見極めたのか?」という重要なポイントについて、“分析可能なデータがない” のが現状なのです。
結果として「面接官毎の見極めバラツキ」や「どのタイミングで、どの候補者に誰を会わせるべきか?」といったポイントについては、まだまだ改善の余地があるようです。
社長の熱量が高いことが悩みです。彼と話すと大体の候補者が影響されてすごくポジティブで大きなことを話し、社長の評価も高くなる(笑)。
でも、ほかの人が会うと全然自社にフィットしていないので結局採用が見送りになるケースがあります(交通)
世界中の人事から、データ分析や心理学、統計学など最新のテクノロジーを最大限活用した事例として注目されているGoogleでは、面接での質問内容や順序を標準化し、面接官毎の見極め精度を分析していることが書籍『ワークルールズ』でも紹介されています。
採用管理システムのさらなる進化のためには、現状手に入るデータから考えるのではなく、 「採用活動において、改善ポテンシャルの大きな課題は何か?」という視点 から、 「その課題に答えを与えることのできるデータをいかに用意するか?」という発想 が必要なのではないでしょうか。
日本の採用管理システムに求められる進化
参加者以外の読者からも「自社採用活動のレベルをさらに上げるために必要なもの」について意見を募ったところ、日本における採用管理システムの進化を求める声が寄せられています。
米国では、採用システム上の過去データを分析・モデリングして、転職者データベースから自社にマッチする人材を自動レコメンドすることが進んできている。日本もそうなっていくべき(WEBサービス))
システムに登録したレジュメの文字を解析し、データとして蓄積してほしい。その結果LinkedInなどから自社に合った候補者を探してきてほしい(通信)
システムによるレコメンドが磨かれている企業とそうでない企業では、採用できる人材の質や採用スピードに大きな差が出てくる可能性もあるでしょう。
日本企業と海外企業の間で、「採用力の差」が起因となり「競争力の差」が広がっていくことすら想定されます。
今、日本のHRテックには、現在採用管理システムが提供している「管理・分析」の機能だけではなく、そもそも「誰を採用したらよいのか」という人事業務のコアをテクノロジーで支えることが求められているといっても過言ではないでしょう。
座談会を終えて
「採用管理システム」をテーマとした今回の記事では、座談会での対話をもとに、システムの必要性、「そしてどのように採用管理システムを選ぶべきか?」について考察しました。
座談会を通じた、採用管理システム選定における重要なポイントは以下の5点です。
- 人材獲得競争が激化するなか、採用のコア業務により注力することが求められる
- ノンコア業務である採用管理は、システムで質の向上と効率化を両立すべき
- 新卒・中途それぞれの要件を満たし、関係者にとって使いやすいシステムを選ぶ
- 「誰向けの、どの様な改善にに繋がる分析か?」という視点でデータ分析を行う
- 今後のさらなる進化のためには、現在は取得できていないデータこそ重要
採用管理システムは今後も、人材採用にさらなる改善を求める現場の声に応えながら進化していくことでしょう。BizHint HRでは今後も利用企業、開発会社の双方に取材を続けながら、この領域の進化を応援していきます。
今回の参加企業が使う採用管理システム(紹介ページへのリンク)
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バックナンバー (3)
採用管理システムの必要性と選び方
- 第3回 「どこまで求める?」採用管理システムのデータ分析機能(後編)
- 第2回 「どうやって選べばいいの?」急成長企業の人事が語る採用管理システムの選び方(中編)
- 第1回 「採用管理システムって本当に必要?」採用の最前線で活躍する担当者の視点(前編)