連載:第7回 流通・運輸
物流業界のDX推進取り組み状況を調査してわかった「人材不足」と「既存システムの課題」
物流業界では、「物流の2024年問題」(※1)に代表されるように、ドライバー不足や環境規制対応など、多くの課題を抱えており、業務効率化や生産性向上を実現するDXに期待が寄せられています。物流業界のDXでは、サプライチェーン全体での最適化が求められますが(※2)、取引データを扱う商流と、モノの流れを扱う物流を連携させるため、物流システムの構造は 複雑化しやすく、これまでに築いた複雑なシステムで保守性に問題があると、DX推進の妨げになる恐れがあります。また、中小運輸業のIT導入の割合は45.5%で、全業種のうち2番目に低いとの調査もあります。(※3)これらの背景から、株式会社SHIFTでは物流業界のDX推進取り組み状況の調査が行われました。
※1 働き方改革法案が物流事業従事者へ2024年4月以降に適用され、時間外労働時間に上限が規定されることによる人手不足やコスト増加などの諸問題。
※2 国土交通省 「総合物流施策大綱(2021 年度~2025 年度)」
https://www.meti.go.jp/press/2021/06/20210615003/20210615003-1.pdf
※3 商工中金 「中小企業のIT導入・活用状況に関する調査」[2021年1月調査]
https://www.shokochukin.co.jp/report/research/pdf/other202101.pdf
物流業界におけるDX推進の取り組み・実施状況 DX推進に取り組む企業は半数以上
「取り組みが完了した」「現在取り組んでいる」「取り組む予定がある」とした回答は56%でした。IPA 「DX白書2021」(※4)における、業界横断での調査では『日本でDX推進に取り組んでいる企業は約56%』と報告されています。本結果から、物流業界においても同様の取り組み状況であり、DX推進が遅れていないことがわかりました。
※4 IPA 「DX白書2021」https://www.ipa.go.jp/files/000093706.pdf
DXを推進する上で、既存システムの保守性に加え、人材不足が課題になっている
「IT人材が足りない」「DX推進のノウハウをもった人材がいない、少ない」「推進できる体制がない」の回答が57%に及び、人材面の課題を抱えている企業が多いことがわかりました。次いで「レガシーシステムがボトルネックになっている」「既存システムの運用に手一杯」が27%を占め、複雑な物流システムがDX推進の妨げになるのではないかという仮説にもつながります。
人手不足の課題に対してはインフラ基盤の変更やデータ統合を伴う最新技術を導入
クラウド、IoT、AIが多くの回答を集め、新しいテクノロジーが導入または検討されていることがわかりました。これらはインフラ基盤の変更やデータ統合を伴うものがほとんであることが予想されますが、既存システムが複雑化している状態を放置している場合、特に、多くのアドオンやカスタマイズを伴う状況ではDX推進の妨げになりえます。
基幹システムにおいて複雑化・サイロ化の課題を抱えている
「ソフトウェアのアドオン・カスタマイズにより複雑化」が33%で最多。次いで「既存システムが事業部ごとに構築されて複雑化(サイロ化)が29%と「2025年の崖」(経済産業省DXレポート)(※5)での指摘と類似した状況が確認されました。特に、基幹システムがサイロ化していると、全体最適が難しく、新しい取り組みを進める上でも管理コストが増大する恐れがあります。
※5 経済産業省DXレポート~ITシステム「2025年の崖」の克服とDXの本格的な展開~ https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/digital_transformation/pdf/20180907_01.pdf
調査概要
調査手法:インターネット調査
調査対象:物流業界の企業に所属する、経営・ビジネス企画、ソフトウェア・システム開発に携わる役職者
有効回答数:420名
調査実施時期:2021年12月上旬
プレスリリース https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000049.000018724.html
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