社長就任も倒産寸前、ズタボロの社員アンケート。V字回復は1％の積み重ねから

株式会社マスナガ
代表取締役　森 弘国（もり ひろくに）さん

1981年生まれ、熊本市出身。北海道東海大学芸術工学部卒業後、家具メーカーで設計職に従事。2007年に父の経営する株式会社マスナガに入社。2011年に取締役専務に就任し、2012年より現職。

株式会社フライク 代表取締役　大瀧 龍（おおたき りょう）さん

大企業でシステムエンジニア、営業支援を経験し、地元福岡の中小企業に営業職として転職。その後、freee株式会社にてクラウド会計ソフトの九州支社長・広島営業所長を経て、2019年11月に株式会社フライクを設立。企業が本来必要なITシステムを見極めるために、社内の業務フローや課題特定、ITツール・システム選定、導入後の伴走支援を実施し、企業のIT参謀役として活躍。中堅・中小企業や士業事務所、ベンチャー企業まで幅広くクライアントをサポート。

承継時の自己資本率1％以下。ギリギリの会社を立て直すために

――貴社の歴史と、社長就任の経緯を教えてください。

森弘国さん（以下、森）： 当社は昭和24年に、母方の祖父が創業。最初は知人の伝手でバリカンを売るところから始まりました。戦後の物入りな時代、徐々に建材やネジなどの工具を扱うようになり、商社として事業を拡大していきます。一時は東京や大阪にも支店があったようです。

しかし、祖父のあまりの人の良さからいろいろなことが起こってしまい…結果的に会社は思うようにいかなかったようです。その後、祖父の娘だった母が父と結婚し、父が‟マスオさん”の形で後継者となりました。

私が会社を継ぐことは自然な流れでした。子供の頃から「後継者」と聞かされていましたので。かといってすぐに家業に入ったわけではなく、北海道の大学で工業デザインの勉強をし、その後家具の設計会社に就職しました。

ただ、その会社が非常にブラックで…。そこでドイツ留学を目論み、留学資金を貯めるという名目で実家に戻りました。

しかし突如、時代・情勢的な背景からドイツへの留学話がストップ。時を同じくして、それまで父の右腕として二人三脚で会社を切り盛りしていた当時の専務が交通事故で亡くなってしまいました。

突然ブレーンを失った父を側で見ていて、「自分が力にならなければ」と思い、家業へ。大袈裟ではありますが、何か運命じみたものを感じたことを覚えています。

――森さんが入社された当時、会社はどのような状況だったのでしょう？

森： 私の入社は2007年なのですが、当時は経営陣のほとんどが親族でいわゆる「家族経営」の会社。社員は12名ほどで、ほとんどが50〜60代のベテラン社員でした。

2011年に専務となり、翌2012年に社長に就任。 事業承継した時にはまだまだリーマンショックの影響を引きずっていて、債務超過ギリギリの状態でした。自己資本比率は1%以下で、「とにかく収益！」 ということで頭がいっぱいでした。

匿名アンケートでズタボロに。「人に会う」という仕事が理解してもらえない。

――そうした状況をどう打破していくのでしょうか？

森： 「人・組織」と「システム」。この2方面で取り組みました。

まず「人・組織」について。事業承継すぐは、社員の気持ちが私に向いていないというか、「やはり父を見ているな」と感じていました。まずは、その意識を変えなくてはいけないと思い、個人面談をしたり、意見を吸い上げるための匿名アンケートを取ったりしましたね。

――匿名アンケートとは？

森： 「意見箱」を常設して、個人が特定できない形で投函してもらいました。結果はまあ…ズタボロでした（笑）

――どのような事が書かれていたのですか？

森： わかりやすいもので言えば、 「外で遊んでるんでしょ」「飲み会ばかりでいいですね」 といった内容です。