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連載:第6回 流通小売の未来

世界最先端レベルのAI活用・超大型スーパー。首都圏初上陸の店舗に見る儲かる仕掛け

BizHint 編集部 2020年9月16日(水)掲載
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「現時点で、スマートショッピングカートやAIカメラといったIoT機器を数千台規模で運用している小売企業は、世界でも我々だけだと自負しています」。九州を地盤に主に1000坪強の大型店を多店舗展開し、全国に251店舗(2020年3月末)を有するトライアルカンパニーは、最先端のデジタル技術を店舗に集結させて、顧客の買物体験と店舗オペレーションの改革を進めている。その最新店舗が初めて首都圏に登場した。その見どころや裏側をリポートする。

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Amazon Goをはじめ、コンビニで進むスマート店舗化

大型スーパーである「スーパーセンター トライアル」をリポートする前に小売店舗のデジタル化について簡単に触れておきたい。最先端のデジタル技術を駆使した店舗といえば、真っ先にAmazon Goが思い浮かぶだろう。その存在が日本に伝えられた2017年から18年にかけて、あるコンビニチェーン本部のトップが、Amazon Goが搭載した画像認識による決済システムを、興奮を持って語っていたものだ。注視すべきは、同業者の動向ではなく、こうしたイノベーションにあるのだと。

その後、同じ発想に基づく店舗を、ローソンとJR東日本の子会社が開設している。ローソンが「ローソンゴー」を2020年2月に川崎市にある富士通の社内で実証実験を行い、JR東日本系の会社は2020年3月、新設された高輪ゲートウェイ駅構内に「TOUCH TO GO」を一般公開している。

これら日本版Amazon Goは、店内に設置されたカメラやセンサーが入店客を捕捉して、手に取った商品を専用アプリのIDと紐づけて、お客の退店時に商品バーコードのスキャンなしで決済が完結するシステムである。 この開発により、レジのキャッシャーが不要となった。

Amazon Goとローソンゴーは、入店時に専用アプリを立ち上げるのに対して、JR東日本系の「TOUCH TO GO」は、交通系ICカードを出入り口でタッチするといった違いはあるものの、 これらに共通する目的は、お客側から見るとレジ待ちをしないストレスフリー、店側から見るとレジ要員が不要となるコスト削減にある。 これら3店舗は、売場面積の違いはあるが、業態としては「コンビニ」にくくられている。


(左)ローソンが進める最新デジタル店舗、通称「ローソンゴ―」 (右)JR東日本の子会社が開発した「TOUCH TO GO」

首都圏に初出店の超大型「スマートストア」。スーパーセンタートライアル長沼店

コンビニ同様、レジ待ちなしのストレスフリーと、レジ要員のコスト削減は、トライアルカンパニーにとって目的の一つではある。しかしながら同社は、その領域にはとどまらず、 小売部門とIT部門が一体となった「流通情報革命」を目指す としている。メーカーや卸売業との協働による、オープンイノベーションを進めていくとする壮大な構想を掲げている。

2020年7月3日に改装オープンしたスーパーセンタートライアル長沼店(千葉市稲毛区)は、同社の最先端デジタル技術を結集した最新店舗であり、2018年2月に福岡市に開設した「スーパーセンタートライアル アイランドシティ店」からスタートしたトライアル版「スマートストア」の首都圏での初のお披露目となった。 世界の小売業を見渡しても、最新テクノロジーで武装した、トップランナー級の店舗 であり、トライアルが唱える「流通情報革命」の現地点を知る上では格好の教材になるであろう。

その象徴ともいうべき存在が「レジカート(スマートショッピングカート)」である。トライアルのデジタル技術を最も分かりやすく買物体験に具現化したもので、お客が自分でスキャンしながら買物ができる、タブレット端末の付いたレジカートである。2年半前のトライアルアイランドシティ店から導入を始めて、21店舗に導入を完了している(2020年7月末時点)。

入口に整理されたレジカート「スマートショッピングカート

筆者がトライアル長沼店で実際に経験した入店から退店までを順を追って説明したい。入口から入ると、通常のカートとは別にレジカートが並べられている。その横に吊るされているプリペイドカードを1枚選び、そばに設置されているスキャナーでカードをスキャン、カードに記載されているピンコード、住所、氏名、生年月日、連絡先を入力して、現金をチャージする。登録を完了した後、カードをレジカートのバーコードリーダーにかざして、カートとお客(筆者)をひもづけて買物がスタートする。

レジカートの導入効果はトライアルの試算によると、来店頻度で13.8%の効果がある(画像はトライアルスーパーセンター大野城店)

トライアルによると、導入している既存店において、4割以上のお客がレジカートを選択しているという。実際、オープン2カ月目の長沼店の様子を見た感じでも、この数字通りであろう。

店内では手に取った商品を、カートの取っ手の下部にあるバーコードリーダーにかざして、前部のカゴに放り込んでいく。直接商品をかざすのが困難な大きな商品は、バーコードリーダーを取り外して、商品のバーコードにリーダーをかざすことも可能である。

商品バーコードを貼付していない商品、特に一部の野菜や果物については、タブレットの「バーコードのない商品」をタッチすると、各カテゴリーの当該商品が画像入りで表示されるので、その画像をタッチすれば処理できるようになっている。

売場でチョイスした商品を、次々とスキャンしていくと、商品名と価格、合計金額がタブレット画面に表示されるので、家計を考えた計画的な買物ができるというものだ。また、商品をスキャンしていく過程で、関連する推奨商品や、ポイントの付与倍率が5倍、10倍と変わるお得な情報が表示される。あるいは、購入しなくても、タブレット上の「クーポンを探す」をタッチすれば、各カテゴリーで、お得な推奨商品が提示される。

おにぎりをスキャンすると、他の米飯がレコメンドされた

筆者が、手巻きおにぎり149円をスキャンすると、かつ重、サラダ3点盛り、握り寿司の盛り合わせの三つの商品が画像入りで表示された。おそらく、おにぎり一つで食事を済ませるお客は稀であり、家族の買物を想定したとすれば妥当なレコメンド機能である。こうしたレコメンド機能は、現状ではスキャンした商品自体と関連づけられているほか、 お客の購買履歴からAIによるレコメンドも発信している という。

また、この長沼店からは既存のレコメンドを、もう一段進化させて、 一部商品をスキャンすると料理レシピも表示 するようにしている。商品を提供しているサントリー酒類によると、その日の献立や購入するものに合わせてお酒を薦めることが必要だとして、同社のウイスキーをスキャンすると「角瓶に合う簡単おすすめレシピ」の画像が表れ、レシピのQRコードが出てくるような仕組みにしている。お客がレシピを読んで、食材や調味料を新たに買い求めれば、買上点数アップの効果も得られるだろう。

専用ゲートを通過して精算終了、有料レジ袋はここで購入

一通り商品をカゴの中に入れると、ウォークスルー型の専用ゲートを通過して買物を終了させる。ゲートの前で、会計ボタンをタッチした後は、スキャンの忘れがないかのチェックを受ける。最後にレジ袋の要不要をタブレットで指定し、必要であれば枚数を確定し、その場でレジ袋をカートに入れてゲートを通過する。その際、カートの足元に付いたバーコードが読み取られ、合計金額を記したレシートが受け取れる。

トライアルの試算によると、各種レジの会計処理時間は、いわゆる一般のセルフレジが125秒、有人レジが75秒なのに対して、レジカートが平均32秒と、スムーズな買物、ストレスフリーの面では群を抜いている(アイランドシティ店2019年21週実績)。 レジカートは売場で商品をピックアップするのと同時にバーコードリーダーにかざすため、会計処理時間を格段に早める ことを可能としている。

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