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連載:第12回 総合 2020年1月~3月

「従業員数と従業員エンゲージメントの関係」を定量的に分析した研究結果を公開

BizHint 編集部 2019年11月27日(水)掲載
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「中小ベンチャー企業と大企業では組織運営の在り方が異なる」とは言うものの、これまで定量的にその差分を示したデータは存在しなかった。株式会社リンクアンドモチベーション(本社:東京都中央区、代表:小笹芳央)の研究機関であるモチベーションエンジニアリング研究所は「従業員数と従業員エンゲージメントの関係」に関する調査を行い、その関係を定量的に分析し、従業員数によって異なる組織運営の在り方を考察した。

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調査概要

【調査対象】
2015年1月~2019年7月にエンプロイーエンゲージメントサーベイ(※1)を実施した649社(回答人数30人以上の企業)(※2)

(※1)社会心理学を背景に、人が組織に帰属する要因をエンゲージメントファクターとして16領域に分類し(図1) 、従業員が会社に「何をどの程度期待しているのか(=期待度)」、「何にどの程度満足しているのか(=満足度)」の2つの観点で質問を行うサーベイ。エンゲージメントファクターにはそれぞれ4つ、計64の項目が設定されており、回答者はそれぞれの期待度、満足度を5段階で回答する。その回答結果から「従業員エンゲージメントの偏差値」であるエンゲージメントスコア(以下ES)を算出し、エンゲージメント・レーティング(ER)として整理している。 (図2) (※2)2015年1月~2019年7月に複数回実施した企業は最新実施データのみを採用。

【調査方法】 帝国データバンクの従業員数に基づき企業を分類

調査結果

① 従業員数が多いほど、従業員エンゲージメントは低くなりやすい。

・従業員数とES・ERの関係
従業員数が1~100人、101~300人、301~1000人、1001人~の企業に分類すると、従業員数が多いほど従業員エンゲージメントは低くなりやすいことがわかる。特に、ERがA~AAAの企業の比率は、従業員数が多いほど低くなっている。従業員数が1〜100人の企業はA~AAAの比率が他の従業員規模と比べて最も高いのと同時に、DD~DDDの比率も 最も高い。

② 従業員数が多いほど、従業員エンゲージメントを高めるためには、ミドルマネジャーが部下の意欲や個性を引き出すことが重要になる。

・従業員数が多いほどESとの相関が高くなるエンゲージメントファクター
エンゲージメントファクター16領域のうち、従業員数ごとの、ESと相関が高い10位を(表2)に示す。従業員数が多いほど、直属上司の部下に対する「情報収集」とESとの相関は高くなる一方で、「情報提供」は相関が低くなる。「情報収集」には、部下の業務状況や個性、意思の把握などが項目として設定されている。「情報提供」には、部下に顧客ニーズや部署の目標、役割分担を伝えることなどが項目として設定されている。
この結果より、相対的に従業員数が多いほど、ミドルマネジャーが部下の意欲や個性を引き出すことが重要になると言える。

③ 従業員数に関係なく、従業員エンゲージメント向上には、「全社的な連帯感」「メンバーの目標達成意欲」「戦略目標への納得感」など、従業員の統合に向けた働きかけが重要である。

・従業員数別、ESと相関が高い10項目
エンゲージメントファクター16領域に紐づく64項目のうち、従業員数ごとの、ESと相関が高い10項目を(表3)に示す。

従業員数に関係なく、「全社的な連帯感」「メンバーの目標達成意欲」「戦略目標への納得感」はESと高い相関を示している。この結果から、従業員数に関係なく、従業員エンゲージメント向上には、従業員を統合するための働きかけが重要になると考えられる。

「休日や就業時間」の満足度を高めても、従業員エンゲージメントはあまり高まらない。

・従業員数別、ESと相関が低い10項目 同様に、従業員数ごとの、ESと相関が低い10項目を(表4)に示す。従業員数に関係なく、「業界内での影響力」「財務状態の健全性」「話題性や知名度」「研修制度の充実度」「IT環境の充実度」「休日や就業時間」はESと低い相関を示している。中でも、働き方改革において重要な要素と考えられている「休日や就業時間」は、従業員数が多いほど相関はやや高まってはいるが、従業員エンゲージメント向上にはあまり寄与しないと言える。

結論

従業員数が多いほど、従業員エンゲージメントを向上させることは難しい。

複雑性や多様性を取り込み、従業員エンゲージメントを向上させる鍵は、部下の意欲や個性を引き出し、全体方針と統合することが出来るミドルマネジャーの育成にある。

今回の調査結果から見えてきたことは、従業員数が多い企業ほど、従業員エンゲージメントが低い傾向にあるということである。特に高ES企業の割合は、従業員数が多いほど目に見えて低くなっており、大企業の従業員エンゲージメント向上が一筋縄ではいかないことを示している。

では、従業員が多い大企業では、従業員エンゲージメントをどのように高めればよいのか。従業員数ごとのエンゲージメントファクターとESの相関順位を調べたところ、従業員数が多いほど、上司の「情報収集」というエンゲージメントファクターのESとの相関が高くなっていることがわかった。これは、従業員規模の拡大に伴い、個が埋没していく危機感を従業員が抱いており、だからこそ、一人ひとりの個性と向き合い、意欲を引き出すミドルマネジャーが必要だということである。

加えて、従業員規模に関係なく、従業員エンゲージメントを高めるためには全社的な統合が重要であり、休日や就業時間はあまり寄与しないことがわかった。つまり、どれだけ従業員規模が拡大しようとも、全体方針と統合する働きかけをしていかなくてはならないということである。従業員規模の拡大に伴い、組織が複雑化、多様化することを考えると、その統合難易度は格段に難しいものとなるだろう。

今回の分析では、大企業の従業員エンゲージメント向上の難しさが、「複雑性や多様性への適応」と「統合の働きかけ」の同時実現にあることを示した。そしてその複雑性や多様性を取り込みつつ、全体方針と統合させるミドルマネジャーの重要性を改めて浮き彫りにした。

プレスリリース
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000245.000006682.html

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