連載:第1回 よくわかる補助金・助成金 健康経営
ストレスチェックしていますか?~ストレスチェック助成金のご紹介~
今、話題の「健康経営」を推進させるための助成金を紹介するシリーズ。第1回は50人未満の事業場でストレスチェックを行うための助成金をご紹介します。
1. はじめに
みなさまは「アブセンティーイズム」、「プレゼンティーイズム」という言葉を聞かれたことはあるでしょうか。
最近、健康経営において注目されてきた言葉なのですが、「アブセンティーイズム」とは、何らかの病気によって会社を休む状態のことを言い、「プレゼンティーイズム」とは、出勤はしているものの体調が優れず、生産性が低下している状態のことを言います。どちらも労働生産性の損失として考えられており、その損失コストは、高リスクレベルの従業員(※)では年間172万円も発生していると言われています。もしも高リスクレベルの従業員が二名いたら、年間344万円もの損失が発生していると考えられます。企業にとっては、非常に大きな損失になっていることがわかります。
欧米を中心とした数多くの研究によれば、特に「プレゼンティーイズム」による労働生産性の損失の方が「アブセンティーイズム」よりも大きいといわれています。さらに「プレゼンティーイズム」の原因として考えられるのは、慢性疲労症候群、うつ病、腰痛、頭痛、花粉症等が挙げられています。このような状況の中、2015年12月に施行された「ストレスチェック制度」では、50人以上の従業員がいる事業場には、毎年1回、医師や保健師等によるストレスチェックを行い、従業員にフィードバックすることを義務化しました。ただし、50人未満の事業場については努力義務とされています。
しかしながら国内企業の8割は小規模事業者であるため、努力義務ということで片づけてはならないと思います。小規模事業者においてもしっかりストレスチェックを行いたいものです。
※高リスクレベルの従業員とは、健康リスク9項目の評価において「5項目以上のリスクあり」と判定された従業員の事をいいます。
2. ストレスチェックについて
「そもそもストレスチェックって何?」「どのようにするの?」と疑問をお持ちの方が多いと思います。ストレスチェックとはどのようなチェックなのか、また、どのように行うのかをご紹介したいと思います。
(1)ストレスチェックとは
「ストレスチェック」とは、ストレスに関する質問票(選択回答)を会社が作成し、労働者自らに記入してもらい、その質問票を実施者が集計・分析することで、労働者自身のストレスがどのような状態にあるのかを調べる簡単な検査です。
労働者は自身のストレスの状態を知ることで、ストレスをためすぎないように対処したり、ストレスが高い状態の場合は医師の面接を受けて助言をもらったりすることができます。
また、会社側では高ストレス状態にある従業員の仕事を軽減する措置を実施したり、ストレスを軽減するように職場の改善につなげたりすることで、「うつ」などのメンタルヘルス不調を未然に防止するための取り組みにつなげることができます。
(2)質問票はどうするの
使用する質問票は、以下の種類の質問が含まれていれば、特に指定はありませんが、何を使えばよいか分からない場合は、国が推奨する57 項目の質問票を使いましょう。
(質問に必要な項目)
①ストレスの原因に関する質問項目
②ストレスによる心身の自覚症状に関する質問項目
③労働者に対する周囲のサポートに関する質問項目
国が推奨する質問票は以下のホームページからダウンロードすることができます。
なお、英語版もありますので、外国人労働者に対しても行うことができます。
URL:https://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/anzeneisei12/index.html
(参考)国が推奨する質問票の例
(3)誰がするの
ストレスチェックを実施する者は、医師、保健師、厚生労働大臣の定める研修を修了した歯科医師、看護師、精神保健福祉士、公認心理師の中から選ぶ必要があります。外部委託することも可能です。実施者は、労働者に配った質問票を回収します。
(4)回収後はどうするの
実施者は回収した質問票を元に個々人のストレスの程度を評価します。その後、ストレスの程度の評価結果、高ストレスか否か、医師の面接指導が必要か否かを、実施者から直接本人に通知します。
(5)結果を元にさまざまな対処を行う
フィードバックの結果、本人から医師の面接指導を希望すると申し出があった場合は、早期に面接指導を実行します。会社は、就業上の措置の要否を医師から意見聴取を行って対処していきます。さらに、全体集計されたものを分析し、職場改善を行っていかねばなりません。
3. ストレスチェック助成金について
ストレスチェック助成金とは、派遣労働者を含めて従業員50人未満の事業場において、ストレスチェックを実施し、医師からストレスチェック後の面接指導等の活動の提供を受けた場合に、それらに要した費用に対して上限を定めて助成するものです。
(1) 対象となる方
医師と契約し、次の措置を実施した労働者数50人未満の事業場が対象になります。 ① 年一回のストレスチェックを実施した場合 ② ストレスチェックに係る医師による活動について実施した場合
※「ストレスチェックに係る医師による活動とは」 医師が、
・ストレスチェック実施後に面接指導を実施すること
・面接指導の結果について、事業主に意見陳述をすること
(2) 助成の内容
助成対象となる項目と助成額は以下の通りです。
(3) 申請の期限
申請の期限は、令和2年6月30日(消印有効)までですが、申請期間中でも助成金支給申請の受付を終了することがありますのでご注意ください。
(4) お問い合わせ先
独立行政法人労働者健康安全機構 勤労者医療・産業保健部 産業保健業務指導課
電話:0570-783-046
URL:https://www.johas.go.jp/sangyouhoken/tabid/1391/Default.aspx
(参考文献)
2019年度版 中小企業施策利用ガイドブック(中小企業庁)
2019年 健康経営アドバイザー・エキスパートアドバイザー共通テキスト(東京商工会議所)
(執筆)
株式会社プロデューサー・ハウス 佐藤和哉
中小企業診断士、健康経営アドバイザー
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