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連載:第6回 新規事業の作り方

捨てるべきは勝ち組意識と新規事業部。フィットネスの事業開発、「外様」の流儀

BizHint 編集部 2019年9月24日(火)掲載
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近年、大きな業態変化が見られるフィットネス業界。かつて都会の好立地で大人を相手に大規模・高利益のジムを運営していたティップネスも、地方へのエリア拡大や子供向けスイミングスクールの強化に加え、2014年からは24時間小規模ジムFASTGYM24を開業。順調に店舗数と売上を拡大しています。それらの変革をリードしてきたのが、取締役執行役員の小宮克巳さん。入社17年目でも中途入社の外様精神を忘れることなく社内で危機感を醸成し、「要らない」と自ら公言する新規事業部を率いる同氏に話を伺いました。

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【プロフィール】
株式会社ティップネス
取締役執行役員 新規事業企画推進部 情報システム部担当
小宮克巳さん

フィットネスクラブ経営企業、食品メーカー、コンサルティング企業をへて2002年にティップネスに入社。開発部、営業企画部長、営業部長、営業推進部長、とキャリアを進め、2014年には、取締役執行役員 経営戦略部長に就任。 2017年には経営管理部、FASTGYM24事業部管掌も務める。2019年から現職。多摩大学大学院 経営情報学研究科 博士課程前期修了(MBA)。

いつまでも勝ち組ではいられない。『勝ち組意識の塊』への違和感

―まずはフィットネス業界の動向についてお聞かせください。

小宮克巳さん(以下、小宮): はい。我々の業界は基本的にはニッチな業界なんですよ。ヘルスケアの業界の中にありますが、基本的には健康な方、その中でも「特別、健康感度が高いお客様」を相手にしています。日本の総人口のうちフィットネスに通われている方の人口は3%と言われています。そんな状況で30年間変わらず過ごしてきたわけですが、ご存知の通り、現在少子高齢化と人口減少という二大マーケット変化が進行中で、分母の人口が減ることでフィットネスに来られる方も緩やかに減っていくという状況です。 もともと人口の3%しか市場がないのに、さらにそれが緩やかに減少している、このままではまさに衰退産業 です。

フィットネス業界では、プールがある1000坪ほどの施設には10億から15億円くらいの投資が必要です。かつては良い土地に大きな建物を建てるビジネスだったので、フィットネス業界は大体、大企業の子会社が運営していました。資本力がないところでは勝てなかったわけです。

しかし昨今、例えば流通業界では、百貨店のお客さんが減って、小規模店にお客さんが流れていますよね。フィットネス業界でも同じことが起こってきました。小規模店舗の新業態が出てきて、大規模店は百貨店と同じようにお客様を奪われていくわけです。新業態の店舗は外資系や業界外からの新規参入が多い状況です。

――小宮さんは中途でティップネスに入られていますね。

(小宮): 私は人口減少が始まった17年前に入社しました。当時のティップネスはちょうど丸紅の子会社のレヴァンという会社と合併したところで、売上高でいうと業界4番手か5番手だったと記憶しています。私はその合併後の、混とんとしたところに外様としてポンと入ったので、ある意味、客観的にその時の状況を見ることができました。

当時、ティップネスは都心の好立地に施設を持ち、大量集客で高利益を実現していました。そのせいか、 社員はいわゆる『勝ち組意識の塊』でした。しかし私は、ティップネスがいつまでも勝者気取りはできないと思っていました。

都会から郊外へ、大人向けから子供向けへ。会社を変えられない葛藤

――入社後の取り組みを教えてください。

(小宮): 最初に配属されたのは開発部でしたが、そこでは前職の経験を踏まえて、出店候補地での精緻な売上(集客)予測を実施する事がミッションでした。一方で、会社からは既存店の売上予測と採算性判断も依頼されました。なので、併せて「不採算店を閉める」という仕事も進めました。すると「開発部なのになんで店を減らすんだ!」と言われ、開発部内で居心地が悪くなってしまいました(笑)。その後、入社して1年が経つころ、別の部署の上司が既存店の営業企画のほうに引っ張ってくれました。

営業企画で先ず取り組んだのは「子供向け事業」の立ち上げ です。しかしこれは、導入当初はうまくいきませんでした。当時、創業社長が、都会の店から緩やかに地方の店に事業を移行していくということを発信していたのですが、この動きは他社も同様でした。他社は、郊外の子供向けスイミングスクールから始めて大人向けの事業を後から始めたところが多く、ティップネスはその逆。都会の好立地で大人を相手にしてきました。われわれは大人を対象に800坪のプロトタイプで臨むのですが、他社は子供中心でスイミングスクールが主なので1000~1200坪で臨みます。すると、デベロッパーは広く借りてくれる他社を選びます。入札でことごとく負けるような状態でした。

なので、郊外への進出には採算性の高い「子供向けの事業」がどうしても必要になります。 大人向けだけの事業は危険だと社長に何度も言いました。このままでは、地方・郊外でことごとく入札負けすると。しかし、社内では否定されました。 「なんで子供やんなきゃいけないんだ」「プールに子供が入ると、大人は気持ちよく過ごしたいのにうるさくなるので会員数が減る」と。 私は起案者ではあるものの実行者ではなかったので、実行は店舗運営部にお願いするしかありませんでした 。しかしどうしても腹落ちしてもらえず、「子供向け事業」に中々力を入れてもらうことはできませんでした。

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