close

はじめての方はご登録ください(無料)

メニュー

BizHint について

カテゴリ

最新情報はニュースレター・SNSで配信中

中小企業の資金調達は難しい⁉現状と課題、調達方法まとめ

BizHint 編集部 2019年3月28日(木)掲載
メインビジュアル

事業を展開するためには手元資金が必要です。売上を計上し入金される前に仕入れや給与の支払いが発生するため、運転資金も欠かせません。設備投資をするのであれば、一時的に多額の資金が必要になることもあるでしょう。しかし、社会的な信用が低い中小企業の資金調達は容易ではありません。本記事では、中小企業をめぐる資金調達の実情や、多様化する資金調達方法について解説していきます。

メインビジュアル

中小企業の資金調達の現状と課題

中小企業の資金調達は厳しい状況にあります。企業規模別に国内銀行から企業への融資額の推移を見ると、バブル崩壊から90年代後半にかけて大きく落ち込んでいます。リーマンショック以降は、大企業については回復していますが中小企業は横ばいで、金融機関からの借入は難しい状況にあることが見て取れます。

その要因として、金融機関が中小企業に対して十分な事業性評価ができていないことが指摘されています。その結果、融資はリスクの少ない大企業に向かい、中小企業に資金が回らない状況となっているのです。

【出典】平成28年度版中小企業白書

中小企業の資金調達の難しさ

金融機関からの借入が難しいのであれば、出資や社債といった直接金融による資金調達を模索することになりますが、知名度がない中小企業に資金援助してくれるところはなかなかありません。

実際に資金調達構造を企業規模別に見ると、規模が小さいほど借入依存度が高くなる傾向にあり、成長が著しいベンチャー企業でもない限り、実質的に出資や社債を利用することは難しいのが実情といえるでしょう。

【出典】中小企業庁:1.中小企業の資金調達構造の特性

実質的には、中小企業は保証や担保付の融資に依存することになります。前述のように金融機関による事業性評価を伴う融資は期待できません。

このため、保証や担保に依存しない、いわゆるプロパー融資を受けるは難しく、融資を取り付けるためには金融機関のリスクを減らすための保証や担保が欠かせません。実際に、中小企業の資金調達方法は、信用保証協会や経営者などの保証、および不動産や売上債権といった担保を伴う融資が上位を占めます。

【出典】みずほ総合研究所

資金調達の種類

中小企業の資金調達は決して簡単ではありません。しかし、資金調達には複数の方法があるのも事実です。それでは中小企業が検討可能な資金調達方法にはどのようなものがあり、どんなメリット・デメリットがあるのでしょうか。

ここでは、資金調達方法を3つに大別し、それぞれについて解説していきます。

金融機関からの融資(デットファイナンス)

負債(debt、デット)を増やすことで資金調達を実現する方法で、おもに金融機関から融資を受けることで資金を調達します。資金の出し手は、おもに政府系金融機関や民間の金融機関、ノンバンクがあげられます。民間の金融機関から融資を受ける場合にはプロパー融資は難しく、信用保証協会などの保証付き融資や、担保を差し出すことにより取り付ける融資が一般的です。

メリット

  • 融資を受けても経営権を握られることがない
  • 比較的簡単に資金を得ることができ、担保や保証をつければ融資を引き出すことは難しくない

融資による調達の最大のメリットは、経営権に影響がないことです。巨額融資や返済が厳しくなった場合には債権者として経営に関与されるケースはありますが、ほとんどの場合、経営の自由度は確保されます。

経営状況に問題がなければ調達がしやすく、財務内容に問題がなければプロパー融資を受けることも期待できるでしょう。金融機関との良好な関係を長期に渡り築くことができれば、融資の額も増やしていくことができます。

デメリット

  • 必ず返済が必要
  • 会社の将来性より過去の経営実績で判断される
  • 実質的には担保や保証なしには借入が難しく、代表者が連帯保証人となって個人が返済義務を負うことも多い

当然ですが、借り入れによる調達なので返済が必要となります。また、いくら将来性がある事業を展開しようとしていても、過去の経営実績が伴わない場合は、金融機関は容易に融資に応じません。新規事業を展開していきたい中小企業などにとってはネックになるでしょう。

担保や保証の問題もついて回ります。最終的には会社ではなく代表者個人が返済義務を負うも多く、代表者が返済できない場合はその家族が返済義務を負うこともあります。これは事業承継を難しくする要因の一つにもなります。

出資の受け入れ(エクイティファイナンス)

株式資本(Equity、エクイティ)を増やすことで資金調達を実現する方法で、主にベンチャーキャピタルやエンジェル投資家、取引先といった外部からの出資を受け入れることで資金調達を実現します。得られた利益を投資に回すといった自己資金による投資もエクイティファイナンスに該当します。

メリット

  • 返済の義務がない
  • 資金使途が問われない
  • 経営者が保証人になる必要も担保を差し出す必要もない
  • 現状数字が出ていなくても、将来性を評価してもらえれば調達できる

出資による資金調達最大のメリットは、返済の義務がないことです。金融機関からの借入の場合は資金使途が問われることがありますが、出資の場合はそれもほぼありません。

また、たとえ赤字続きであったとしても、将来性をみて資金を拠出してくれることも大きなメリットです。

デメリット

  • 出資比率に応じて経営権を掌握される
  • 株主を見つけることが難しい

株主が出資する理由にも左右されますが、ほとんどの場合、出資比率に応じて経営権を掌握されます。経営権のない種類株式を発行するといった方式をとることもできますが、資金の出し手が応じてくれるかどうかは別問題です。経営権を握られると、出資比率に応じた配当を求められることもあります。

出資に応じてくれる株主を見つけるのが難しいことも多く、必要なタイミングで調達できないリスクもあります。相当程度の成長性や、ほかにはない際立った技術力がないと、自社と関係性の薄い第三者から出資を受け入れるのは困難であるといえるでしょう。

その他(助成金、補助金、クラウドファンディングなど)

近年では、国が中小企業を資金面から支援するという動きを強めています。その代表が助成金や補助金です。そのほかにも、クラウドファンディングやICO(Initial Coin Offering、新規仮想通貨公開)といった従来とは異なる全く新しい資金調達手法も登場してきました。

メリット

  • 返済義務がない
  • 経営の自由度を確保できる
  • やり方次第では、数百万円からそれ以上の資金調達も可能

助成金や補助金にくわえ、クラウドファンディングやICOについても、借入とは異なるため、負債にも株主資本にも計上されず、返済義務はありません。やり方次第では、数百万円からそれ以上の資金調達も可能です。手法にもよりますが、株式を発行するわけではないので、経営の自由度も担保できます。

デメリット

  • 事前準備に手間がかかるものが多い
  • 失敗する可能性もある

どの手法を使う場合でも、情報を収集し申請書を上げる必要があるなど、一定の手間がかかります。助成金や補助金では申請書を作成することは決して簡単ではなく、専門家の支援が必要となるでしょう。クラウドファンディングやICOについては、十分な調査をおこなわないと資金調達に失敗する可能性も高いのが実情です。

中小企業が利用できる資金調達方法【金融機関からの融資編】

ここまで中小企業が利用することができる資金調達方法について、メリットとデメリットに分けて解説してきました。ここからは、金融機関からの融資についてさらに細かく分類し、詳しく解説していきます。

資金調達方法1:政府系金融機関による融資制度

政府系金融機関とは、日本政策金融公庫や商工組合中央金庫(商工中金)など、政府が全額または一部を出資して運営している金融機関のことです。創業支援や災害時の資金融通など、公益性が高く、民間金融機関のみでは適切な対応が困難な分野において、一定の役割を果たしてきました。

日本政策金融公庫では、「新創業融資制度」や「女性、若者/シニア起業家支援資金」といった様々な制度融資をラインナップしており、無担保無保証人、かつ低利融資を受けることができる場合もあります。

特に創業時の融資制度は使いやすく、はじめての融資が日本政策金融公庫という方も多いのではないでしょうか。商工中金でもセーフティネット融資や災害復旧資金といった制度融資を準備しています。

一方で、政府系金融機関の融資額には限度があり、企業が安定的に資金調達をする上では、政府系金融機関だけでは十分ではありません。現実的には、政府系金融機関は民間の金融機関の補完的な位置づけとなることが多いでしょう。

【参考】融資制度一覧から探す/日本政策金融公庫

資金調達方法2:民間金融機関からの融資

民間の金融機関は、三菱東京UFJ銀行・三井住友銀行・みずほ銀行といったメガバンク、各都道府県を中心に活動する地方銀行、より細かな地域で活動する信用金庫・信用組合に大別されます。メガバンクは年商10億円以上の企業でないと取引に応じてくれないこともあります。多くの中小企業は、地方銀行や信用金庫・信用組合から融資を受けることになるでしょう。

いずれの民間金融機関と取引する場合でも、まずは保証や担保のないプロパー融資を取り付けることを目指します。財務体質に問題なく少額の短期的な借入であればプロパー融資を引き出すことも十分に可能です。それが難しい場合は、保証や担保を差し出して融資を得ることになるでしょう。

民間金融機関から融資を引き出すためには、メインバンクを設定し良好な関係を維持する必要があります。積極的に自社の財務データを開示するなど、顔が見える関係性を構築しておけば、その信用力が事業制評価を補って金融機関のリスク回避につながります。金融機関はリスクを回避できる企業には、積極的に融資に応じる傾向にあります。

資金調達方法3:制度融資

前述のように政府系金融機関では、「新創業融資制度」や「女性、若者/シニア起業家支援資金」といった様々な制度融資を準備しています。

その他にも、県や市などの地方、商工会・商工会議所などの支援機関でも制度融資を準備していることがあり、その多くは、無担保・無保証人かつ低利融資といった通常よりも有利な条件で借入ができます。

融資を受けたい場合、金融機関に相談するだけではなく、地域の支援機関にも相談してみてください。

資金調達方法4:ノンバンク

ノンバンクとは、消費者金融や信販会社、リース会社など銀行ではない金融機関を指します。金利が高い上に会社の信用にも影響があるため、ノンバンクは使わないに越したことはありません。しかし、政府系金融機関や民間金融機関から融資が得られず返済ができない場合、ノンバンクからの借入も視野に入ってきます。

まずは、銀行に対しリスケジュールと呼ばれる、融資の減額や猶予の交渉を行います。そのうえで、ノンバンクから立て直し資金を確保しましょう。ノンバンクから借りた資金を銀行の返済に回すことは絶対に避けるべきでしょう。金利が高くなるだけで問題の根本解決にはなりません。

国では、金融支援が必要な中小企業・小規模事業者のための経営改善計画策定支援事業を展開しています。リスケジュールなどを進める場合は、こうした制度を使うことをおすすめします。

【参考】認定支援機関による経営改善計画策定支援事業の利用申請を受付けています/中小企業庁

資金調達方法5:社債(公募債、私募債)

金融機関に頼らない資金調達手段として、社債の発行も挙げられます。社債の発行は負債の増額をともないますので、デットファイナンスに該当します。

社債のなかでも公募債の場合、官庁への届出や報告の義務、社債管理会社への委託が必要となりますが、中小企業が利用しやすい簡易な手続きで資金が調達できる制度として、少人数私募債があります。

少人数私募債の場合でも会社の信用力が必要ですし、面倒な手続きもありますが、金融機関に依存しない調達方法として、視野に入れておいてもよいでしょう。

中小企業が利用できる資金調達方法【出資の受け入れ編】

それでは、出資の受け入れとしては、具体的にどんな種類があるのでしょうか。細かく分類して解説します。

資金調達方法6:VC(ベンチャーキャピタル)からの出資

VCとは、高い成長性が見込まれる未上場の企業に対し、株式の形で投資を行い資金面で成長を支える投資会社です。場合によっては経営コンサルティングなどを提供し、経営に関与することもあります。

VCの収益源は、投資先の会社が株式上場することで得られるキャピタルゲインです。このため、上場する予定のない中小企業の場合は、VCからの出資を得ることは難しいのが現実です。

今後の成長が見込まれるベンチャー企業であれば、ぜひとも活用したい資金調達方法だといえます。

資金調達方法7:エンジェル投資家からの出資

海外で進んでいる資金調達方法です。エンジェル投資家と呼ばれる元起業家や実業家などの個人投資家から、出資をうけて資金調達をします。

日本では一般的とはいえませんが、有望なスタートアップに投資をしたいエンジェル投資家は一定数存在します。将来性の高い事業をスタートするのであれば、人脈やマッチングサービスを利用し出資を募ってみてもよいでしょう。

資金調達方法8:株主割当増資

既存の株主に投資余力があり、自社が検討する投資が魅力的なものであれば、株主割当増資を検討してもよいでしょう。

第三者割当増資の場合、特定の第三者に優先的に株式を割り当てることになるため、株式の比率が崩れて不公平が生じかねません。株主割当増資であれば、既存の株主から平等に出資を募るため、資本構成を保ったまま増資を引き出すことができるメリットがあります。

中小企業の場合は、社長自身が大株主ということも少なくありません。そうした場合は、株主割当増資という手法をとることは現実的ではありませんが、資金余力のある企業が株主に名を連ねるのであれば、株主割当増資を持ちかけてもよいでしょう。

中小企業が利用できる資金調達方法【その他】

国は中小企業支援を強化しており、助成金や補助金が有力な資金調達方法となってきました。さらに近年ではクラウドファンディングやICO(Initial Coin Offering、新規仮想通貨公開)といった新しい資金調達手法が登場しており、中小企業の資金調達方法は多様化しています。ここではそれぞれについて詳しく解説していきます。

資金調達方法9:補助金・助成金

一定の条件を満たして申請書を提出すれば得られるのが、補助金や助成金です。補助金の場合は、生産性向上目的に中小企業の設備投資を支援する補助金が毎年継続的に公募されています。

2019年3月現在では、「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金」いわゆる「ものづくり補助金」が公募されており、2019年5月8日まで受け付けています。1,000万円まで補助される使いやすい補助金なので、大型の設備投資を検討しているのであれば、検討してもよいでしょう。

助成金の場合は、中小企業の働き方改革を支援する目的の助成金が増加傾向にあります。時間外労働等改善助成金には、時間外労働上限設定コースやテレワークコースといった、労働時間の削減やテレワーク導入に対して助成するものもあります。働き方改革を進める中小企業であれば、申請するだけで助成金を受けられますので検討してみてください。

【参考】中小企業庁:「平成30年度補正予算「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金」の公募を開始します」

資金調達方法10:クラウドファンディング

近年、中小企業の新たな資金調達方法としてにわかに注目を集めるのが、クラウドファンディングです。インターネット上に新たな事業や夢を発信、共感、応援してくれる人を広く募集し、お金を集めます。

クラウドファンディングが注目されるのは、有力な資金調達方法であるという理由だけではありません。広く募集をかけることで自社の商品やサービスをクチコミにより広げることや、有力な固定客を確保できるのです。

立ち上げたばかりの中小企業の場合、知名度もブランド力もありません。しかし、商品やサービスに対するあふれる思いはあるはずです。クラウドファンディングは、そうした思いを伝えることで、資金も固定客も確保できる可能性を秘めています。

資金調達方法11:ICO(Initial Coin Offering、新規仮想通貨公開)

ICOとは新しい仮想通貨を発行することで、資金を調達する方法のことです。インターネットを通じて広く募集をかけることができ、新たな資金調達方法として注目されています。

しかし、仮想通貨は投機的な側面が強く、近年ではその価値が急速低下しています。仮想通貨の発行方法も、規制が強化されておりその方法が確立されていません。多くの企業にとっては、現実的な選択肢にはならなそうです。

まとめ

  • 金融機関の貸出は、中小企業には十分におこなわれておらず、中小企業の資金繰りは厳しい状況にあります。
  • 中小企業の資金調達の方法は、金融機関からの融資(デットファイナンス)と出資の受け入れ(エクイティファイナンス)に大別されます。
  • 金融機関からの融資や出資の受け入れに分類されない、補助金や助成金、クラウドファンディグといった新しい資金調達手法も登場しています。

<執筆者>
香川 大輔 中小企業診断士

千葉大学工学部卒業。ベンチャー企業における営業、企画、マーケティング業務を経て、富士ゼロックス関連会社でシステム提案営業に従事。

2015年、中小企業診断士登録。現在では独立し、地域に密着した経営支援や新規事業コンサルティングに加え、セミナー活動や執筆活動など幅広く活動している。


この記事についてコメント({{ getTotalCommentCount() }})

close

{{selectedUser.name}}

{{selectedUser.company_name}} {{selectedUser.position_name}}

{{selectedUser.comment}}

{{selectedUser.introduction}}