連載:第30回 IT・インターネット
「デジタル給与払い」に4割が反対の姿勢、普及するには「安全性」と「有り難み」がネック?
2019年10月1日の消費税増税と同時にポイント還元事業がスタートしたことで、日本のキャッシュレス決済・電子マネーを巡る状況は大きく変化しました。その後のコロナ禍で“非接触”が注目されたこともあり、キャッシュレス決済はさらに拡大。これに加え、企業の給与を電子マネーで振り込む「デジタル給与払い(ペイロール)」が注目されるようになりました。
給与のデジタル払いは「安心できない」「現金じゃないとダメなものがある」
労働基準法では、給与の現物支給などは禁止されており、「通貨」で「直接」支払うと規定されています。ただし企業と労働者の同意があれば口座振り込みも可能になるため、現在の給与支払いは銀行振り込みが主流となっています。そして厚生労働省はこれを拡大し、「給与のデジタル払い」を可能とし2021年度中に制度化するとしています。「給与のデジタル払い」では、口座を介さず、スマートフォンの決済アプリや電子マネーを利用して給与を受け取ることができるようになります。
日本トレンドリサーチが「給与のデジタル払い」について1,000名に聞いたところ、「賛成」22.1%、「反対」40.9%、「どちらとも言えない」37.0%となり、反対派が主流でした。年代別で見ると、高齢になるほど反対が増えています。なお、現在の給与の受け取り方法については、「銀行振込」92.9%、「現金手渡し」7.1%で二分されています。
「給与のデジタル払い」への賛成・反対の理由を聞くと、賛成では「キャッシュレスで生活しているので、給与明細も振込もすべてデジタル化してほしい」「銀行を経由せずに手数料等が不要になる」「コロナ禍で現金など触りたくない」「便利、手間が省ける」「選択肢が増えることは悪くない」といった意見がある一方、反対では「システムのエラーなど何らかのリスクが想定され、安心できない」「家賃や公共料金など、現金での引き落としや振り込みで支払うものがある」「有り難みがいっさい湧かない」「インフラがまだ完全に整っていないし、安全性もまったく担保されていない」など、過渡期による感情面とともに、安全性への懸念を示す声が多くあがりました。
そこで自分自身の給与受け取り方法について、「デジタル払い(スマートフォンの決済アプリへの入金)になってほしいか」と聞くと、「なってほしいと思わない」79.1%となりました。具体的に自分が受け取る立場になると、デジタル払いは歓迎されていないようです。
自由意見では「遅かれ早かれ、嫌でもそうなる」「現金をなるべく触りたくない」「使い勝手が良いと思う」、あるいは「お金の管理が難しくなったり、スマホを落としたり、置き忘れたりすることが少なくないので心配である」「今の銀行振り込みでも十分デジタル化されている」「使い道を制限されたくない、現金のみの店も存在する」といった声があがっていました。
デジタル払いは、メリット・デメリットがあり、生活習慣などによっても立場が分かれそうです。たとえば、「給与のうち○○円はデジタル払い、残る金額は銀行振り込み」といったことが選択可能になれば、意見を変える人も増えるかもしれません。
調査方法
調査期間:2021年4月6日~7日
調査方法:自社運営のアンケートサイト「ボイスノート」を利用して調査を実施
調査対象:給与を受け取っていると回答した男女
調査人数:1,000名
プレスリリース
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000337.000044800.html
https://trend-research.jp/7826/
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