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2018年11月21日(水)更新

社宅

従業員の給与水準を決めるにあたり、雇用市場に要求される水準が考慮されることはもちろん、会社に就業するに伴い生計を立てる居住地の生計費は重要な要素となります。生計費のうち大きな割合を占めるのが住居費です。この住居費に会社が関与する施策として、住宅手当の支給などの家賃補助制度、社宅制度による住居の供与などが挙げられますが、今回は社宅制度について解説します。

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社宅とは

社宅とは、会社が相場より安い賃料で住居を従業員に提供するしくみです。その保有形態によって「社有社宅」と「借り上げ社宅」の二通りに分類することができます。

社宅制度を導入する目的などについて以下に記載します。

社宅導入の目的

会社が社宅を導入する目的は「福利厚生の一環」「転勤への対応」の二通りが考えられます。

福利厚生の一環

社宅を会社が従業員に提供することにより、従業員は相場よりも安く住居を確保できる上に、従業員自身が住居を賃借する際の煩雑な手続きなども省略することができます。社宅の提供は従業員の生活への貢献度が高く、従業員の会社に対する満足度を上げる効用が期待できます。

会社は既存の従業員に対してはもちろん、潜在的な人材を有する雇用市場に向けて、会社の福利厚生の充実をアピールすることも社宅制度を導入する目的のひとつと言えます。

【関連】【事例あり】福利厚生で従業員のモチベーションを上げるには / BizHint HR

転勤への対応

複数の地域に拠点を持つ会社の場合は、従業員に対して転居を伴う転勤・異動を命令することがあります。従業員が生活圏を変えるにあたり、大きな負担となるのは住居の確保です。転居に伴い住居を確保するための煩雑な手続きや敷金・礼金の出費などの従業員の負担は、従業員の仕事に対するモチベーションに影響を及ぼす可能性もあります。

これらの負担を軽減することを目的に、会社は社宅制度を導入すると考えられます。

社員寮との違い

一般的に会社が従業員に対して低家賃で提供する住居全般を社宅と言いますが、ファミリー向けを「社宅」、単身者向けを「寮」として区分しているケースが多く見受けられます。

なお、社宅と同様に福利厚生の一環でガスや水道、バスなどのインフラを提供する公益企業が提供する住居を「寮」と呼ぶこともあります。ちなみに公務員に対して国や地方公共団体が提供する住宅は「宿舎」と称されています。

家賃相場

社宅の家賃は、会社が社内規定で任意に決定します。従業員の負担割合は無償でも構いませんし、周辺相場相当額とすることも可能なため、業界特有の事情や会社の状況などによって従業員の負担割合が異なり、平均相場を把握することは難しく明確な指標などは存在しません。

社宅制度導入のメリット・デメリット

会社は従業員のために社宅制度を導入しますが、会社にもたらされるメリットやデメリットについて下記に整理します。

メリット

一般的に社宅の賃料は周辺家賃相場よりもかなり安く、従業員は、課税関係が生じない範囲であれば、周辺相場と従業員負担額との差額はダイレクトに従業員の可処分所得に反映され大きな便益となります。

住宅手当で家賃補助を行う場合は、手当額は給与所得として課税対象となり、月収があがるに伴い社会保険料の負担も増加しますが、社宅制度の場合は従業員が受ける一定の便益に対しての課税関係が生じないことはもちろん、社会保険料への影響もありません。

従業員の会社への帰属意識や満足度の向上を図る施策として非常に有効な手段と言えます。

また転勤先で社宅を提供することで、従業員の住居確保に伴う煩雑な手続きや敷金・礼金などの経済的な負担を減らすことが可能です。これにより転勤に対する従業員の抵抗感を軽減することができ、人員配置施策の実施が容易になります。

さらには採用市場における競争優位性の確保と差別化が図られ、有能な人材の獲得機会を広げる効果もあります。

また、社宅の維持運営にかかる費用は福利厚生費として経費計上が認められるという経済的なメリットも期待できます。

デメリット

社宅制度導入には当然ですが費用がかかります。

社宅を賃借している従業員の予期せぬ退職は、社宅制度導入時のイニシャルコストやランニングコスト等の費用対効果を低下させる恐れがあります。

さらに社宅制度を導入する場合は費用面の負担があることはもちろん、賃貸物件の保有形態によって設備保持、契約、近隣住民や地域活動への配慮など様々な管理負担が発生することに留意が必要です。

社有社宅について

「社有社宅」の定義と、導入のメリット、デメリットについて解説します。

社有社宅とは

会社が賃貸用物件を保有し、従業員に賃貸する形態を社有社宅と言います。

バブル期までは土地神話に支えられ、会社の投資先と言えば不動産が高い割合を示し、この当時は社宅の主流は社有社宅でした。社有社宅は購入費用や不動産取得税などかなりのイニシャルコストが見込まれるため、件数は近年減少傾向にあると言えます。

社有社宅制度を導入する会社のほとんどは、このような費用負担が可能な大会社であると言えます。

メリット

社有社宅のメリットは次のようなものが挙げられます。

  • 不動産資産の保有
  • 稼働率の維持向上による資産の有効活用の促進
  • 社外への賃貸が可能で新たな収益機会の確保が可能
  • 敷金、礼金、毎月の家賃などが発生しない

デメリット

社有社宅のデメリットは次のようなものが挙げられます。

  • 初期費用負担が大きい(土地建物の購入・建設資金・不動産取得税・仲介料など)
  • ランニングコストの発生(物件設備の維持管理費用、固定資産税、火災保険料など)
  • 管理事務が多岐にわたる(外構の手入れ、納税手続き、保険の期限管理、周辺住民などとのコミュニケーションなど)
  • 資産価値の低下の懸念(老朽化や経済社会情勢の変化に伴う資産の目減り)

借り上げ社宅について

次はもうひとつの保有形態である「借り上げ社宅」について解説します。

借り上げ社宅とは

会社が賃貸契約に基づき一般の居住用賃貸物件を借り入れて、会社の従業員に転貸するしくみが「借り上げ社宅」です。

社宅制度導入の目的が福利厚生や転勤対応などへ変化するにつれて、社有社宅から借り上げ社宅へシフトが進んでいると考えられます。

メリット

借り上げ社宅のメリットは次のようなものが挙げられます。

  • 不動産購入などの初期投資は不要
  • 従業員のライフスタイルの変化に合わせた立地や間取りなどの変更に柔軟に対応可能
  • 物件設備の維持管理や設備更新費用負担がない
  • 制度運営に係る事務負担が社有社宅に比較し少ない

デメリット

借り上げ社宅のデメリットは次のようなものが挙げられます。

  • 敷金、礼金など不動産賃貸の初期費用がかかる
  • 毎月の家賃、管理費、火災保険などのランニングコストが固定的に発生
  • 従業員の予期せぬ退職は初期費用が償却できないリスクがある
  • 契約期間内に退去すると解約違約金が 発生する場合がある
  • 借り上げた社宅の物件数が一定以上になると契約更新などの期日管理の事務負荷が増大

社宅制度の導入

社宅制度を導入するにあたり、導入時に検討すべき課題や実施事項などについて解説します。

導入時の注意点

導入するにあたり、検討すべき課題について整理します。

導入目的

導入目的は会社によって様々ですが、しくみを作るにあたり、何がもっとも優先される目的なのか整理することが肝要です。

福利厚生の充実が主目的なのであれば、どのような物件を社宅とするのか、利用する従業員の視点は欠かせません。保有資産の有効活用であれば自ずと保有形態が定まってきます。

なぜ社宅制度を導入するのか社内でしっかり調整し、息の長い安定的な制度づくりを行うことが望まれます。

課題の整理

保有形態、制度導入および運営に係る費用負担、費用対効果、制度運営に係る現場の事務負担など様々な課題を整理し、想定し得る課題への対応方法をあらかじめ検討し、運営ルールなどを策定する必要があります。

社宅の経費・税法処理

社宅にかかる家賃相場については、特に平均的な指標がないことは前述したとおりです。従業員の負担割合は無償でも構いませんし、周辺相場相当額とすることも可能です。

しかし、無償とした場合や従業員負担が一定基準を下回った場合は、賃貸料相当額あるいは賃貸料相当額と従業員負担額の差額は給与所得とみなされ、従業員に課税されてしまうことに注意が必要です。

国税庁はこの賃料相当額の算出方法を次の三つの算式の合計額としています。

  1.  (その年度の建物の固定資産税の課税標準額)×0.2%
  2.  12円×(その建物の総床面積(平方メートル)/3.3(平方メートル))
  3.  (その年度の敷地の固定資産税の課税標準額)×0.22%

この算式は社有社宅、借り上げ社宅いずれの場合にも適用されます。

【参考】タックスアンサー>源泉所得税>特殊な給与>No.2597 使用人に社宅や寮などを貸したとき

社有社宅の場合

国税庁は従業員の負担割合が賃料相当額の概ね50%以上である場合は、社宅家賃と賃料相当額の差額については課税対象としないとされ、社有社宅はこれに倣います。

会社が保有する不動産の場合は、固定資産税の課税標準額を把握しているため賃料相当額を算定し、従業員の負担割合を検討することが容易であると言えます。

借り上げ社宅の場合

借り上げ社宅の場合も、社有社宅と同じ算式を用います。借り上げ社宅を活用する場合は、不動産仲介業者などから所有者にあらかじめ固定資産税の課税標準額を開示してもらう必要があります。

役員の場合

役員に社宅を貸与する際、無償とした場合や従業員負担が一定基準を下回った場合は、賃貸料相当額あるいは賃貸料相当額と役員負担額の差額は給与所得とみなされ、役員に課税されてしまうことに注意が必要です。

役員に提供する社宅の賃貸料相当額についても、国税庁により算出方法が示されています。貸与する社宅の床面積によっては社有社宅と借り上げ社宅とで異なった算出方法が指定されるなど、注意が必要です。詳細は下記のリンクをご参照ください。

【参考】タックスアンサー>源泉所得税>特殊な給与>No.2600  役員に社宅などを貸したとき

なお、社宅が一般的な物件とはかけ離れた豪華な社宅である場合はこれらの算式の適用はなく、周辺相場に倣い通常支払うべき使用料に相当する額が賃貸料相当額になることに留意が必要です。

役員に貸与する場合課税関係を生じさせないためには、国税庁が示す賃料相当額以上の負担が必要になります。

社内規定の作成・明示事項

社宅に関する規定は安定的な制度運営を行うために作成することが望まれます。

規定を設ける際に一般的に盛り込まれる事項は以下になります。

規定事項 内容
目的・入居対象者 社宅制度の運営管理を目的に規定する旨を記載します。また、入居者の範囲を限定する場合は、社宅を利用できる者の要件や資格を定めます。
入居申込手続き 入居にあたりその申出方法、申出期限および必要な提出書類を規定します。
入居期間 入居が可能な年限や更新限度などを規定します。
同居人の内容 一定範囲内の親族とするなど同居を認める者の範囲を規定します。
賃料額・計算方法・徴収方法 物件の賃貸料や賃貸料の計算方法、および賃貸料の徴収方法を明記します。
入居時のルール 入居審査の有無、入居の指定期日やルールに違反した際の措置等を定めます。
費用負担・使用者負担の内容 水道光熱費や町内会費、物件管理費、火災や家財の保険料に関する費用負担について、会社と従業員どちらの負担とするのか、あるいは双方の費用負担割合などを規定します。
仲介料・敷金など 仲介料や敷金などを会社と従業員どちらの負担とするのかあるいは双方の費用負担割合などを規定します。
退去期間 退去の申出時期や退去時の手続きを含め、退去事由によって設けられた退去期限などを規定します。
立ち合い・立退料など 退去時の物件引き渡し時の立ち合いを会社と従業員どちらが行うか、また立ち退きにあたり発生する原状回復のための費用や清掃などの費用負担者を定めます。
就業規則への明示が必要な場合 会社の全従業員が利用可能な場合は規定する必要があります。ただし、入居資格を設けて入居者の範囲を限定する場合は、一部の従業員に対する恩恵的措置として提供しているものであり、会社の正式な福利厚生制度と認められず就業規則に定める必要はないと言えます。

社宅代行サービスとは

社宅代行サービスとは、社宅制度を導入している会社が行う社宅の契約・解約、入退去管理などの社宅関連業務を社外の業務代行会社へアウトソースするためのサービスです。

社宅代行サービス業者は不動産に係るノウハウや知見をもった人材を抱えており、社宅制度を持つ会社の人事や総務系部門の業務効率改善のために、社宅代行サービス業者を活用するケースが見受けられます。

代行事業者

社宅関連業務を受注する会社は、不動産会社、不動産賃貸業、不動産仲介業、不動産管理会社、会社の給与計算や労務管理、福利厚生業務などを代行するアウトソーサーなどが挙げられます。

代行の内容

業務代行会社が受注する社宅関連業務について、社有社宅、借り上げ社宅それぞれについて次にまとめます。

社有社宅の場合

社有社宅の場合の委託可能な業務としては、以下の業務が挙げられます。

  • 不動産資産の管理
  • 設備保持のためのメンテナンス
  • 入退去管理
  • 入居者の問い合わせや苦情に関する対応
  • 一般への賃貸に転用した場合の営業代行および契約業務などの賃貸管理

借り上げ社宅の場合

借り上げ社宅の場合の委託可能な業務として、以下の業務が挙げられます。

  • 物件の斡旋(物件情報の提供から内見の手配なども含む場合があります)
  • 契約締結、契約更新、解約手続管理
  • 入退去管理
  • 入居者の問い合わせや苦情に関する対応
  • 家賃支払、更新料、解約時修繕費等の支払管理
  • 預入金残高管理

サービス導入時の注意点

社宅代行サービスを導入する場合は次のようなポイントを踏まえた業者の選定が望まれます。

保有形態や社宅の規模に沿ったノウハウやスキルの見極め

社宅代行サービス業者にはそれぞれ持つ得意な業務範囲があり、会社が欲するサービスと委託先の社宅代行サービス業者の保有するノウハウやスキルがマッチするのかについて確認する必要があります。

例えば、借り上げ社宅に精通しているのか社有社宅に強いのか、社宅戸数が一定以上の場合に対応可能なのか、会社が保有あるいは借り上げる物件のエリアを網羅できているかなど社宅代行サービス業者の実績数などから見極めることが望まれます。

費用対効果の検証

コストパフォーマンスが良いに越したことはありませんが、費用面だけでなく営業担当の対応の速さ、必要な業務を期日までに確実にこなしてくれるかどうかは、アウトソースする目的達成のための重要なファクターであり、十分な検証が必要です。

業務委託手数料と業務精度や業界特有の繁忙期に対応するマンパワーなどのバランスがとれているかは導入を決めるにあたり十分な検証が必要です。

まとめ

  • 社宅導入の必要性は、業態や会社のライフステージ、人員規模など様々な要因で決定されることとなります。
  • 安定的な社宅制度運営のためには、福利厚生制度として従業員に歓迎されるものであることはもちろん、費用対効果、現場の事務負担量などを十分検討の上導入することが望まれます。

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