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連載:第2回 Hop Step DX~デジタルトランスフォーメーションでつかむ次の成長

金メダリストは要らない。DX・カイゼンに取り組む経営者が心得るべきこと

BizHint 編集部 2020年10月15日(木)掲載
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経営・マネジメントにデジタルをどう生かすべきか?「非接触」「非対面」が不可欠となったウィズコロナ時代。DX(デジタルトランスフォーメーション)への取り組みは今や待ったなしの状態となっています。2013年に早くもカイゼン活動の活路をIoTに見出し、今は他社にそのノウハウを提供する愛知県の中堅製造業、旭鉄工株式会社 代表取締役社長 木村哲也氏にそのヒントを伺いました。

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旭鉄工株式会社
代表取締役社長 木村 哲也 さん

東京大学大学院工学系修士修了。トヨタ自動車に21年勤務。主に車両運動性能の先行開発・製品開発に従事。2013年に旭鉄工に転籍後、組織や仕事の進め方などを含め経営全般を大きく改革。その中で製造ライン遠隔モニタリングシステムを構築・運用、生産性向上と人材育成の面で大きな効果を上げる。このシステムを他の中小企業にも展開するため新会社「i Smart Technologies株式会社」を設立。


日本のお家芸、カイゼンの活路を、IoTに見出す

―― IoTへの取り組みのきっかけはなんだったのでしょうか。

木村 哲也さん(以下、木村): 2013年当時、取引先であるトヨタのカイゼンの主幹が会社にいらっしゃっては、毎回、毎回、生産管理板を書くようご指導くださっていたのです。「時間あたりの生産した実績数」を記録するのですが、現場の社員がラインを管理しながら生産管理板も記録するのは非常に困難でした。

1ラインのサイクルタイム(1個を作る時間)は4秒。つまり、1分で15個製品ができます。1時間ごとに生産個数を記録するにしても、記録のタイミングが1分ずれれば生産個数は15個も変わります。当時、社員1人が10ライン見ていました。めちゃくちゃ忙しいわけです。それでも主幹の方は、毎回「生産数を書く」ことをご指導される……「それなら自動でやってやるわいっ!」となったのが、IoT導入を決めた本当のところです。

―― 「IoTをやろう」ではなく「自動化しよう」が動機なのですね。

木村:このようなプロジェクトを成功させるには「自分たちはこうやりたい」という意思が大切です。周囲に発信していると、誰か助けてくれるのです。

当社のIoTの取り組みは、最初は生産個数ではなく、機械が動いているか止まっているかの情報を集めるものでした。ラインの横には「機械の停止」を知らせるランプがあり「この情報を集めることはできないか?」。そんなことをたまたま会社に来ていた友人に話したら、「できるんじゃないですか」という話になりました。

その友人がIoTに明るい人物だったのです。また、社内にもIoTに適した人材がいて、同じタイミングでIoT関連の採用への応募もあった。そういった「たまたま」と「我々の意思」が重なったことがIoTへの取り組みのスタートです。

―― 採用に応募してきた、人材とはどんな方なのでしょうか。

木村: 応募時点ですでに50代。「あ、この人だ」と直感で採用しましたが、本当にすごい方でした。20代の方も同時に面接に来ていて、普通であれば、若い方を採用するものでしょうが、面接後、圧倒的に50代の彼の評価のほうが上だったのです。

IoTをたまたまやっていた元ソニーの方で、普段は黙々と電子工作をしています。ある日「作りました」と報告があり、何かと思ったら、IoTのモニタリング(監視)の耐久試験機をたった一人で作りあげたというのです。

また、私が「こういうものが欲しい」というと、「わかりました」と黙々と作り上げる。そんなやりとりを見て、製造現場の若い社員が「自分もIoTの仕事をやりたい」と手を挙げ出すなど、よい影響を与えてくれました。

全員幸せになる施策はない。痛みを伴い、カイゼンする組織へ

―― チャレンジングな社風なのですね。

木村: 今はそうですね。先日コロナ禍で、フェイスシールドの生産を新規事業として開始しました。発案が4月23日、その後数名の社員と取り組みを開始し、5月14日には特許を出願し、15日にテレビ取材を受けました。 「とにかく、やってみよう」という社風 ですね。

旭鉄工がコロナ禍中の短期間で特許を出願し、製品化したフェイスシールド「エアティナ」。詳細はこちら

ただ、私がこの会社に入社した時は、そのような空気はありませんでした。この空気を変えるべく、3つのアプローチで現場に働きかけました。

まず、 仕事をやってくれそうな人に頼む ことです。仕事に前向き、または、反発が強い人間でも言っていることが正しければ仕事を任せることもあります。そこで小さな成功をみんなで積み重ねていきました。

次に、最初だけ私自身がやってみせる という方法。例えば「こういうフォーマットでこういう書類を作ったら」と私がベースとなるExcelファイルを作って、あとは数字を入れればその書類が作れるようにする。フェイスシールドもそうですが、最初だけ転がしてしまえばあとは社員たちが進めてくれます。カイゼンのアイデアも、最初は私が出していました。今は社員の方が上手にできるようになったので、私は何も言うことがなくなりました。

あとは、 社員がやってくれたことに対して絶対に文句は言わない ことですね。

旭鉄工では、社内の情報共有にSlackを活用している。

―― 文句を言わずに、どう軌道修正するのでしょう。

木村: かつては「ここはいいけど、ここはどうだろう」と教育をしていたこともありますが、最近はカイゼンの内容がよく、本当に文句をいう機会がありません。当社にはカイゼンが終わったら、現場で私に目的、内容、結果を報告してくれる「卒業式」という習慣があります。

笑顔で「ありがとう」と握手をすると、本当に嬉しそうにしてくれます。このように熱心にカイゼンしている人と現場で言葉を交わしていると、周囲も「あいつは社長とよく話しているな」と気にして(自分も…)と考えるようなる。

元々は一部の人とカイゼンを進めていたのですが、今では管理職がみな、カイゼンのテーマをもって仕事をしています。また以前は、ひとつのテーマが終われば2年くらいカイゼンは休止状態でしたが、今はすぐ次のテーマが待っています。その結果、2015年から2019年の間にカイゼンの数は、9倍に増えています。

旭鉄工では様々なIT・SaaSを活用している。

―― 現場から社風を変えていったのですね。

木村: その過程で、経営陣も相当数入れ替わりました。部長クラスだと今も残っている方は4名。8名は退職しました。当時の経営陣は、60歳を過ぎている方も多く、仕事のやり方を変えるのはどうしても難しいわけです。強い抵抗があり、私が話したことと、逆のことを指示してしまう。私としては、旧慣から抜け出せない上層部を優遇して、会社そのものを沈没させるわけにはいきません。「現状を打破し、より前向きに新しいことにチャレンジできる人」を早く昇格させるようにしました。

―― 会社の変化には、合わない人がどうしても出てくるのですね。

木村: 私は、 全員がハッピーになる新しい施策なんてありえない と考えています。変化には、必ず背反が生じます。当時、すでに「カイゼンを進める組織」というあるべき姿に対し、旧来からの組織体は大きな背反を抱えていました。しかし、新しい取り組み・カイゼンをどんどん進めることによって、この背反は解消します。

痛みを伴っても、あるべき方向へ向かうべき です。他の会社でも「こうしたらどうですか?」とこちらが言うと、かつての旭鉄工と同じように「いや、こういう人がいるから(できない)」と仰ることがあります。

背反が発生するのは当然なのです。そこで「どちらを選ぶのですか?」という話をします。わざわざ全員を低いレベルに合わせる必要はありません。会社として、 トータルの幸福の総和を大きくしようと考えたときに、特定の人の幸福は落ちる可能性もあるのです。

IoTにお金をかけても、カイゼン効果は比例しない。

―― データやIoTを扱う上で、スキルや知識面の教育はどうしたのでしょうか。

木村: 私が着任する以前は「教育なんか金の無駄」と、社員教育はしていませんでした。私がきてから教育を開始しましたが、とはいえ無尽蔵にコストをかけるわけにはいきません。

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