連載:第24回 組織作り その要諦
経営者と社員の橋渡し役になれる 〝共感型〞の幹部を求めて行った「総選挙」とは
大胆な改革を行った老舗和菓子屋・船橋屋の8代目、渡辺雅司さん。理想の幹部を社員の中から選出するために、「総選挙」という方法を用いたそう。共感型のナンバー2を抜擢するために船橋屋の渡辺さんが行った施策について掘り下げていきます。
株式会社船橋屋
代表取締役 8代目当主 渡辺 雅司さん
1964年生まれ。三和銀行( 現・三菱UFJ銀行)に入行後、1993年に「元祖くず餅 船橋屋」に入社。2008年に8代目当主に。以降、老舗の伝統を守りつつ、さまざまな組織改革を遂げる。近著に『Being Management「リーダー」をやめると、うまくいく。』(PHP研究所)。https://www.funabashiya.co.jp/
共感力の高い幹部を求めて全社員相手に総選挙を行った
200年以上、名物「くず餅」を作り続けている老舗和菓子屋・船橋屋。近年、大胆な改革を行って話題となった8代目当主の渡辺雅司氏に、経営幹部に求めるものと、これまで行った幹部育成法について話を聞いた。
「私が幹部、つまりナンバー2に求めるのは『共感力』です。 相手に共感して理解する能力がある人は、自分のことだけでなく、全体を考えて動きます。 私は『足るを知る』という言葉を重んじているのですが、それは『自分のできない部分を、ありのままに受け入れよう』という自己受容の精神を指しています。それができる人は共感力が高いので、自分ばかり抜きん出ようとはせず、他人の成功も喜ぶことができます。そういう人のもとには自然と人が集まってくるので、人望のあるリーダーとして突出します」
渡辺氏はそんな理想の幹部を社員の中から選出するために、ユニークな方法を用いた。
「私が目指したのは、トップダウン型の組織ではなく、社員が自ら考え、自ら実践できる組織でした。それには、私と社員の間に立つナンバー2の存在が不可欠です。しかし、 私が独断で幹部を選んでは不満も出るでしょう。そこで『リーダーズ総選挙』という投票方式を編み出しました 」
全社員と5年以上のパート社員、総勢140名に対して「性別・勤続年数に関わらず、次世代のリーダーにふさわしい人は誰ですか?」と問いかけた。そこで過半数の票を獲得したのが、当時33歳だった佐藤恭子氏である。渡辺氏は即、彼女を執行役員に据えた。
「総選挙をすれば佐藤が上位に入るとは思っていましたが、もちろんリスクはあった。 社長から見たよいリーダーと、社員にとってのそれは違う場合もあります から。でも、私は社員を信じていましたし、何より佐藤には人望がありました。結果、周囲は彼女の働きぶりや実績を正当に評価し、過半数の票を投じたのです。彼女は現在も幹部として重要な経営課題に対し、果敢に挑んでくれています」
一方で、よく思わないベテラン社員も多かったという。
この記事についてコメント({{ getTotalCommentCount() }})
{{selectedUser.name}}
{{selectedUser.company_name}} {{selectedUser.position_name}}
{{selectedUser.comment}}
{{selectedUser.introduction}}