連載:第5回 総合 2020年1月~3月
業界天気「曇り」予想が最多、 米中貿易摩擦の影響も。回復局面から一転、「工作機械」などは「曇り」へ悪化
2019 年度上半期の国内景気は、総じて悪化傾向が鮮明となっている。帝国データバンクが調査 した国内の景気指標(景気 DI)はこれまでの回復基調から一転し、「足踏み」傾向が続いている。 今後も製造業を中心に国内景気は弱含むとみられ、各業界では先行きに警戒感を強めている。 帝国データバンクでは、100 業界 197 分野の業界動向について、最新の 2019 年度における業界 天気を予想し、展望とポイントをまとめた。
調査結果(要旨)
100 業界 197 分野の 2019 年度の業界展望は、「晴天」と予想される分野が 84 分野(前年度比 3 分野減)、「雨天」と予想される分野が 41 分野(増減なし)。天気の改善・悪化状況は、「改善」が 9 分野(前年度比 18 分野減)、「悪化」が 14 分野(同 4 分野減)となる見込みで、「悪化」が「改善」を 3 年ぶりに上回る見通し。また、「改善」分野は、集計比較が可能な1999 年度以降で最少となる。
天気図の改善・悪化を指数化した TDB 業況インデックス(DI)は、2019 年度予想は 48.7と予想、2019 年 2 月時点(49.0)から 0.3 ポイント低下を見込む。また、製造業の TDB 業況インデックス(DI)は 48.1、非製造業は 49.2 で、いずれも判断基準の 50 を割り込む予想。
2019年度の業界天気図 ~「曇り」が最多の72分野、回復局面から足踏み鮮明
2019年度の業界展望は、「晴天」と予想される分野が 84 分野(前年度比 3 分野減)、「雨天」と予想される分野が 41 分野(増減なし)。「晴天」は 2016 年度以来 3 年ぶりに減少に転じたほか、「曇り」は 5%から 8%に消費税率が引き上げられた 2014 年度(79 分野)以来 5 年ぶりに増加するなど、全体の業況は足踏み局面が続く見通し。
この結果、2019 年度における天気の改善・悪化状況は、「改善」が 9 分野(前年度比 18 分野減)、「悪化」が 14 分野(同 4 分野減)となり、「悪化」が「改善」を 3 年ぶりに上回る見通し。また、「改善」分野は、集計比較が可能な 1999 年度以降で最少となる。業界天気が改善する分野では、特需の発生や業界環境の改善などが見込まれる。『ソフトウェア開発』は、改元や消費税増税、Fintech などソフト開発の特需が続く。ファストフードや居酒屋・ビアホールなど『外食』は引き続きコスト面が課題となるが、業績の落ち込み幅は緩やかで、業態変換などによる業績上振れも見込まれる。
一方、悪化する分野では、特に米中貿易摩擦の影響が懸念される。『総合商社』は、資源高の落ち着きのほか米中貿易摩擦の影響から収益面で弱含みとなる。『工作機械』や『半導体・電子部品』も、中国経済の減速や米中貿易摩擦による影響を織り込む。また、『家電』では、エアコン販売の反動減や消費税増税後の需要減少が不安要素となるもよう。
2019年度のTDB業況インデックス見通し ~2019年度、3年ぶりに50割れ見込み
天気図の改善・悪化を指数化した TDB 業況インデックス(DI)の 2019 年度見通しは、全業界が48.7 と予想し、2019 年 2 月時点(49.0)から 0.3 ポイントの下方修正を見込む。業況改善・悪化の判断基準となる 50.0 を下回り、業況は 3 年ぶりに悪化局面に入るものと想定される。
製造業の TDB 業況 DI は 48.1 となる見通しで、全業界を 0.6 ポイント下回るほか、2017 年(66.9)から 2 年連続で悪化する予想。中国の景気減速のほか、米中貿易摩擦による海外情勢悪化の影響、消費税引き上げ後の消費動向に対する不透明感から、一転してブレーキがかかる見込みの業界が相次いだことが要因。
非製造業の TDB 業況 DI は 49.2 となる見通しで、全業界を 0.5 ポイント上回る予想。ただし、業況改善・悪化の判断基準となる 50.0 を割り込み、消費税が引き上げられた 2014 年度のほか、2016 年度と同水準になる。
TDB 業況インデックス(DI)とは?
100 業界 197 分野(2019 年 8 月時点)の天気図について、改善・悪化動向を指数化し、DI として集計。50 を境にそれより上であれば天気が 「改善」傾向、下であれば「悪化」傾向を意味し、50 が業況判断の分かれ目となる(小数点第 2 位を四捨五入)。また、業界・分野規模の大小 に基づくウェイト付けは行っておらず、「1 分野 1 天気」として集計・算出している。2 段階以上の改善・悪化についても、改善は「1」、悪化は「0」として 集計。
算出方法
帝国データバンクが各業界・分野の業況などから 7 段階の天気で判断したデータをもとに、天気図の変化についてそれぞれ加点による重みづけを行い、合計したものを各年度の分野数で除して算出。
今後の動向
2019 年度の天気は、「改善」が 9 分野と 1999 年度以降最少を見込む。また、TDB 業況インデックスは 3 年ぶりに 50.0 を割り込む 48.3 と想定され、2019 年 2 月時点の予想をさらに下回ると想定される。
国内では、消費税増税以降の消費への影響を不安視するほか、安全保障上の輸出管理で優遇措置を与える、いわゆる「ホワイト国」からの除外など、日韓関係の悪化による影響が懸念される。海外では、米中貿易摩擦をはじめとした貿易問題や、主要先進国の景況改善に黄信号が灯るなど、先行き不透明感が高まっていることも各業界の業況改善を下押しする要因と考えられる。
現時点では、多くの業界で業況が足踏み状態となる「曇り」基調を予想する。しかし、国内景気に悪化局面の兆しが見られるなか、製造から小売・サービスなど幅広い業界・分野で業況回復ペースに掛かるブレーキは強まると見込まれ、各業界で業況が 18 年度よりさらに悪化する可能性が高い。
転載元:帝国データバンク
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