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連載:第11回 組織作り その要諦

「日本でいちばん大切にしたい会社」特別賞。企業理念を徹底する業界2位の老舗ランドセルメーカーは、社員に株を無償配付していた

Logo markBizHint 編集部 2019年9月24日(火)掲載
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新一年生をもつ親にとって、ランドセル選びは祖父母を巻き込んだ一大イベント。少子化の一方で、「ラン活」という言葉が生まれるほど市場は活況を呈しています。中でも、丈夫で飽きのこないデザインで定評のある「ふわりぃ」を製造・販売しているのが、株式会社協和です。国内生産第2位である同社は、10年以上連続で増収増益。2013年には「日本でいちばん大切にしたい会社大賞」審査委員会特別賞を受賞。社員、仕入先、お客様、社会に対して会社はどうあるべきなのか?企業理念を絵に描いた餅で終わらせず、全社一丸となって追求した結果、同社から「制度」はなくなりました。2代目として理念経営を追求する若松秀夫社長にお話を伺いました。

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【プロフィール】
株式会社 協和
代表取締役社長 若松秀夫さん

1950年生まれ。東北大学文学部卒業後、大手ファスナー会社に入社。約10年のパリ駐在員経験を経て、1982年、実父の経営する株式会社協和に入社。ランドセルの自社ブランド化に尽力するほか、スーツケースなどの旅行用品事業を立ち上げるなど、デザイナーとしても活躍。専務取締役などを経て2019年4月から社長就任。

もう、量は追わない。シェアを落としても、下請けはやめる

ーー今のランドセル業界における貴社の立ち位置を教えてください。

若松秀夫さん(以下、若松): 当社は、1970年ごろ、ランドセル生産量で日本一。様々な企業のOEMでランドセルを製造していました。当時、小学一年生は200万人近くいましたが、今はその半分ほど。販売数が減少していく中で、多くの企業が単価をあげることで市場規模・売上をなんとか維持しているのが、現在のランドセル業界の構図です。高く売るためにランドセルと無関係のブランドをつけたり、デコレーションを施したり。「ラン活」という言葉も消費者を煽っているだけ、 完全に売り手の都合 です。地域によっては、ランドセルを使わないよう指導しているところも出始めています。

私は、格差を助長しかねない昨今の風潮には大反対で、 社員にも「6万円以上のランドセルは作るな」と言っています。 創業者である父は、がむしゃらに働いた結果、1960年代に生産量1位というポジションを築きました。しかし、「そもそも企業として何を目指すのか」と考えた時、業界1位を堅持することや、上場などは私の目標にはなり得ず、「量を追うことははやめよう」と考えたのです。では、量を追わずして何を追うのか。

我々のお客様は「子供」という特殊なお客様です。 私たち大人がユーザーになる商品は、ある程度その気持ちがわかりますが、子供が使うものはつい大人目線で見がちです。 当社が目指すべきは「売る側の視点から、徹底的に使う側の視点に変えていくこと」 だと思いました。

―その方針のもと、どのような変化が起きたのでしょうか。

若松: 私が入社した40年近く前、ランドセルは、百貨店か通販本で購入することが一般的でした。その頃、当社は、ランドセル販売量で最大手のシェアをもっていた通販会社(株)ムトウ(現(株)スクロール)に卸していました。卸業社への納品は、返品がほぼない一方、ある意味言いなりで、仕様を決める際も細かい点で妥協を求められることが多く、窮屈でした。 本当に子どもに向き合ったランドセルを作れているのか?長期的な視点で考えると、これではダメだと思った のです。

そこで、 私が専務取締役になった25年前、卸業社との取引をすべてやめました。 年間3億円、4億円の超お得意様を一気に失い、業界内でのシェアも大きく落としました。さらに、小売店と直接取引を開始すると、今までの得意先から圧力がかかって思うようにいきません。かといって、いつまでも下請けのままでいるのもリスクがある。同じリスクを取るならこの過渡期をなんとか乗り切って、 自分たちが納得する商品を製造・販売できる会社になりたい 、その一心でした。

その十数年後、(株)ムトウさんは倒産し、その後継会社はランドセルの取り扱いを中止しました。さらに2000年頃、ランドセルを取り扱っていた大手小売・流通会社が倒産した時も巨額の貸し倒れ損失が発生しました。得意先の方針変更や業績悪化によって社運が決まってしまうことを目の当たりにし、自社ブランドでの製造・販売への想いは強まっていきました。

―自社ブランドの計画はいつ頃から進んでいたのでしょうか。

若松: 自社ブランドへの挑戦は、30年くらい前に一度やりました。息子の小学校入学と合わせて企画したもので、ブランド名は「オリビエ」。息子の名前です。この頃はまだ生産量も少なく、かなりマイナーな存在でした。ようやく2007年に「ふわりぃ」を発表できました。自分たちが信念を持って作っているランドセルを、より多くのお客様に知ってもらいたい。そんな思いから「軽くて、丈夫で、使いやすい」当社のランドセルを象徴するネーミングにしました。

今は、OEMで製造する際も、仕様は”ふわりぃ“であることがわかるように、ダブルネーム(○○ byふわりぃ)を条件にしています。得意先に対しては、 商品群の一つとして売り場に欠かせないと思っていただける存在でありたい と思っています。 約20年前に始めた障がい児用のオーダーメイドランドセル。障がいの状態に合わせてパーツなどを選ぶことができる。オーダーメイドであるが、一般のランドセルと同じ価格に据え置いている。

バックナンバー (18)

組織作り その要諦

  1. 第18回 個人の働き方改革をしながら……企業が強い組織を作るには【法政大・田中研之輔教授】
  2. 第17回 「ピラミッド型組織」は「ネットワーク組織」に変われるのか【入山教授と語るFCバルセロナ、早稲田、ソニー「勝つ組織風土」】
  3. 第16回 ゴールを決めた瞬間、控えの選手たちは本気で喜んでいるか?【入山教授と語るFCバルセロナ、早稲田、ソニー「勝つ組織風土」】
  4. 第15回 史上最強チーム・バルサにはなれないけど、学ぶことはできます【入山教授と語るFCバルセロナ、早稲田、ソニー「勝つ組織風土」】
  5. 第14回 顧客3万社、営業12名。売上を追わない営業部門と社長が重視する、最も大切な指標とは
  6. 第13回 視察多数の運送×健康経営。企業送迎No.1バス会社では管理栄養士が運転士を健康にしていた
  7. 第12回 ベイスターズの躍進を支え続けたマーケティングチームの心得。「それしかなかった」ものとは
  8. 第11回 「日本でいちばん大切にしたい会社」特別賞。企業理念を徹底する業界2位の老舗ランドセルメーカーは、社員に株を無償配付していた
  9. 第10回 全国一の自動車教習所は究極のボトムアップ組織だった。人的余裕が施策を生みだす好循環。
  10. 第9回 障がい者の活躍が事業を拡大し、健常者が社内マイノリティに。「助ける」ではなく「ビジネスとして成立させる」
  11. 第8回 「超属人的組織」だからこそ仕事が面白い。一人の職人のみが持つ技術も「継がなくて良い」
  12. 第7回 デイサービスを「男性向け」で差別化。従業員の定着率を高める「公平感ある」職場づくり
  13. 第6回 数字必達主義から「対話型の組織」へ、福島トヨペットの社内変革【福島トヨペット・佐藤修朗社長/佐藤藍子副社長】
  14. 第5回 「ブラックサンダー」で46億円から100億円企業に伸びた有楽製菓の秘密
  15. 第4回 雅叙園復活のカギ「作業員ではなくホテルマン」。 圧倒的なハードの魅力を伝える、人・ソフトの再生術
  16. 第3回 手取り足取りの指示ではない。「任せる」ことで「自分ごと」を重ねた経営となる【スマイルズ・遠山正道さん】
  17. 第2回 若手の当事者意識を引き出す「自律・分散型組織」を作る【ポーター賞受賞企業・ネットプロテクションズ】
  18. 第1回 「組織づくりとクルマづくりは似ている」 元自動車エンジニアの人事が語る採用の秘訣

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