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連載:第3回 中小企業の「見える化」経営者のリアルな声

工場長頼みだった鉄工所の工程を見える化したら、会社がノリノリになった話

BizHint 編集部 2021年6月29日(火)掲載
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福岡県柳川市を拠点に、水門・水管橋など水利施設の公共工事を請負う株式会社乗富鉄工所。複雑なスケジュールや人員管理をすべて工場長に一任していたため、工程管理の属人化が課題でした。アトツギとして入社した取締役の乘冨賢蔵さんは、工場長が定年を迎えるにあたり工程管理プロセスの「見える化」を図ります。[sponsored byサイボウズ株式会社]

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株式会社乗富鉄工所
取締役 乘冨 賢蔵さん

1985年生まれ。造船会社で生産管理を担当した後に2016年に乗富鉄工所に入社。現在は取締役として、新規事業「ノリノリプロジェクト」を担当し、ゴトクにも耐熱テーブルにもなる、オールステンレス製のタフなキャンプギア「スライドゴトク」や、プラスチックコンテナをまとめて吊れる「まとめてUFO」などを手掛ける。


水門やプラント整備、多岐にわたる事業を展開

乘冨賢蔵さん(以下、乘冨): 乗富鉄工所はいくつかの事業で成り立っています。売上の6割を占めるのが、水門やポンプ、水管橋や除塵機などの水利施設機械事業。自治体から公共工事を請負い、企画開発・製造から設置・保全までを一貫して手掛けています。そのほか建設機械の部品製造、プラント整備事業などを展開しています。

創業者である祖父は、大手食品メーカーからプラント設備の製作保全を請け負うことで1948年に事業をスタートさせました。80年代頃から公共工事で水門整備をはじめ、一時期は全国各地のカントリーエレベーターの製造なども手掛けていたそうです。現在、売上は11億前後で推移しています。

私は造船会社を経て後継ぎとして2016年に入社しました。造船会社で学んだことはモノづくりの“尊さ”です。家業に入るにあたり、自分を必要としてくれるモノづくりの場所で働きたい気持ちがある一方で、現在の水門事業が中心のビジネスモデルでは限界があるのではという不安も抱えていました。

現在の社員数は65名ほどで、現場と事務がそれぞれ半数です。事業が多岐に渡るうえ、公共工事は書類が煩雑なため管理系のメンバーが多くなっています。

溶接作業を行う乗富鉄工所の職人

モノづくりが好きではない人も入社して定着率も低い状況

乘冨: 私が入社した当時、仕事に対する不満から社員の離職が相次いでいました。当時は遠方のゴミ処理場のプラント整備も請け負っていたのですが、気温40度以上になる炉に入って溶接工事をする過酷な業務です。各地の現場へ1〜2か月出張して泊まり込みの作業が続くので、出張先で仕事への不満が山積し、戻ってきたら「続けるのはしんどいです……」と辞めてしまうこともありました。

そもそも以前から慢性的な人手不足で、「やる気があればOK」と採用のハードルを下げていたことも一因です。柳川市内では比較的、長く事業をやらせて頂いており知名度もあるのでご応募いただくのですが……。入社したものの「モノづくり」を楽しいと思えなかった方が2〜3年で辞めてしまう。社員の定着が進まず「このままでは将来大変なことになる」と危機感を感じるようになりました。

天気、職人同士の得意分野など工程管理がネックに

乘冨: 課題は、水利施設機械事業にもありました。水利施設の工事には、私たちの他にもさまざまな業者が関わります。機械の設置と並行して土木工事も進むため、自分たちだけでは工程のスケジュールを決められないジレンマがあります。加えて、雨天時は作業ができないなど天気の影響も積み重なります。直前まで予定が決まらなかったり、突発作業が発生したり、スケジュール通りに工事が進まないことも日常茶飯事です。

作業は溶接、切断、機械加工など多岐にわたり、職人によっても得意分野があります。メンバーのスキルを見極めながら複数の工事工程に適切な人材を配置する。このように複雑なことから、全ての工程管理は工場長が一人で担当し、「溶接がある現場はこのペア」「ポンプ修理がある現場はこのペア」と案件ごとにチームを編成していました。

工場長のみがすべての案件を正確に把握している状況で業務が属人化していました。工場長は性格もどちらかというと職人気質であまり多くを語らないタイプ。部下からも彼の思考プロセスが見えず「突発的なスケジュール変更だけれど、人柄が良くて人格者の工場長が言うなら従おう」となんとか現場は回っていたのです。

2021年に工場長が定年、複雑な工程管理をどうする?

乘冨: 弊社は62歳定年としています。現場のすべての采配を振るっていた工場長が60歳を迎えた2019年には「2年以内に彼に依存しない組織づくりをしないと」と、より緊迫した課題感を持ちました。

ちょうどその頃、工場長が体調を崩したこともあり、私が代理で工程管理を担当したのですが、やはりすごく複雑で大変な作業だと実感しました。とはいえ、なんとか業務のロジックは把握できたので、まずは出来る範囲で業務の効率化や改善をしようと考えました。

水門工事は基本的にオーダーメイドのため、業者の選定や材料の発注先など様々な意思決定が必要になりますが、その都度大量の紙ベースの書類回覧が発生して事務作業が負担になっていました。「この紙書類をどうにかしたい……」とTwitterで呟いたところ、フォロワーさんから「kintone」を教えてもらいました。詳しく調べると、案件に関するデータを入れていけばデータベースの構築もできる。

「これは……。紙書類を削減するだけなく、これまでの工事の情報をすべてシステムに集約すれば業務効率化ができるのでは!?」と思い、2020年の夏にkintoneの導入を決めました。

2時間かかっていた会議資料が1分でできるように

乘冨: ただ、中小企業では「なんで、お金をかけてまでシステムを入れて改善しなきゃいけないんだ!」という反発がよく起こります。メンバーを説得するために、短期間で直ぐに効果を出す方法を考えました。それが「工程会議」の効率化です。

弊社では週に1回1時間、営業・調達・製造・設計などの関係者が集まって工程会議を実施しています。各工事の進捗確認と、1週間の工程を確認するだけの簡単な会議なのですが、とにかく資料作成に時間がかかる。毎週、担当者が各部署から情報をヒアリングし、2時間以上かけて資料を作っていました。非常に無駄な時間です。まずは会議の効率化を行い、属人化していた工程管理もより効率化できればと思っていました。

「kintone」に各工事の情報を入力し、CSVで書き出せるようにしたところ、毎週2時間かかっていた資料作成が1分で完了できるようになりました。最初に私がそれぞれの工事情報を入力する手間こそありましたが、一度入力してしまえば、その後の作業は軽微なものです。さらに、この先工事で必要な人員の見込みも予測でき、中長期視点での意思決定も可能になったのです。正にこれが実現したかったこと。以降、会議時間も40分に短縮し、中身の濃い議論に集中することができました。

乗富製作所のkintone、「見える化」のボタンを押せば作業工程が即分かる

各工程の見える化ができたことで、工場長の頭の中だけにあった人員のやりくりも格段に楽になり、結果的に後任の工場長への引き継ぎもスムーズに進みました。以前は工場長しか手をつけられなかった工程調整も、現在新工場長と部長、係長が月1回集まり合意の上で進めています。

工場長のノウハウを見える化で組織に良い効果が

乘冨: これまで工場長が行っていた人員をやりくりする工程管理の業務をメンバーに共有できて、よい効果が出てきました。各マネージャー陣が各工事の工程を把握していれば、若手社員からの疑問にもすぐ応えらます。「この作業をこのタイミングでやる理由は……」と説明できれば、チーム全員がよく理解して業務にコミットできます。

退職者も格段に減少しました。工場長も四苦八苦して人員をやりくりしていた、過酷な地方出張も思い切って減らし、地元や近隣地域の案件に注力すると、メンバーにも「地元を良くしたい」というモチベーションが湧いてきて、社内の空気が変わりました。採用に関しても「モノづくりに興味がある人」や「モノづくりにモチベーションを感じられる人」だけを採用しようという方針に変えました。

もちろん、社内の雰囲気が良くなった要因は、システム導入だけではありません。新工場長の手腕もあります。新工場長は社歴30年のベテラン職人。「俺はこんな製品を作って、こんな風に貢献していきたいんだ」と事あるごとに想いを熱く語るタイプで、それが若い世代にも受け入れられやすかった理由かもしれません。

乗富鉄工所は凄腕の職人だった祖父が設立したこともあり、他社に比べて幅広い業務に精通した腕利きの職人が揃っています。普段の仕事も、図面と材料を渡して細かな手順は彼らに決めてもらう。安心して任せられるプロ集団です。

夏場の閑散期をどうにかするために、新規事業を立ち上げ

乘冨: 近年、水門機械事業も環境変化の真っ只中にあります。かつては鉄製が主流だったため、昨今ではステンレス製に置き換わっています。鉄は耐用年数が15~20年ほどで部品交換やメンテナンスを定期的に受注していましたが、ステンレスは40~50年持ちます。そのため、公共工事も減少傾向になりつつあり、何か新しい事業をはじめないといけないと考えるようになりました。

もともと水門を活用するのは春から夏にかけての農繁期です。ですから、メンテナンスの水門工事は冬から春先までに集中し、夏季は閑散期になりがちです。もともと、モノづくりが好きなメンバーが多いために、職人たちが空いた時間を活用して椅子や机を作っていたほどです。

また、工事に必要な治具を自分たちで作ることもよくあります。ならば受注に頼らず、余った時間を活用してクリエイティブな取り組みができないかと、3年前からはじめたのが、新規事業「ノリノリプロジェクト」です。

まとめるコンテナ吊り、スライドゴトクを開発

乘冨: 「ノリノリプロジェクト」では、農林水産の現場から「こんな仕事を楽にしてほしい」と課題をヒアリングし、職人の技術とアイデアを活かして作業を効率化するプロダクトを開発しています。例えば、水産業の水揚げ作業で複数のコンテナを束ねて運搬することができる「まとめてUFO」です。特許を取得し、社外で賞を獲得することもできましたが、コンテナのサイズに合わせたオーダーメードの製品のため量産化は難しい部分がありました。

その後もさまざまな事業も模索するなかで「キャンプで使える道具は作れないか?」というアイデアが挙がりました。専門ブランドはすでにたくさんあるし、今さら鉄工所が参入できるだろうかと思いましたが、キャンプ用品店からのアドバイスもいただき、一年かけて開発したのがキャンプ用ゴトク「スライドゴトク」です。

ゴトクにも耐熱テーブルにもなる、オールステンレス製のタフなキャンプギア

オールステンレス製で伸縮できるスライド機構を備えていて、焚き火台にあわせてサイズを変え設置することができます。発売当初は受注生産でしたが、今年から計画生産もスタートしています。新規事業のメディアへの露出も増え、採用活動にも寄与しています。

2020年からはプロダクトデザイナーに参画してもらいブランディング強化に取り組みつつ、マーケティングでは福岡大学商学部飛田ゼミナールの皆さんにも協力してもらっています。会社にとって自社ブランドの発信は新しい挑戦。今では前工場長にもノリノリプロジェクトの技術長として商品開発を手伝ってもらっています。

新規事業でもkintoneが大いに役立つ

乘冨: 新規事業でも「kintone」は非常に有益ですね。これまでの顧客情報や営業先へのアプローチ履歴、メディアへのアタックリストなどの管理に使っています。社外からもスマホで確認できるので助かりますね。今後は福岡大学とのマーケティングプロジェクトなど社外との連携でもkintone上で情報共有を活用していきたいと考えています。現状アプリはほぼ1人で作っているので、今後専門人材を採用してもっとさまざまな業務に活用したいですね。

「ノリノリプロジェクト」は今後の会社を左右する大事なプロジェクト。小さな町工場ではありますが、町工場なりの生きる戦略を作りたいですし、今後は将来の事業の柱に成長させていきたいです。

私自身、新規事業を始めてから地元企業との関わりも増え、「地域の町工場にとってクリエイティブのハブになりたい」「乗富鉄工所を世の中から求められる会社にしたい」と今後の目標と覚悟が決まりました。

工場長のバトンタッチが成功したのも、新規事業に注力できているのも、既存業務をうまく「仕組み化」できたおかげです。自分たちの頑張った結果が見える仕組みを作ったり、社外とのやりとりにも活用したりして、モノづくりの可能性を広げていきたいと考えています。

kintone公式サイト

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