連載:第69回 リーダーが紡ぐ組織力
「人が辞めない組織」に必要なたった一つの条件。社員の「当事者意識」を育てた、二つの施策
BizHint 編集部
2026年2月13日(金)掲載
どうすれば社員の離職を減らし、主体性を持って働ける職場にできるのか。この問いを紐解くヒントとなるのが、システム設計開発や運用管理を手掛ける恒和システム株式会社です。かつては、人が入社してもなかなか定着しない会社でした。「組織」というより技術者集団で、各自がバラバラの方向を向いていたそう。しかし現在は離職率1.9%と、人が辞めない組織を実現。一人ひとりが経営に対して当事者意識を持ち、自ら考え動く組織へ変貌を遂げています。同社はなぜ、組織を生まれ変わらせることができたのか。そこには、代表取締役社長 平野仁美さんが断行した、社員の当事者意識を育てる「二つの施策」がありました。詳しく伺います。
危機的状況の組織を蘇らせたリーダー。社員の「当事者意識」を育んだ、二つの施策
――平野さんは2012年に取締役に就任されています。その頃の状況について教えてください。
平野 仁美さん(以下、平野): まず当社について簡単にお話すると、物流・製造・金融などの業界においてシステム設計開発や運用管理を手掛ける企業です。現在は、SES(客先常駐)が主たるサービスとなっています。私はこの会社に新卒で入社し、2012年に取締役に就任しました。
当時は、「組織」というよりも、個人の技術者が集まった「技術者集団」といった雰囲気でした。 自分の担当する仕事には全力で取り組んでいましたが、「会社をどうするか」「組織をどう発展させるか」といった視点を持つ人はほぼいませんでした。 離職率も高く、採用してもなかなか定着しない状態で……。 「この会社はあくまで通過点で、技術が身につけば他の会社に転職する」という考えの人も多かったのです。
ただこれは、IT業界の特性でもありました。技術者は自分のスキル向上のために転職し、”手に職”の仕事なので働き口には困りませんでした。 イヤなら辞める、次に行く、というのはこの業界全体としてごく普通の考え方で。 多くの中小IT企業は、離職が多いのは仕方ないと諦めていました。
当時は、創業社長がマネジメントを行っていました。 彼はカリスマ性のある「ザ・社長」という感じの人で、トップダウン型のマネジメントで組織を引っ張っていて。 「社長は周りの意見に左右されてはならない」という信念があったようで、社員の意見には一切耳を貸さず、「嫌なら辞めればいい。その選択肢は社員にある」と公言していました。そのため、社員たちは不満や意見があっても、それを口にすることはありませんでした。
2012年に社長が二代目に代替わりし、同時に私は取締役として人事・総務・経理の全般を任されることになりました。 当時は経営状況もあまり良いとは言えず、ひとことで言えば「自転車操業」。 資金繰りは、常に綱渡り状態でした。銀行からの借入金で運転資金を回しており、債務超過に陥ったこともあります。「このままでは、この会社に未来はない」と思いました。実際、そう言って辞めていった社員もいましたね……。
実は、私は入社した頃から、ずっと変わらない信念を持っていました。それは、 この会社を社員が「入社して良かった」と思う会社にするということ。
そうするためには、何が必要か。いろいろあると思いますが、 私は自分が働いてきた経験から「やりがい」と「収入」が大きな部分を占めるのではないかと考えました。 では、何をすれば良いか。考えた結果、 まず社員が「当事者意識」を持つことが重要だと思いました。 一人ひとりが「雇われている労働者」ではなく「経営の一端を担う、当事者」という自覚を持つこと。 社員が自分事として会社のことを考え、行動できる組織にすることが、「入社して良かった」と心から思える会社を作る、ひとつの道だと考えました。
そこでまず、 二つの施策を断行しました。この改革により、社員は経営を「自分事」と捉え、一人ひとりが主体性を持って考え、動けるようになりました。 その結果、2017年頃には銀行からの借入金をすべて返済し、無借金経営を実現。創業2年目からずっと引きずっていた赤字も解消し、黒字経営に転じました。 利益率は当時と現在を比べると、約5倍以上に上昇しています。
また 離職率も1.9%まで下がり、やむを得ない事情以外で退職する人はほぼいなくなりました。 私が目指している組織に近づいてきていると感じます。
――組織に大きな影響をもたらした「二つの施策」とは、一体何だったのでしょうか?
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バックナンバー (69)
リーダーが紡ぐ組織力
- 第69回 「人が辞めない組織」に必要なたった一つの条件。社員の「当事者意識」を育てた、二つの施策
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