採用 コツ
人事担当者なら誰もが知りたい、採用を成功に導くコツ。少子高齢化などの影響により新卒採用予定数を満たせない企業が続出する中、今や中小企業だけでなく大企業でも人材不足は深刻な問題となっています。失敗のできない採用活動に頭を悩ませている企業も多いことでしょう。そこで今回は、人材確保のキーワードである「面接」「求人」に焦点を当てた成功への秘訣をご紹介します。
採用までの流れ
まず初めに、企業における一般的な採用活動の流れをご説明しましょう。
- 求人
学生を対象とした新卒採用、転職希望者を対象とした中途採用といった正社員の募集や、契約社員や派遣社員、パート・アルバイトなど、欲しい人材や雇用形態を考慮に入れた手法や媒体を選定し、求人募集を行います。 - 書類選考
条件を満たした応募者の中から、経験やスキルといった履歴書や経歴書からでも読み取れる情報をベースに欲しい人材を選定し、候補者を絞り込みます。 - 面接
書類選考によって絞り込んだ候補者の中から、書類だけでは判断できないコミュニケーション能力や職務適性、向上心といったヒューマンスキルを見極めるために面接を行います。 - 内定
面接の結果、採用を希望する人材に内定通知を行います。また、入社の動機付けのためのフォローも必要となります。 - 採用
内定通知を出した人材が採用を希望すれば、採用決定となります。
採用活動を成功に導くポイントとなってくるのが、いかに効果的な「面接」で自社にマッチする人材を見極めることができるか。そのためには、効果的な「求人」で求める人材の応募を促すことも不可欠となります。
採用面接の重要性
言うまでもなく、採用面接で最も重要なことは、応募者が自社で活躍できる人材かどうかを「見極める」ことにあります。
入社させてから長い時間をかけて戦力として育てていく「終身雇用」の時代は終焉を迎えました。現代では、即戦力としての人材の確保が採用活動のキーワードとなります。そのため、自社で活躍できる人材かどうかの見極めはさらに重要度を増していると言えるでしょう。
しかし、このような即戦力として計算できる優秀な人材は、当然ながら競合他社も欲しい人材となります。一人の優秀な人材に複数の内定が集中することも、珍しくありません。
その場合、応募者から自社を選んでもらう必要が出てきます。即戦力の確保が重要な現代においては、優秀な人材に自社の魅力を伝え、志望度を向上させることも、採用面接の重要な役割となっているのです。
採用面接のポイント
それでは、実際の面接において何が重要なのかを詳しく見ていきましょう。前述の通り、採用面接はただ単に企業側が応募者を見極めるだけの場ではなく、応募者側も自身の経験が生かせる会社かどうか、自身の将来的なキャリアプランにマッチしているかどうかなど、自分に合った企業であるかを見極める場でもあります。
お互いにお互いを値踏みする場であると言っても過言ではありません。よって、面接の担当者として最も注意すべきポイントは「一方通行にならない」ということになります。
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面接の雰囲気
そこでまず気を付けなければいけないのが、面接の雰囲気です。応募者からも自社を見極められていることを念頭に置いて、応募者が採用面接に積極的に参加できる雰囲気を醸成する必要があります。
応募者がリラックスできる環境
採用面接に来る応募者は、当然ですが、緊張しています。これは、人事担当者の皆さんでもご自身の就職活動の際に経験されているはずです。適度な緊張は問題ないでしょうが、極度に緊張している状態では、自分の思っている通りの言葉は出てきません。つまりは、面接する側から見ても、応募者の本来の人物像が把握できなくなってしまうのです。
最初に面接官の方から自己紹介したり、まずは雑談から入ったりするなど、応募者が緊張しすぎない程度の環境づくりはとても重要です。
圧迫面接にならないように
応募者に対して否定的な態度をとったり、あえて意地の悪い質問を繰り返したりする面接を「圧迫面接」と言います。実際、トラブルや取引先からのクレームなど仕事上ではよくあることですので、このような緊迫した環境下で応募者がどのような対応をするか見極めることができる手法として有効であるとする経営者の声は、いまだ根強く残っています。
しかし、応募者からはどう映るでしょうか。前述の通り、採用面接は企業側と応募者側の双方がお互いを見極める場です。相手を試すようなやり方は、即戦力として期待できる人材にとっても、決して好印象とはならない可能性が高いでしょう。
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面接官の注意点
続いて、面接官が気を付けるべき注意点について見ていきましょう。ここでもやはり、ポイントとなるのは、採用面接は企業と応募者双方がお互いを見極める場であるということです。
第一印象に気を付ける
服装や髪型、口臭など、相手に不信感、不快感を与えないことが大前提となります。誠実さや清潔感など、応募者に求めることは面接官も求められていると考えるべきでしょう。
会社の顔であることを自覚する
応募者にとって、採用面接の担当者は、実際に対面することのできる数少ない企業側の人間です。その企業の「顔」と言っても過言ではありません。自社に対する応募者の印象を大きく左右する存在であることを自覚する必要があります。
応募者の話をしっかり聞くこと
応募者は、面接官がどの程度興味を持って自分の話を聞いているかをしっかり見ています。相手の目を見て話を聞く、槌を打ちながら応募者の話を促すなど、応募者に求めるコミュニケーション能力は、面接官自身にも求められていると考えましょう。
積極的に会社の魅力を伝える努力を
採用面接は、興味を持って応募してきた人材に「この会社で仕事がしたい」と思わせることができる場でもあります。面接を通して感じた評価や、応募者の希望と企業側がマッチする例など、実際に働くイメージを持ちやすくなるような情報提供を積極的に行いましょう。
面接官(企業)も選考されているという意識
繰り返しになりますが、面接官は、応募者が合うことのできる唯一の企業側の人間です。応募者は、世間で一般的に広まっている企業イメージを持って採用面接にやってきます。
そして面接官と接することで、初めて「生きた」具体的な企業イメージを抱きます。面接官が与えるイメージが、そのまま応募者にとっての企業イメージとなるのです。
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面接で聞くべきポイント
採用面接の時間は長くて1時間程度で、通常はそれより短い場合がほとんどです。このような短時間で応募者のコミュニケーション能力や職務適性、向上心といったいわゆる「ヒューマンスキル」を正確に把握するには、やはりコツがあります。話を聞く際の注意点と質問内容を具体的に見ていきましょう。
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理由を具体的に聞く
応募者は、様々な質問を想定して回答を用意しています。就職活動セミナーなどで具体的な質問内容を確認し、面接官に好まれる受け答えを予習して採用面接を受けるわけです。そのため、答えとしてはきちんとしているものの曖昧であったり、抽象的であったり、一般的すぎたりという回答が多くなってしまいます。
しかし、「なぜですか?」「具体的には?」という質問を繰り返して深く掘下げることで、漠然とした優等生的な回答は、どんどん個性的になっていきます。答えは同じでも、そこまでに至るアプローチの方法やプロセスを知ることで、ヒューマンスキルを把握することができるのです。もちろん、嘘やでっち上げを発見するのにも有効です。
過去の話を聞く
応募者は、入社後にはどのような仕事をしたいか、どのようなキャリア形成を望んでいるかなども、面接官に好まれるであろう回答を用意して採用面接にやってきます。もちろん、極端なアンマッチを防ぐためにも必要ですが、やはり前述の通り、優等生的な漠然とした回答がほとんどになってしまいます。
そのような不確定要素の多い未来の話を聞くよりも、これまで自分が歩んできた過去をじっくりと聞いた方が、ヒューマンスキルを見極める上ではよほど効果的であると言えます。変えることのできない過去には、結果はもちろん理由やきっかけ、取り組み方や姿勢など、面接で知りたい応募者の本当の価値観や本来の姿がぎっしり詰まっているのです。
様々な角度から質問する
例えば自己紹介や好きなものを聞く質問では、回答の内容はもちろん、一問一答にはないプレゼンテーション能力を見極めることができます。自社のイメージを聞く際にはどのように調べたかも質問することで、志望度の深さだけでなく調査能力や実践に移す行動力も窺うことが可能となります。
また、成功体験だけでなく挫折経験も聞けば、失敗した時の対処法やストレス耐性を測ることができます。さりげなく身近な人物からの評価を聞くことで、理論武装していない素の人間性を垣間見ることもできます。
効果的な求人のポイント
最後に、採用活動を効果的なものにするための「求人」の際に気を付けておきたいポイントをご紹介したいと思います。
「採用方針」を固める
一般的に、人事採用には「既存業務に対する人的資源の補充」と「新規ビジネス獲得のための人的投資」の2つが考えられます。それぞれの場合において、採用の目的や人材に求めるスキルや経験、募集人数や採用期間を明確にする必要があります。
目的
人材を募集する役職や職種、業務内容(営業、企画、総務、管理職等)など、どのような部門を強化するかの目的を明確にします。
人材像
一般的に優秀とされる人材を採用して、あとは実際の現場で育てようという姿勢ではなく、自社に合うのかどうか、自社で活躍できるのかどうかを徹底的に分析した自社固有の人材像を作る必要があります。
スキルや経験
特に中途採用の場合、スキルや経験は求人内容と応募者のミスマッチの原因ともなります。募集条件などの採用基準ラインを明確に設定する必要があります。
人員
中途採用のような短期的な人員計画の場合には、人員要請によって採用人員数を決めることになります。また、新卒採用など中長期的な視点に立った人員計画の場合には、定年退職の数や経営戦略などから人件費予算を算出し、採用人員数を決定します。
期間
求人募集する役職や職種、業務内容によって採用期間を考慮し、正社員や契約社員、派遣社員、パート・アルバイトといった雇用形態や勤務形態を決定します。
欲しい人材に合わせた求人方法・求人媒体を選択
基本となる「採用方針」が固まったら、いよいよ採用活動の実践に移ります。従来の採用活動の主流といえば、求人情報誌や求人広告、合同説明会などが挙げられますが、インターネットの普及に伴い、求人サイトやSNSの活用など、欲しい人材のニーズに合わせた求人媒体の選択が必要となります。
また、特に近年では人手不足が深刻化した売り手市場となっているため、エントリー型採用からオファー型採用に変化するなど、企業側からも積極的にアプローチする「攻めの姿勢」が求められていると言えるでしょう。
詳しい採用手法や求人媒体ごとの特徴は、こちらをご覧ください。
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募集条件のレベルを緩めてみることも時には必要
しかし、いかに求人方法や求人媒体を欲しい人材に合わせて採用活動を展開したとしても、優秀な人材の応募が少ない場合もあります。
半数にも及ぶ企業が新卒採用予定数を満たせない状況の中、厚生労働省が2016年に発表した平均有効求人倍率は、前年を0.16ポイント上回る1.36倍。求職者一人あたりの求人件数は7年連続で上昇しています。
つまり応募者は、複数の企業を比較・検討して、応募先を決めることができているのです。誰もが欲しいと思う優秀な人材になればなるほど、比較できる企業の数は増えることでしょう。
企業側としても、常に競合他社や同職種の求人情報にアンテナを張っておくことが必要となります。場合によっては待遇を改善したり、スキルや経験といった募集条件のレベルを緩めたりといったことも考慮に入れるべきでしょう。
【出典】厚生労働省 一般職業紹介状況(平成28年12月分及び平成28年分)について
ハローワークで優秀な人材を採るコツ
無料で採用活動ができるハローワーク。所定の求人票に記載するだけですので気軽に求人活動が実施できる反面、求職者とのコミュニケーションが非常に限られているため、十分な情報提供ができずにミスマッチが発生するなど、効果的な人材確保に至らないケースも多いのが現状です。そこで、ハローワークで優秀な人材を採る3つのポイントをご紹介しましょう。
「タダだから」という考え方をやめる
例えば、無料だからと常に求人募集を行っている企業がありますが、これは何かしら問題があるから常に人が足りないのだろう、と考えられてしまうため、逆効果になります。「タダだからとりあえず、ダメもとでやっておこう」という姿勢は、確実に求職者にも届いてしまうと考え、求職者が就職活動するタイミングに合わせて掲載するなど、通常の求人活動と同等の戦略を実践することが必要となります。
「求職者目線」で考える
求人票という限られたスペースを有効活用する場合、最も大切なのは、求職者の欲しい情報が網羅されているかどうかです。「事業内容」や「会社の特長」がそれぞれ上限90文字など、スペースが極端に限られている以上、自社の企業理念や特長といった企業価値をすべて正確に伝えるのは不可能です。企業側が何を訴えたいかではなく、求職者が何を欲しているかに情報を絞って応募者向けの求人票を作成することが、最大のポイントです。
ターゲットを絞る
一般的にハローワークは、厚生労働省管轄という安心感と雇用保険の窓口という役割から幅広い層に向けた求人活動ができる場ですが、近年では30歳未満のための「ヤングハローワーク」や、仕事と育児を両立させたい女性のための「マザーズハローワーク」など、求職者のターゲットを絞ったサービスも実施していますので、欲しい人材によって登録先を検討することも重要なポイントとなります。
まとめ
- 採用面接は、企業側・応募者側の双方がお互いを見極める場である。
- 面接官は企業の代表者であり、その印象が応募者の志望度を左右する。
- 採用面接では、ヒューマンスキルを効果的に把握するための質問を。
- 求人では、企業側からも積極的にアプローチする「攻めの姿勢」の時代へ。