連載:第38回 建設業
従業員の転退職で倒産、2年連続増 建設業が半数を占める
帝国データバンクは、「人手不足倒産」のうち、従業員や経営幹部などの退職・離職が直接・間接的に起因した「従業員退職型」人手不足倒産について調査・分析を行った。「従業員退職型」倒産は2023年1~7月に34件判明。前年同期(28件)を上回り、過去最多の2019年(37件)に次ぐ高水準に達した。「人手不足」が要因となった倒産(23年1~7月:124件)が過去最多ペースで推移するなか、足元では「従業員退職型」倒産が存在感を高めつつある。
2023年1~7月は34件発生 大半を建設業が占める
1~7月累計を業種別にみると、『建設業』が17件と大半を占めた。現場の職人をはじめ、建築士や施工管理者など有資格者の離職にともない、外注費の高騰や受注の減少を招き、事業継続を断念するケースが多くみられた。土木や内装、電気配線工事など、分野を問わず発生していることから、建設業界全体で従業員の転退職による倒産が頻発している。
そのほか、『サービス業』(9件)では、システムエンジニアの退職で受注を抑制せざるを得ずに倒産した「受注開発ソフトウェア業」や、整備士の退職により事業体制面の整備が困難になった「自動車整備業」の倒産が目立った。『運輸・通信業』(2件)では、自社ドライバーの流出による倒産もみられた。
加速する賃上げ機運 人材流出リスクの上昇が倒産増加につながる可能性
2023年は、3万品目を超える値上げラッシュによる物価高騰をはじめ、資源高による水道光熱費などの値上げにより、企業の賃上げ機運は日増しに高まっている。大手企業では基本給の底上げ(ベア)に取り組むほか、7月に行われた厚生労働省の審議会では今年度の最低賃金について、全国平均で41円(時給換算)引き上げ、1002円とする目安を定めた。
こうした「官製賃上げ」による最低賃金の上昇に加え、ポストコロナ下での人材獲得競争による労務費増加に対し、企業はこれまで以上に「本業で稼げるかどうか」が問われる。業績の改善が伴わないまま、人材確保のための賃上げに踏み切れない経営体力に乏しい中小企業において、従業員の給与面や労働環境への不満を解消できずに人材が流出し、事業継続が困難になり倒産に至るケースが増加する可能性がある。
調査概要
集計期間:2023年7月31日まで
集計対象:負債1000万円以上法的整理による倒産
調査機関:株式会社帝国データバンク
プレスリリース
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000715.000043465.html
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