連載:第4回 従業員のエンゲージメントを高める
社員の絆と感情が最優先。非常識を常識に。逆境スタートゆえの慣習破壊と急成長
旧習が色濃く残る住宅業界。そこにはいくつものブラックボックスが存在しています。例えば、質と価格の基準。ハウスメーカーから消費者に家が渡されるまでには、いくつもの会社や職種、いわゆるブラックボックスが介在します。そんな業界に一石を投じ、この10年で売上を5倍に伸ばした会社があります。屋根や壁の外装リフォームを専門とする株式会社プロタイムズ総合研究所です。下請けというビジネスモデルを直販に変え、職人を社員として雇用するなど、業界の常識を覆す取り組みでまたたく間に消費者の支持を集めました。一連の改革を可能にしたマネジメントとは?同社・代表取締役の大友健右さんに話を聞きます。
株式会社プロタイムズ総合研究所
代表取締役 大友 健右さん
1972年東京生まれ。大手不動産建設会社の東京エリア統括部門長として勤務した後、独立。外壁塗装・屋根塗装などのリフォーム業務を行う株式会社プロタイムズ総合研究所代表取締役社長に就任、わずか2年で会社規模を年商数千万円から10億円企業に引き上げる。2012年、賃貸マッチングプラットフォームを運営する株式会社ウチコミを設立し、代表取締役社長に就任。2020年、プロタイムズ総合研究所が行う外装リフォーム事業にて、新ブランド「ヤネカベ」を立ち上げる。
11人のメンバーで、川上の発注元から川下の下請けへ
――大友さんのこれまでの経歴を教えてください。
大友健右さん(以下、大友): 僕は若い頃からずっと住宅業界に関わってきました。最初は投資用マンションの販売会社、その後20代後半に大手の不動産建設会社へ移り、営業の責任者になりました。その会社の伸長率は当時、業界内で日本一でした。
しかしそんな時、創業社長が亡くなり、お家騒動が起きてしまいます。2年間で4名も社長が変わり状況は一変、売上はどんどん下がっていきました。そこで僕は、V字回復に導くための旗振り役を務めることになりました。
愛着がある会社を再び成長軌道に乗せよう!と始動した矢先、会社の株が売りに出ているという話を耳にしました。 経営陣が身売りを見据えているのであれば、その時点で僕に使命や役割はない と感じました。だから、その先を考えました。
結果、その会社で知り合い、理念や思いを共有できるメンバーと一緒に新たにやっていこうと決めました。11人が会社を辞めて、再スタートのためにプロタイムズ総合研究所に入社しました。プロタイムズ総合研究所への入社にあたっては、前社長と話をした上で、後々、僕が経営を引き継ぐということになりました。
前職は住宅業界の商流でいえば川上、現職は「外装業」であり川下です。「外装業」に目をつけたのは、前職で会社を復活させるための方策として考えていて、チャンスが広がっていると思っていたからです。
――転職を共にする11人のメンバーにはどんな言葉をかけたのですか?
大友: 僕は様々な局面を打開する際に「インポッシブル・イズ・ナッシング(不可能なんてありえない)」というメッセージを用いています。僕自身が前職でも同様のマインドでいたことは皆が知っていたので、特別な言葉は必要ありませんでした。お互い(ああ、そういうことね)といった感覚だったと思います。
特段、優秀な人材が集まったというわけではありません。世代差もありますし、女性もいます。背景はバラバラです。「家族的なつながり」というのが近い表現かもしれません。 確かなことは「お互いに大きな方針を共有できるメンバー」だった ということです。
組織論で言えば、前職がピラミッド型であるのに対し、僕らはフラットなチームを指向していました。ルールや仕組みによるマネジメントに、本質を見出していなかったのです。僕たちにとってそれは 「人と人との関係性」 でした。
――本質が「人と人との関係性」とは?
大友: 例えば、意図や情報を伝えるために必要なのは 「何を言うかよりも、誰が言うか」 。それが一番大事だと僕は信じています。
同じ指示や相談でも、誰が言うかのクレジットのほうがよほど大きい。内容を疎かにするわけではなく、それよりも 信頼しあえる関係性を作ることに重きを置いています。
例えば、とある伝達事項を「他のメンバーに納得してもらいたい」という時、伝える言葉や説明の仕方にフォーカスするのはある意味表層的で、本質は『○○さんがそう言うなら』というレベルの信頼関係だと思っています。
この記事についてコメント({{ getTotalCommentCount() }})
-
{{comment.comment_body}}
{{formatDate(comment.comment_created_at)}}
{{selectedUser.name}}
{{selectedUser.company_name}} {{selectedUser.position_name}}
{{selectedUser.comment}}
{{selectedUser.introduction}}
バックナンバー (8)
従業員のエンゲージメントを高める
- 第8回 社員主導で経営理念を刷新。「変わろう、変えよう!」と呼びかける社長が語った組織の変え方
- 第7回 孤独な管理職が困った瞬間を助ける「7つ道具」。利用者急増、よくある活用シーンとは?
- 第6回 社員の大量引抜きで気付いた理念の未徹底。多様性と全員の幸せを追求する経営を
- 第5回 経営者こそ知っておきたい、強い組織・チームづくりのための「心理的安全性」
- 第4回 社員の絆と感情が最優先。非常識を常識に。逆境スタートゆえの慣習破壊と急成長