連載:第1回 中小企業の危機管理術
レオス・キャピタルワークス藤野英人さんが語る中小企業の危機管理術
2019年10月消費税が10%となり、2012年の民主党政権下での 「税と社会保障の一体改革」三党合意による増税方針がようやく実現しました。 次世代の子どもたちに負担を先送りしないことは大変重要なことですが、 経営者としては、増税を引き金に、景気が後退する恐れを感じている人も 多いのではないでしょうか。2019年8月の内閣府景気動向指数の基調判断は「悪化」。 世界貿易機関による貿易量予測も大幅に下方修正。米中貿易摩擦の影響は、 日本はもちろん世界中を巻き込む気配が濃厚で、「リーマンショックの再来」を予測するエコノミストもいるほど。中小企業の経営者に、どのような心構えと危機管理が必要なのか、レオス・キャピタルワークス藤野英人さんに聞きました。
藤野英人 さん
レオス・キャピタルワークス株式会社代表取締役社長・最高投資責任者
国内・外資大手投資運用会社でファンドマネージャーを経験し、2003年に剏業。主に日本の成長企業に投資する株式投資信託「ひふみ投信」シリーズを運用。明治大学商学部兼任講師も務めている。
この記事でわかること
- 初対面の相手が信頼できるか見極めるためのポイントは?
- 「おかしいな」というシグナルを感じたら何をすべきか?
- リスクに遭遇した時、トラブルを大きくしないためには?
初対面の相手が信頼できるかどうかを見極めるには?
取引先の破綻、投資の失敗、詐欺などの不法行為、社員による不祥事……。会社に起こりうるリスクにはさまざまなものがあるが、それらを招かないために経営者が知っておくべき心構えとは? 投資家として数多くの経営者に直接会い、投資を行い実績をあげてきたレオス・キャピタルワークスの藤野英人氏はこう語る。
「何より大事なことは、 自分は絶対に騙されたりしない、とは思わないこと です。自分に限ってそんなことはない、などと思わず、もしかしたら騙されるかもしれない、と常に考える。健全な謙虚さを持っておくことです」
藤野氏は、前提として性善説に立つという。なるべく人を受け入れる、門戸を開いて、多くの人に来てもらうことは、とても大事だと語る。
「そうすることで、チャンスにも出会えるからです。しかし、同時にリスクもやってきてしまいます。だから、基本的に信じる一方で、警戒心を持っておくことが一番いい方法なんです」
まず、初めての人に会うときには、情報検索を必ず行う。今ではインターネットでいろんな情報が集められる。過去の経歴もわかるし、経営者のSNSの情報からもヒントはつかめる。
「会社について、周囲からどんなふうに言われているか、掲示板などでも調べられます。ポジティブ、ネガティブ、両方知っておく。 インターネットに書いてあることがすべて真実であるとは限りませんが、世の中からどんなふうに見られているかはわかります 」
ひとつ意外に危ういのが、インターネット上に極端に情報がないことだ。これはむしろ不自然。消しているか、何か理由があると感じるという。
「危ないなと感じたら、会わない、という判断をしてもいいと思います。会うこと自体、ネガティブな場合もある。反社会的勢力の可能性もある。誘われたパーティが怪しいと思ったら、それも行かないほうがいい。写真を一緒に撮られたりしただけで、後々リスクになることもありますので」
会社を訪問する際にも、チェックすべきことがあるという。まずは、エントランスや受付、さらには社長室にメッセージは潜んでいる。
「やたらに豪華な調度品が置いてある、というのは危ないシグナルですね。今では少なくなりましたが、一昔前はどうにも似つかわしくない超美人の受付嬢がいるのも危険を感じました。なんとかして相手を信用させようというオーラが出てしまっているんです」
信用に値しないと自分で思っているから、なんとかして信用してもらおうとする。その表れなのだ。
「例えば詐欺というのは明るい場所で行われるんです。よく使われるのは、ホテルのロビー。ホテルの持つ信用、雰囲気を借りて信用させ、真正面から詐欺行為に走るんです」
詐欺まで行かなくても、自分がちっぽけだと考えている人ほど、自分を大きく見せようとする。それをわかりやすく見分ける方法が他にもあるという。
「人脈を誇示することですね。大物政治家や女優と一緒に撮った写真が社長室に並んでいるとか。写真を見せないまでも、あの有名企業家は昔からの知り合い……と人脈の広さを強調するなど。信用させようとして言っているのでしょうが、実際は逆効果。 人脈をひけらかしてくる人は信用できない と私は判断します」
服装が華美だったり、社長が高級車に乗っていたりするのも、相手をなんとかして信用させようとしている気持ちの表れと見ていいとのこと。
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