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2019年4月9日(火)更新

RJP

空前の売り手市場と言われる現在の人材採用の現場において、企業と求職者との間で起こるニーズのミスマッチは、経営者や人事担当者にとっての悩みの種となっています。特に、新入社員の入社後のモチベーション低下は早期離職の原因にもつながるなど、問題は深刻化しています。そこで今回は、このような雇用のミスマッチに効果的な実践法として注目されている「RJP」に関して、詳しくご紹介したいと思います。

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RJP(Realistic Job Preview)理論とは?

RJPとは「Realistic Job Preview」の略で、直訳すると「現実的な仕事情報の事前開示」となります。1975年にアメリカの産業心理学者であるジョン・ワナウスが提唱した採用理論で、企業が採用活動に際し、応募者・求職者に対して仕事や職場、組織の実態について、良い面だけでなく悪い面や厳しい部分も含めたすべての情報を歪めることなく正確に提供することをいいます。

その性質から「ありのまま採用」や「本音採用」という呼ばれ方もしていますので、聞いたことのある方も多いのではないでしょうか。

なぜ、RJPが必要なのか?

企業側におけるRJPの最大の効果は、新しい人材の離職率を高める原因となる「リアリティー・ショック」と「入社後のミスマッチ」という二大要素を可能な限り抑制することで、採用時の定着率を向上させることができるという点にあります。

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リアリティー・ショックを軽減することができる

リアリティー・ショックとは、新入社員など新たに職に就いた人材が、入社前に抱いていたその企業や職場に対する「理想」と、実際に職場で働きながら経験する「現実」とのギャップに衝撃を受けてしまうことを言います。

リアリティー・ショックは、応募者数の確保や採用力向上のため、応募者にとって魅力的な情報だけを企業が提供することに起因します。つまり、目の当たりにした現実そのものがショックを引き起こすのではなく、事前の期待と差が大きいからショックを受けてしまう、と言うことができるのです。

入社した後に「経験」としてショックを受けてしまう前に、RJPによって「情報」として与えておくことで、理想と現実のギャップをより小さく抑えることが可能となります。

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「期待」と「能力」のマッチングを高めることができる

このように、仕事や組織に関する情報をありのままに事前に提供することで、応募者が企業に求めるものと企業が実際に提供できるものの「期待」をすり合わせしておくことが可能となります。 また、企業側がどのような能力を応募者に求めているのか、または個々の応募者の持っているどのような能力を求めているのか、といった情報も包み隠さずに情報提供することで、能力面でのマッチングも可能となります。

RJPで得られる心理的効果

RJPは、応募者・求職者に様々な心理的効果をもたらしてくれます。代表的な4つの効果をご紹介しましょう。

ワクチン効果(過剰期待を緩和する)

会社や職場、仕事、職務などに対する過度な期待を入社前に緩和して、入社後の失望や幻滅といった「理想と現実のギャップ」を軽減することができます。

セルフスクリーニング効果(自己選択や自己決定を導く)

事前に十分な情報を得ることで、自らの目でその職場や仕事と適合するかどうかを判断し、自らの意思で入社する企業を選択できるようになります。

コミットメント効果(組織への愛着や一体感を表す)

良い情報だけでなく悪い情報もありのままに提供する誠実な企業姿勢をアピールすることで、企業への愛着や共感、帰属意識が高まることになります。

役割明確化効果(入社後の期待の現実化する)

企業が自分に何を望んでいるのか、具体的に何を期待されているのかが明確になることで入社後の自分をイメージしやすく、仕事への満足度や意欲の向上につながります。

従来の採用方法とRJPに基づく採用との違い

それでは、従来の方法による採用活動と、RJP理論を取り入れた採用活動ではどう違うのか、具体的に見ていきましょう。

求人時に提供する情報

従来の採用活動における主流は、応募者の母集団をできるだけ多く確保するため、応募者にとって魅力的に映るような「良い情報」を積極的に売り込むという情報提供の方法でした。

一方、RJP理論を取り入れた採用活動では、本当に入社を希望してくれる「本気度」の高い人材に絞り込むことを目的として、良い情報だけでなく悪い情報も含めてありのままに誠実に伝えることになります。応募者の「量」より「質」を重視する方向にシフトしていると言うことができるでしょう。

選考の際に重視するポイント

従来の採用活動では、企業側が求める「能力面」での適合度を最重視していたのに対し、RJP理論に基づく採用活動では、能力面での適合だけでなく企業の「社風」と応募者の仕事に対する「価値観」との適合度も考慮に入れ、お互いに適合性を見極めて選び合うことを重視することになります。

入社後の新入社員の心理作用

従来の採用活動ではあくまでも質より「量」を重視していたため、応募者個人と企業の「相思相愛」度は決して高くはなく、前述のような「リアリティー・ショック」や「入社後のミスマッチ」が引き起こされる可能性も低いとは言えませんでした。

一方、RJP理論に基づく採用活動では、本気度の高い応募者に自らの意志で自社を選択してもらうことになるので、当然、満足度・定着率ともに高まることになります。

RJPによる採用を成功させるためのポイント

最後に、RJP理論に基づく採用活動を成功に導くために重要な4つのポイントをご紹介します。

RJP導入の5つのガイドラインに沿って導入する

RJPを導入するにあたって、より効率的に応募者の心理的効果を引き出すためには、5つの指標があります。

  • RJPの目的を応募者に説明して誠実な情報提供を実施し、十分な検討と自己判断による決定を促す
  • 提供する情報に適したメディアを使用し、信用できる正確な情報のみを提供する
  • 客観的な情報だけでなく、現役社員の意見など感情的側面も含めたリアルな情報を提供する
  • 組織の実態に合わせて、良い情報と悪い情報のバランスを考慮する
  • できる限り採用活動の早い段階で実施する

応募者を多く募れば、優秀な人材が採用できる、という考え方を捨てる

「応募者の数が多ければ多いほど、優秀な人材が含まれる割合も高くなる」という考え方は、いまだに根強く企業の採用の現場に残っており、「大規模候補者群仮説」などとも呼ばれています。

応募者数を確保しようとすれば、自ずとネガティブな情報は抑え、ポジティブな情報のみを提供するようになります。確かに、母数が多くなれば単純数は増えるでしょうが、残念ながら割合は増えません。

しかし、空前の売り手市場と言われている現代で必要なのは、応募者・求職者に自社を選んでもらうことです。そのためには、情報開示の質を高め、応募者や求職者にとって自己判断に足る十分な情報を提供することでマッチングの精度を高めることが重要となってきます。

「応募者数の確保」をプライオリティ・リストの最上位から外すことが、効果的な採用活動の第一歩であると言っても、過言ではありません。

体験的就業と組み合わせることで、相乗効果を生み出す

提供する情報に応じて最適なメディアを選択し、動画やテキストといったコンテンツのクオリティを重視して資料を作成したとしても、実際に体験してもらうこと以上にリアリティを感じてもらえる手法はありません。事前に応募者・求職者に組織の実態を把握してもらうためには、「入社前職場体験」や「インターンシップ」といった体験的就業が効果的となります。

入社前職場体験

入社前職場体験は、採用決定者に対して希望する職務を事前に経験してもらうための取り組みです。職場見学、体験入社など呼び方は様々ですが、すでに導入している企業も多く、1日から3日間程度のプログラムで実施されるのが一般的です。

重要なのは、やはり「良いこと」漬けにならないようにすることです。特に営業職など厳しい現場では、受け入れる社員側が良い部分だけを切り取って見せようとしがちですが、例えば現役社員が思っている不満も隠さずに伝えるなど、悪い部分もきちんと見せることを徹底させる必要があります。

インターンシップ

インターンシップと聞くと、就活準備として学生が自身のキャリアや職業の選択もしくは適性の見極めを目的に、自分の専攻の関連企業や関連業種の制度に参加するというイメージが大きいですが、昨今では企業側もそのメリットに着目し、導入するケースが増えています。

企業・業界のPR効果や学生の就職意欲の向上だけでなく、RJPの実践においてもインターンシップは効果的です。

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開示する情報の質やタイミングを熟慮する

RJPに基づく採用活動では、応募者や求職者に提供する情報の精度や質、採用過程における情報提供のタイミングなども、効果を大きく左右するポイントとなります。

応募者の視点での情報になっているか?

「良いことも悪いこともありのままに」と一口に言っても、それらを正確な情報として応募者に伝えるには、先入観を排除するためにも自社だけでなく第三者人のアドバイスをもらうなど、フラットな目線で情報を作成する必要があります。

また、実際に職場で働いている現役の社員にヒアリングした情報や、離職者の退職理由を体系化した情報なども、客観的な開示内容として有効です。

どのタイミングで「ありのままの情報」を伝えるか?

採用活動のプロセスにおいて「どの時点でどこまで伝えるか」も考慮すべきポイントとなります。もちろん採用過程の早期に実施するのが望ましいですが、段階によって提供できる情報量には制限があります。告知広告には大きなスペースは避けませんし、一人当たりの面接時間にも上限があります。企業の規模によっては最初から悪い情報も伝えてしまったら逆効果になるケースも考えられます。

効果的に伝達できる情報開示のステップや表現方法を検討することも重要なポイントです。

まとめ

  • RJPとは、求職者に対して組織の実態に関する悪い面や厳しい部分も含めたすべての情報を正確に提供すること。
  • RJPに基づく採用活動によって、新入社員のリアリティー・ショックを軽減し、入社後のミスマッチの発生を抑制できる。
  • 「量」より「質」を重視したRJPに基づく採用活動は、採用者の満足度、定着率の向上に効果的である。
  • RJPに基づく採用活動は、売り手市場となっている現代の採用の現場に即した効果的な採用手法である。
  • RJPに基づく採用活動は、採用者が事前に職場体験できる仕組みと組みわせることで、より有効な手法となる。

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