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諭旨解雇

2019年1月9日(水)更新

解雇には「普通解雇」をはじめ「整理解雇」と「懲戒解雇」の3つがあり、諭旨解雇(ゆしかいこ)は懲戒解雇の一つです。時折、諭旨解雇された従業員が解雇の無効を訴えた裁判について報道されることがあります。解雇は使用者から一方的に雇用契約を解除するもので、特に、諭旨解雇や懲戒解雇といった懲戒処分として行われる解雇はトラブルに発展することが少なくありません。本記事では、諭旨解雇によるトラブルを防ぐために、退職金が支給についてや、懲戒解雇や諭旨退職などとの違いを解説していきます。

諭旨解雇とは

解雇には「普通解雇」をはじめ「整理解雇」と「懲戒解雇」の3つがあり、諭旨解雇は懲戒解雇の一つです。

諭旨解雇は情状酌量の余地があるかが重要

諭旨解雇は懲戒解雇に相当する、あるいは懲戒解雇に準ずる非違行為をした社員に対して情状酌量の余地がある場合に企業がとる温情的な措置です。

諭旨解雇の多くは不祥事を起こした社員の長年の功績や本人の将来などを考えて、また、本人が反省しているなどの諸事情から懲戒解雇という重い処分を避けるときに行われます。

そのため、懲戒解雇に次ぐ重い処分ではあっても、諭旨解雇の場合は退職金が全額支払われることもあり、懲戒解雇に比べればワンランク軽い処分とされています。

諭旨解雇の就業規則における規定はさまざま

諭旨解雇は意外かもしれませんが、法律用語ではないので厳格な決まりも定義もありません。そのため、各企業の就業規則における規定のしかたにも差があるのが現状です。

たとえば、「諭旨により、解雇する」と解雇を明確にした規定もあれば、会社側が退職するよう勧告し、辞表を提出させた上で解雇、または自己都合退職とする旨を規定したものもあります。企業によって諭旨解雇の規定には違いがあるのです。

後者のように退職を諭旨し、あるいは勧告して辞表の提出を求めて自主退職の形をとる方法を「諭旨退職」と呼び、諭旨解雇と区別する考え方があります。この記事では、諭旨解雇と諭旨退職を、解雇処分である諭旨解雇と退職扱いとする諭旨退職を区別して説明します。

会社としては温情的処分。しかし裁判に発展することも

懲戒解雇に当たるような重大な規律違反をした従業員を諭旨解雇とした場合、会社側としては温情的に処分を軽くしたという認識でしょう。

しかし、不祥事を起こしたといっても従業者本人は、「会社の都合で辞めさせられた」と被害的に受け止め、不当解雇として紛争を起こすことも多いです。

一旦、紛争が起こると当事者間の話し合いでは解決ができず、裁判で争うことも少なくありません。

独立行政法人 労働政策研究・研修機構の調査では、過去5年間に懲戒処分をした企業における対象従業員との間で起きた紛争は「論旨解雇」が17.1%、「懲戒解雇」は18.0%でした。

諭旨解雇が原因で紛争になった割合は、懲戒処分のうちもっとも重い懲戒解雇と大きな差がありません。

また、紛争の解決状況はおよそ半数の48.1%は本人との話し合いで解決していますが、裁判で解決(和解を含む)が18.3%、外部の紛争解決機関で解決した企業も15.9%を占めました。

諭旨解雇によるトラブルを防ぐには、解雇に対する正しい知識と適切な手続き、そして運用においては慎重さも必要といえます。

【引用】独立行政法人 労働政策研究・研修機構 従業員の採用と退職に関する実態調査 -労働契約をめぐる実態に関する調査(Ⅰ)

解雇予告手当・退職金の有無

諭旨解雇は懲戒解雇と異なり、解雇予告手当や退職金を受給できることが多いです。会社側からすると、どんなときに解雇予告手当の支払いが必要になるのでしょうか。

解雇予告手当を理解するには、解雇に関する法的なルールをまず押さえておきましょう。

そもそも解雇とは

解雇とは、労働契約を使用者が一方的に解約(解除)して契約を終了することです。従業員にとっては突然、仕事を失うことになるので解雇については労働基準法において解雇制限や解雇予告などさまざまなルールを設けています。

たとえば、業務上のケガや病気による休業期間中とその後の30日間、あるいは法的な産前産後休業中とその後30日間にある人を解雇することはできません。

また、労働基準法では、労働契約の期間に定めがある場合、原則として契約期間中は解雇できないとしています。さらに、労働契約の期間に定めがない人を解雇した場合、使用者の「解雇権の濫用」とみなされるとその解雇は無効です。

たとえ解雇権の濫用がないとしても、解雇予告と解雇予告手当の支払いなどが必要になるので気をつけてください。

なお、労働契約法をみると、解雇権の濫用とされるのは客観的に合理的な理由がなく、さらに、社会通年上相当と認められない場合です。

そのため、止むを得ず解雇するときは解雇の理由(事由)を明確にした上で客観的で合理的か、社会通念上、解雇に値するものか否かを慎重に検討する必要があります。

【関連】解雇の意味や種類とは?解雇が認められるケースや解雇予告・解雇通知まで徹底解説 / BizHint HR

解雇予告と解雇予告手当

労働基準法によれば、使用者が社員を解雇するときは解雇の「30日前まで」に解雇予告をしなければなりません。

もし、即時解雇のように解雇予告をせず、直ちに解雇するときは解雇予告手当として「平均賃金の30日分以上」の支払いが必要です。

もし、30日前までに解雇予告ができず、解雇予告から解雇までの日数が30日より短くなったときは「30日に不足する日数分」の平均賃金を支払うといった方法もあります。

たとえば、6月30日付けで解雇する場合、解雇予告を6月10日に行ったとすれば解雇の日までの日数は20日間です。そのため、30日に不足する10日分の解雇予告手当が必要になります。

なお、解雇予告手当を支払う時期は、即時解雇であれば解雇と同時です。もし、解雇予告が遅れ、解雇予告手当を併用するときは遅くとも「解雇日まで」に支払う必要があるので注意しましょう。

解雇予告が不要となる場合

解雇をしても常に解雇予告が必要な訳ではなく、以下の場合には解雇予告をしなくても法的に問題となりません。

  • 事業所内で起きた横領事件など労働者の責に帰すべき理由があった場合
  • 地震などの天災事変など止むを得ない理由で事業を続けられなくなった場合

これらの場合には解雇予告をせず、また、解雇予告手当の支払いもせずに即時解雇が可能となります。

しかし、解雇をする前に所轄労働基準監督署長に「解雇予告除外認定」を受ける必要があるので適切に手続きをしてください。

また、次のような契約期間が短期、あるいは臨時的な就労の場合には、解雇予告制度が適用されません。

たとえば、契約期間が2か月以内の人や4か月以内の季節労働者がそれぞれの契約期間中にある場合です。

さらに、日雇労働者でその仕事に就いて1か月以内の人や試用期間中で14日以内など一定の条件を満たす人も解雇予告の適用除外者となります。

ただし、上記に挙げた日数を超えて継続して働く場合には解雇予告が必要となるので注意しましょう。試用期間中の人でいえば、14日を超えて15日以上働いた場合は解雇予告制度の適用となります。

諭旨解雇における解雇予告の適用

諭旨解雇の場合は解雇予告制度が適用されるので、事前に労働基準監督署長に解雇予告除外認定を受けた場合を除き、30日前までに解雇予告をする必要があります。

もし、解雇予告を行わなかった場合は、平均賃金の少なくとも30日分の解雇予告手当を支給しなければなりません。

諭旨解雇の場合は退職金が支給される?

論旨解雇は懲戒処分の一つですが、退職金の全額、もしくは一部を支給している企業は半数を超えているという調査があります。

これは(財)労務行政研究所が2012年に行った調査で、諭旨解雇の際に退職金を「全額支給する」と答えた企業は38.8%で、「一部支給する」は18.1%でした。

また、調査した企業のうち19.0%は退職金制度がなく、「その他」の20.7%の中には「ケースごとに異なる」「減額することがある」などが含まれています。

一方、退職金を「全額支給しない」は諭旨解雇では3.4%ですが、懲戒解雇の場合には69.3%を占めました。

さらに、懲戒解雇では「一部支給する」も0.6%と少なく、「全額支給する」とした企業はありませんでした。

【参考】財団法人 労務行政研究所 企業における懲戒処分の実態に迫る ~横領の場合、8 割近い企業が最も重い「懲戒解雇」を適用~

懲戒制度と退職金制度の規定

懲戒処分にともない退職金を全額不支給にしたケースでは裁判に持ち込まれることもあり、中には最高裁で争われたものもあります。

一般に、退職金の全額不支給に関する可否は懲戒処分が有効かどうかという問題とは別に事案ごとに判断されています。

また、諭旨解雇や懲戒解雇の場合に退職金の一部、あるいは全額を不支給にする場合に重要なことは、少なくとも就業規則などにあらかじめ規定し、社員に周知しておくことです。

なお、解雇の事由を含め「退職」に関する事項は、就業規則の絶対的必要記載事項のため必ず定めなければなりません。

しかし、「退職手当」や懲戒などの「制裁」に関する事項は相対的必要記載事項といわれ、定めがなければ就業規則への記載は不要です。

しかし、定めをする場合は就業規則中に記載しなければならないといった労働基準法上のルールがあるので、就業規則を点検し不備がないようにしましょう。

【関連】退職金制度とは?種類や相場、設計方法や導入までの流れをご紹介 / BizHint HR

諭旨解雇も「自己都合退職」

諭旨解雇は、本人に懲戒解雇に相当するか、それに準ずる非違行為があったときに行われるものなので離職は避けられないでしょう。

しかし、諭旨解雇ではこれまでの従業員の会社への貢献度や勤務状況、また、本人が反省し、謝罪していることなどを勘案し、企業が温情として処分を緩和するものです。

諭旨解雇は解雇の形をとりますが、雇用保険における区分としては「自己都合退職」になります。

後ほど詳しく説明しますが、普通解雇と整理解雇は「会社都合退職」になるので雇用保険の失業給付金を受給する場合には大きな差となることがあります。

懲戒解雇や諭旨退職との共通点と相違点

諭旨解雇は懲戒解雇の一種ですが、懲戒解雇とどのような共通点があり、どこが異なるのでしょうか。

ここでは諭旨解雇と諭旨退職の共通点・相違点についても併せて説明します。

懲戒解雇との共通点

懲戒処分として行われる解雇

諭旨解雇も懲戒解雇も、重大な規則違反などの行為に対する懲戒処分として行われます。

いずれも使用者から一方的に雇用関係を終了される解雇で、退職届を出して自主的に辞める退職に比べて厳しい条件で会社を辞めなければなりません。

使用者の側からみると、使用者は社内の秩序を守るために懲戒という形で不祥事を起こした従業員に制裁を科すことはできます。

しかし、むやみに行ってよい訳ではなく、減給や出勤停止、降格などの処分も含め懲戒処分を行うときは「懲戒権の濫用」にならないように慎重に進めることが重要です。

諭旨解雇や懲戒解雇などの懲戒処分が適切かどうかの法律上の判断では、解雇事由の客観性と合理性、また、社会一般から見たときの妥当性などの点が問われています。

【関連】懲戒処分とは?その意味や種類、就業規則の規定内容や実施手順まで徹底解説 / BizHint HR

懲戒解雇や諭旨解雇によるトラブルを防ぐには

諭旨解雇や懲戒解雇をされると、たとえ従業員に非があっても本人からみれば退職金や失業保険、その後の就職に影響するなど大きな不利益を被ることでしょう。

そのため、退職金の減額の可能性などとともに、懲戒の種類と事由、その程度などについては就業規則などにあらかじめ定め、社員への周知が必要です。

また、会社側は就業規則などに規定があるからといって安易に解雇すると、不当解雇として争いに発展する可能性があります。諭旨解雇や懲戒解雇によるトラブルを防ぐには、不祥事が起きたときは事実確認を迅速に、的確に行いましょう。

その結果、解雇が避けられない場合には解雇理由の合理性や処分の妥当性などを慎重に検討し、「解雇権の濫用」と判断されないようにしてください。さらに、本人の言い分を聴く弁明の機会を設けるなどの対応も必要でしょう。

解雇と退職証明書の交付

労働基準法第22条では、労働者から退職証明書の交付を請求された場合、使用者は遅滞なく証明書を交付する義務があります。退職証明書の多くは再就職等に用いられ、自主退職した人だけでなく、契約期間が満了した人や解雇された人も請求できるものです。

ただし、退職証明書は使用期間や業務の種類、賃金、退職の事由などを労働者の請求によって証明するものなので、本人が請求していない事項の記載をしてはいけません。

たとえば、退職理由が解雇の場合は解雇の理由を具体的に記載する必要があります。しかし、退職者から「解雇の事実のみ」を証明してほしいといわれた場合には、それ以外の解雇の理由などを記載してはいけないとされています。

なお、退職証明書は、労働者から請求があれば雇用保険の離職票とは別に交付が必要になるなどの決まりがあるので取り扱いに留意してきちんと交付しましょう。

懲戒解雇との違い

懲戒解雇と諭旨解雇は、解雇予告制度の適用と退職金の支給など点に違いがみられます。

懲戒解雇は解雇予告も解雇予告手当も不要?

懲戒解雇の場合、一般に即日解雇となります。即日解雇といっても、諭旨解雇と違い、解雇予告手当は支給されません。

解雇の法的なルールのところで説明したように、刑法上の重い罪を犯したなど労働者の責に帰する理由がある場合には解雇予告も解雇予告手当の支払いもせずに即日解雇が可能です。

ただし、解雇の前に所轄労働基準監督署長の認定を受けた場合に限られるのでくれぐれも注意してください。

懲戒解雇では退職金が全額支給されないことも

諭旨解雇は退職金が全額、もしくは減額されて一部支給になることが多いのに対し、懲戒解雇の場合は退職金の全額が不支給となることも少なくありません。

ただし、「懲戒解雇のときは退職金を不支給としてよい」とする法律上の定めはなく、判例によると解雇事由の具体的な内容によって個別に判断されています。

懲戒解雇でも退職金支給を命じる判決も

労働協約や就業規則などに退職金の支給の条件などをあらかじ明記している場合は、懲戒解雇の対象者であっても退職金を全額不支給にするのは注意が必要です。

労働基準法の施行に関する通達では退職金も賃金と同様に使用者は支払う義務があるとし、電電公社小倉電話局事件における最高裁の判決も支持する内容でした(最三小判:昭和43年3月12日)。

さらに、小田急電鉄事件(東京高裁判:平成15年12月11日)でも、懲戒解雇の有効性と退職金を不支給にする適法性は別々の判断基準が必要としています。

そのため、退職金を支払わないという扱いは、多額の横領事件などのように極めて重大な背信行為があるときなどに限られると考え、慎重に判断する必要があります。

諭旨退職との違い

諭旨退職も諭旨解雇と同様に法律用語ではありません。企業によって諭旨退職のことを諭旨解雇として取り扱っているなどあいまいな点が多く、退職勧奨とも混同されやすいので注意が必要です。

諭旨解雇より処分が緩和される諭旨退職とは

諭旨解雇は、労働者に懲戒解雇に相当するような非があるものの会社側が温情的に処分を軽減した解雇ですが、諭旨退職は依願退職の形をとります。

規則違反をした労働者に会社側が退職を諭し、あるいは勧告し、本人が反省して自主的に退職願を出せば個人的な事情で辞める人と同様に自己都合退職扱いとするのが一般的です。そのため、退職金の支給額やその後、就職する際に起こりやすい労働者の不利益は諭旨解雇処分よりもさらに軽いといわれています。

諭旨解雇との共通点

諭旨解雇、諭旨退職に用いられる「諭旨」とは趣旨や理由などを諭し(さとし)告げることです。諭旨解雇も諭旨退職の場合も労働者の非違行為が原因で懲戒の処分が下され、会社を辞めなくてはなりません。

しかし、諭旨解雇や諭旨退職は会社から一方的に辞めさせるのではなく、会社と労働者間で話し合い両者が納得した上で解雇、あるいは退職扱いにしようとするものです。

いずれも懲戒解雇ほどの厳しい処分ではなく、会社側の温情的な措置として退職金が支払われるなど処分の程度が軽減されます。また、事前に労使でじっくり話し合い、納得を得るという段階をつくることによって将来、労働事件に発展するのを防ぐという意味合いもあります。

さらに、整理解雇や普通解雇の退職理由は「会社都合」となりますが、諭旨解雇と諭旨退職はともに「自己都合」です。

さらに、諭旨解雇や諭旨退職は、会社が指定する履歴書に「賞罰」の項目があるといったケースを除けば、一般に履歴書への記載は必要ないといわれています。ただし、退職理由などを記載した退職証明書や離職票の提出によって不祥事がわかってしまうこともあり、面接で聞かれたときには偽りなく答える必要があるので注意しましょう。

本人の辞表の有無

諭旨退職の場合は企業側からの諭しに対して、本人から自主的に退職の意思表示をすることによって労働契約を終了させます。

そのため、本人の辞表(退職願、退職届)の提出が必要です。一方、諭旨解雇は、企業によって退職願を求めて労働者が提出すれば自己都合退職扱いにするといった規定をしているところもありますが、退職理由は解雇になるので辞表は必要ありません。

なお、辞表の提出については期限までに提出することを諭旨退職として扱う条件にすることが多く、就業規則の中にあらかじめ規定している企業もあるようです。

もし、期限までに辞表を提出しなかった場合には「離職時期を引き延ばしている」などと判断されて懲戒解雇に変更されることもあるといわれています。

しかし、ネッツトヨタ札幌事件では、企業が論旨退職の意思表示をしたものの就業規則では退職願の提出を必須としていなかったことなどから諭旨退職処分を有効としました(札幌地裁:平成24年6月5日)。

また、退職願を期限までに提出しないというだけで懲戒解雇に切り替えるのは厳しいのではないかという指摘もあり、安易に懲戒解雇にするとトラブルの原因になることもあるようです。

諭旨退職と混同されやすい退職勧奨

退職勧奨は会社から退職を勧め、従業員が自主的に辞表を提出したことをもって退職扱いにするものです。

しかし、退職勧奨には拘束力がなく、たとえ退職を拒んでも諭旨退職処分のように懲戒解雇になる可能性はありません。

また、退職勧奨の場合は退職証明書を請求したときの退職理由も「退職勧奨」と記載され、雇用保険上も「会社都合」として失業給付金を受給することも可能です。

さらに、退職勧奨は諭旨退職のように懲戒処分の一つとして行われる訳ではありません。

そのため、経営不振などの理由でリストラの対象者に行われる退職勧奨では、退職金の上乗せなど退職条件がよくなることもあります。

【関連】退職勧奨は会社都合?解雇との違いや失業保険についてもご紹介/BizHint HR

解雇予告制度の適応

諭旨退職は、本人の意思によって自主的に退職届を出して辞めるという自主退職の形になります。

懲戒として行われる退職処分であっても解雇ではないので、諭旨退職には解雇予告制度が適用されず、解雇予告手当が支給されることもありません。

企業イメージの毀損

不祥事を起こした社員を諭旨退職扱いにするのは社員に対する温情措置という意味合いだけでなく、企業側にもメリットがあるといわれています。

懲戒解雇で即時解雇にする場合には所轄の労働基準監督署長に届け出をして認定を受けることが必要で、諭旨解雇にする場合には解雇予告や解雇予告手当などが必要です。

また、前述のように労働者に大きな不利益をもたらす解雇は、後に違法な解雇として提訴されることも少なくなりません。

もし、不当解雇と判断され、企業名とともに新聞や雑誌などの記事に大々的に取り上げられれば、企業のイメージダウンは避けられないでしょう。

そのため、企業としてはできるだけ本人の自主的な退職となるように諭旨退職をあえて選び、解雇によるリスクを回避することもあるのです。

注意点

始めに説明したように諭旨解雇は法律用語ではなく、諭旨退職についても法律上の明確な定めがありません。

そのため、それぞれの企業で規定している諭旨解雇や諭旨退職の基準や対応は異なり、諭旨解雇と諭旨退職の区別もせずあいまいに使っていることも多いです。

しかし、ことばから受けるイメージ、さらに、就業規則に規定されていることと実際の運用に差があるといった場合にはトラブルにつながりやすいので注意してください。

退職ということばや辞表の提出から生まれる期待感

たとえば、諭旨解雇ではなく諭旨退職といった場合、労働者にとっては「退職」の意味合いが強く感じられ、退職金受給に関する期待感も大きくなるのではないでしょうか。

一方、諭旨解雇といいながらも辞表の提出を求めると本人は「退職扱いになった」と誤解してしまい、退職金が全額支給されるのではないかといった期待をする人も多いようです。

しかし、実際には解雇で退職金も減額されたという事態が起こると「辞表を出したのに解雇なのか」「なぜ減額されたのか」などの疑問がわき、トラブルの原因になるといわれています。

懲戒処分の対象者には混乱も生じやすい?

本記事のはじめに、諭旨解雇に関する規定では企業によって労働者に退職を勧告し、自主的に退職させるといった規定もあると説明しました。

それを読んだとき、皆さんの中には「諭旨解雇は解雇ではないのか?」「解雇といっても辞表を出せて退職にするものなの?」などの疑問がわいたのではないでしょうか。

このような疑問やわかりにくさ、あるいは混乱というものは、まさに懲戒の対象者にも起こる可能性があり、それが退職金などに対する誤った期待感などつながると考えられます。

処分対象者の混乱や誤解を防ぐために必要なこと

諭旨解雇にするのであれば、解雇であることを明確に伝えるとよいでしょう。労働者からみた場合、解雇か、退職扱いか、また、自己都合か会社都合かによって退職金の掛け率をはじめ、失業保険の受給できるタイミングや受給できる期間などに違いが生じます。

一般に、金銭的な問題、お金にまつわることは労働事件に発展しやすいので慎重さが重要です。

近年、小型のICレコーダーなど録音しやすい環境になっているため、本人が会社との話し合いの内容を録音して争うときの証拠とするケースも少なくありません。

就業規則において懲戒に関する規定を明確にした上で社員に周知しておき、処分の説明をするときには説明に使う用語をしっかりと理解し、説明が二転三転しないように注意しましょう。また、処分の妥当性を事前に検討するのはもちろんのこと、処分理由を具体的に説明できることも重要です。

普通解雇との違い

解雇のうち、整理解雇は企業の経営状況の悪化によって人員整理が必要なときに行われるもので、いわゆるリストラも整理解雇の一つです。

普通解雇は、整理解雇と懲戒解雇以外の解雇事由による解雇を指し、通常「解雇」といったときに指しているのは普通解雇のことです。

普通解雇の要因は以下のようなものがあります。いずれも改善の見込みが立たないなど雇用契約の継続が難しい場合に限って行われ、解雇理由には客観的な合理性があり、社会一般からみて解雇の妥当性があるかが重要です。

解雇要因

  • ケガや病気などによって健康上の問題があり、長期間にわたり労働ができない場合
  • 著しい職務怠慢などの問題があり、注意や指導を繰り返しても改善が見込めない場合
  • 業務における能力不足や職場内で著しく協調性に欠けるなどの問題によって業務に支障があり、改善の見込みがない場合

普通解雇の会社都合退職と雇用保険の関係

雇用保険に加入していた人が失業したとき、一定の条件を満たすと失業等給付を受け取ることができます。

失業等給付のうち求職者給付の「基本手当」、いわゆる失業手当は離職理由が自己都合の退職か、会社都合かによって給付制限や給付される日数(所定給付日数)などが異なります。

自己都合と会社都合による違い

自主退職した人は自己都合による退職のため、雇用保険の失業等給付では「一般の受給資格者」と呼ばれる区分です。

一般の受給資格者の場合、求職の申込みと離職票の提出後に必要な待期期間(通算して7日間)とは別に最大3か月の給付制限があります。また、所定給付日数は、対象者の年齢によらず最長でも150日です。

しかし、解雇された人や会社が倒産したなどの会社都合退職の人は「特定受給資格者」となり、一般の受給資格者のような給付制限がありません。

さらに、所定給付日数は年齢で変わりますが、最長330日になります。ただし、懲戒解雇や論旨解雇のように、従業員自身の責めに帰すべき重大な理由が原因で解雇された場合は一般の受給資格者とされ、残念ながら特定受給資格者にはなれません。

解雇された後、なかなか転職できず失業期間が長くなると失業給付金をどの程度、受給できるかは本人にとって死活問題といえるでしょう。

そのため、同じ解雇でもどのような解雇かが重要で、その解雇の妥当性などについて労働者から訴えられることも多いのです。

【関連】自己都合退職とは?会社都合退職との違い、退職金・有休・失業保険についても解説 / BizHint HR

こんな時はどんな処分?懲戒解雇、諭旨解雇、諭旨退職の基準

私生活で不祥事を起こした場合

私生活で起こした不祥事によって懲戒処分をされた労働者が、会社を訴えたという記事が新聞などで報道されることがあります。

私生活で起こした不祥事、いわゆる「私生活上の非行」について会社側はどこまで制裁を科すことができるのでしょうか。

これまでの判例をみると、職務外の不祥事については会社の名誉・信用を著しく害するものであるか、また、会社の体面を著しく汚したかなどの被害の程度などが問われています。具体的に判例を見ていきましょう。

痴漢行為をした社員に対する懲戒解雇などのケース

鉄道会社A社の社員Bは、休日に他社の電車内に乗り合わせた女子高生に痴漢行為をし、迷惑防止条例違反で有罪判決を受けました。

Bはこれまでに2回ほど逮捕歴があったため、A社はBを懲戒解雇とし退職金を不支給にしたところ、Bは退職金の全額不支給は不当であるとし、支払いを求めて提訴しました。

裁判では、退職金の全額を不支給とするだけの「重大な不信行為」があったか、Bの痴漢行為が長年、務めた労働者の功を抹消するほどの重大なものかが問われました。

また、休日に起こした不祥事という職務外の場合は、会社の名誉や信用を著しく害するもので、会社に対して現実的な損害を与えたなどの「強度の背信性」を有することが必要とされました。

さらに、私生活上の非行については対象者の職種や職位なども関係するといわれています。

本件では、鉄道会社であるA社が痴漢行為の撲滅に取り組んでいるにもかかわらず、A社の社員自身が痴漢行為を犯したという点なども検討されました。

判決では、同じ犯罪を繰り返していることなどの点から懲戒解雇は認められました。

しかし、社員Bには退職金の全額を不支給にするだけの「強度の背信性がある」とはいえないなどの理由で、A社に退職金の3割相当を支払うように命じています(小田急電鉄事件、東京高裁判:平成15年12月11日)。

なお、東京メトロ(論旨解雇・仮処分)事件では、通勤途中で痴漢行為をした鉄道会社の社員Cに対する諭旨解雇処分の有効性が争われ、解雇が無効とされました。

裁判では同種の事案と比べて「悪質性が高い」とまではいえず、社員Cに前科前歴、社内での懲戒処分歴もなく勤務態度も問題がなかったなどの点から論旨解雇は重すぎるとしています(東京地裁:平成26年8月12日)。

交通事故や飲酒運転による懲戒解雇が問題となったケース

住友セメント事件では、休日に飲酒運転をして死亡事故を起こし、禁固10か月(執行猶予3年)の有罪判決を受けた社員に対する懲戒解雇は無効と判断されました(福岡地裁小倉支:昭和48年3月29日)。

一方、事故を起こしてはいませんが、バスの運転手が休日に大量飲酒をしたにもかかわらず自家用車を運転して罰金刑に処せられた事案では懲戒解雇が認められています(千葉中央バス事件、千葉地裁:昭和51年7月15日)。

この裁判では、バス会社は安全確保を至上命令とし、日頃から運転手に対して厳しく注意・指導していたことなどを考慮して判断されました。

判例をみると、懲戒解雇や諭旨解雇の判断基準は一定の決まりがある訳ではなく、対象者の非違行為がどのようなもので、どれほど悪質かなどを個々に判断しているようです。

まとめ

  • 諭旨解雇は、懲戒解雇に相当する社員に対する懲戒処分の温情的な措置です。懲戒解雇に比べれば処分のレベルは軽減され、退職金が一部支給、あるいは全額支給されるケースもあります。
  • しかし、解雇された立場からすると自分に下された処分に納得できず、後になって紛争を起こすことも少なくありません。トラブルを防止するには解雇予告などの法的な手続きを適切に行い、懲戒事由などの就業規則への明記、および社員の周知などをきちんと行いましょう。
  • また、止むを得ず解雇するときは解雇権の濫用と判断されないように留意してください。解雇の理由を具体的にし、客観的な合理性があるか、さらに、解雇するのにふさわしい状況があるのかといった妥当性などの検討が極めて重要です。

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