CHRO(最高人事責任者)
日本ではまだ馴染みの薄いCHRO。ヘッドハンティングをはじめとした人材の流動的な活用が盛んな外資系企業においては、企業トップであるCEO、そして財務部門トップのCFOに続く第三の役割として重要視されています。近年日本でも注目を集め始めたCHROについて詳しく見ていきましょう。
1.CHRO(最高人事責任者)とは?
近年、CHRO(Chief Human Resource Officer)という役割に注目が高まっています。CHROとは企業における経営幹部の一員で、人事の統括責任者です。経営陣として経営に積極的に関わる権限があります。日本ではCHROという名称ではなく「取締役人事部長」「執行役員人事部長」といったような名称が使われることもあるようです。
一般的な人事部長は管理業務を中心として企業価値を伸ばすことを目指すため、経営や事業に疎くなりがちだという指摘もある一方で、経営に対する理解はもちろん、経営と人的資源のバランスを保つという役割があります。そのため、CHROは社員の能力の開発させて、結果的に会社の成長に貢献する役割を担っています。
2.CHROの具体的な役割とは?
CHROは人事の最高責任者として、人材の価値を高めるあらゆる取り組みを行います。
具体的には企業のビジョンや経営戦略に基づいた社員の採用・解雇・社員教育・研修さらには組織の改編や人事異動、そして人事評価の項目策定などを担っています。
さらに、社内外まで広くアンテナを伸ばし、事業計画に必要な場合は外部からも人材登用を行います。また、社外に優秀な社員が引き抜かれないようにも気を配り、社内の評価や報酬などの適正化を行う必要もあります。
CEOの右腕 経営を左右するCHRO
「企業は人なり」という言葉がありますが、企業の業績は人材が適所に配置されているか否かによって大きく左右されます。
この人事とそのポストをどうするのかということにおいて大きな役割を持つのがCHROです。企業に大きな影響力を持つ人材を見極め適所に配置する、と言葉にすれば簡単ですが、実際にはその人材は社内外から発見する必要があります。
損失を回避し、変革を促す
ミスマッチによる損失も回避しなくてはなりません。また、人材を評価する尺度も必要に応じて考え出す必要があります。現在の人事評価が必ずしも最善とは限らないからです。場合によっては最高責任者であるCEOへの意見をも辞さない姿勢で臨む必要があります。
従来型の人事部長との違い
いわゆる従来型の人事部門のトップである人事部長とCHROの違いとしては、その権限の大きさが挙げられます。
CHROは取締役として経営に参画する権限があり、また積極的な参画を強く求められる立場です。自社の成長戦略作りに深く関わること、そのために必要な人事施策企画・実行していくというマネジメント能力が求められます。これが、経営陣によって定められた人事施策を担ってきた人事部長との大きな違いです。
3.具体的な企業の人事好例
ではここで、Googleの人事トップが創業者の採用方針を変更させた例を見てみましょう。
GoogleのCHROが行ったこと
2006年にGEより人事のプロとしてGoogleにやってきたのがラスズロ・ボックです。そのころのGoogleは創設者のラリー・ペイジとセルゲイ・ブリンの方針で難関大学を優秀な成績で卒業した人材を採用していました。ボックはここにメスを入れ、社員の学歴とGoogleでのパフォーマンスの相関関係を調査しました。
データ分析によりわかってきたこと
分析の結果、大学ブランドとパフォーマンスは全くの無関係であることが判明しました。さらに、リーダーに必要な資質についても徹底したデータ分析を行いました。そして、Googleのリーダーに向いている資質は「日々の行動が予測可能であり、部下が安心して仕事を進めることができること」であるということを突き止めました。どんなに本人が優秀でも、問題発生時に不安定になり理性を失ってしまうようでは、部下は落ち着いて仕事をすることができません。それどころか良かれと思って部下に指示した仕事内容をどんどん変えていってしまうため、肝心の仕事の進捗を妨げて組織に悪影響を与えてしまいます。
CHROの施策により訪れたGoogleの変化
この分析は長く続いた創業者たちの人材に関する方針を一変させました。現在はGoogleの社員の半数近くは大学の学位を持っていません。業績についてはご存知の通りです。CHROの判断が会社経営に大きな影響を与える好例です。
【参考】これがグーグルの採用術だ!「学歴は関係ありません」人事トップが語る10の鉄則
4.CHROになるためにはどんなキャリアを積めばよいか?
CHROに求められるスキルとは
CHROに求められるのは人事における人材開発・管理のエキスパートであるだけでなく、その統括を行う立場から経営戦略の立案にまで積極的に関与することです。
現在CHROの肩書を持つ人というのは、やはり人事部出身が大半です。しかしこれからCHROが経営への参画をますます求められるにようになるためには人事だけでなく、様々な部署や企業でのマネジメント経験を必要とすることになるでしょう。
前述のGoogleをはじめとし、Apple、ユニリーバ、ネットフリックスなど多くのグローバル企業がCHROを重要なポストとして位置付けています。
まとめ
- CHRO(最高人事責任者)と従来の人事部長とでは「経営に積極的に参画する」という決定的な違いがある。
- CHROは企業の成長ビジョンに応じて最適な人事を行う責任がある
- Googleなどの進歩的な企業においてはCHROの影響力は大きく、CEOの方針すらも変更することがある。
- CHROは人事出身者が多いが、経営視点とマネジメント能力を持たねばならず、幅広い業務経験が求められる。
- 今後日本企業がグローバル化するためにはCHROの存在は非常に大きいものとなる。
参考URL
http://www.jmsc.co.jp/knowhow/column/no98.html
http://worklifefun.net/role-of-chro/
https://jinjibu.jp/keyword/detl/145/
https://www.careerinq.com/industry/cxo/interview/chro/
http://www.dhbr.net/articles/-/3602
https://newspicks.com/news/985445/body/
http://president.jp/articles/-/14483
http://store.toyokeizai.net/s/info/workrules/
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