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2018年1月2日(火)更新

減給

減給はまったく許されていないというわけではなく、合理的な理由に基づいたものであれば許されることがあります。労働基準法上、企業は労働者に対して、毎月必ず労働の対価としての賃金を支払うことが義務付けられています。加えて、賃金は労働者にとって最も重要な労働条件です。むやみに減給を行うことは労使間でのトラブルリスクを高める原因ともなるので、企業は、正しい認識を持つ必要があります。

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賃金の減給とは

減給とは『賃金減額』のことであり、会社が従業員との間で交わした労働契約の中で取り決めた、労働の対価として支払う所定の賃金の一部を減額して支給する対応のことを言います。

しかし、企業が勝手な理由で減給することは許されておらず、労働者の生活を保障する目的で、金額にも上限が設けられています。

ノーワークノーペイの原則

従業員が遅刻や早退、欠勤などの理由で労務を提供しなかった場合、あらかじめ労働契約や就業規則の中で未就労時間分の賃金は支給しないことを取り決めてあれば、労務が提供されなかった時間に相当する賃金をカットすることができます。これを「ノーワークノーペイの原則」と言い、本テーマの減給とは別に当然のこととして行うことができます。

【関連】ノーワーク・ノーペイの原則とは?遅刻時などの賃金控除計算法もご紹介 / BizHint HR

減給が可能となる理由

減給が可能となる理由として、次の四つがあります。いずれも法令による規定や判例等の積み重ねにより生まれた解釈であり、企業側に一定の制限を課しています。以下に、その詳細を解説します。

制裁による減給

企業が、従業員の勤務態度が不良である、従業員が会社の信用を汚すような行為を行った、などの違反行為に対して、懲戒処分の一つとして減給を行うことは可能です。しかし、企業側の裁量で自由に減給を行うことは許されません。減給処分を科すことに関しては、一定の制限があります。

その内容に関しては、後ほど説明します。

降格人事による減給

職位によって、賃金額に差があるのが通常です。よって、企業が合理的な理由で従業員を降格させた場合に、降格した後の賃金が降格後の職位に該当する賃金に減額されることについては、違法性は問われません。

しかし、降格させることは従業員に対して労働条件の不利益化を与え、且つ従業員のやる気にも影響を及ぼしますので、安易な決定は避けるとともに、本人に対する十分な説明を行うなど慎重な対応を行う必要があります。

人事制度の変更による減給

人事制度を変更することにより、従業員に支給する賃金の決め方が変わる場合があります。それに伴い、毎月支給されている賃金額が減ってしまう従業員が現れることもあります。これに関して、従業員に支給する賃金の総額を変えることなく分配の方法を変えただけのことであるのならば、全従業員にそのことを周知して、不利益の生じる従業員に対する一定の配慮を行うことで、何ら問題は発生しません。

しかし、従業員に支給する賃金の総額を引き下げるなど、総体的な従業員の労働条件の不利益変更を目的としたものである場合は、従業員との間で合意を得る必要があります。

なお、合意を得るというのは、決定したいことに対して当事者間での意思を合致させることを意味します。

経営難による減給

業績が著しく悪化し、現状の人件費負担を維持し続けると事業の継続が困難になると見込まれるケースなど、一時的に従業員に支給する賃金の減額に踏み込まなければならない場合もあります。そのような場合であっても、企業側の裁量で自由に減給を行うことは許されていません。従業員の同意を得たうえで行う必要があります。

制裁による減給の制限額

企業が、従業員に対して制裁による減給を科す場合は、法律で定めた限度額の範囲内で行う必要があります。

減給の限度

制裁による減給の限度額は、労働基準法第91条で、1回に対する限度額と総額に対する限度額が定められています。

【参考】労働基準法第91条|制裁規定の制限

1回の減給額

制裁による減給に関する1回の限度額は、平均賃金の1日分の半額です。どれだけ重たい懲戒事由であっても、減給という形で懲戒処分を行う場合は、その金額が平均賃金の1日分の半額を超えてはならないという意味です。

平均賃金とは

平均賃金とは、労働基準法の定めに基づいて、企業が従業員に対して休業手当や解雇予告手当などを支給する場合の計算に使用する賃金額のことです。その計算方法は、直近3カ月間の支払賃金の総額を当該3カ月間の暦日数(休日を含めた総日数)で割って求めます。

対象となる期間中に、業務災害による休業期間や産前産後の休業期間、育児・介護による休業期間や試用期間が含まれる場合は、その期間中に支払った賃金額と該当する期間を、それぞれ賃金総額と暦日数から控除したうえで計算します。

さらに、あらかじめ支給額が確定していない賞与などが算定期間中に支払われた場合は、賃金総額から控除して計算をします。

一賃金支払期における減給額

制裁による減給に関しては、1回の限度額とは別に、一賃金支払期に支払われる賃金総額の10分の1を超えてはならないという決まりもあります。

賃金支払期とは

賃金支払期というのは、賃金締め日の翌日から次の賃金締め日までの期間のことを指します。月に2回以上賃金の支給日がある会社の場合は、1回ごとの賃金締め日の翌日から次の賃金締め日までの期間が該当します。

それぞれの賃金支払期の中で減給に値する懲戒事由が複数回あったとしても、減給の総額が当該賃金支払期に対して支払われる賃金総額の10分の1の範囲内に収まるように適用する必要があるということです。

なお、該当する賃金支払期の中で適用しきれなかった減給分を次の賃金支払期に繰り越して、賃金総額の10分の1の範囲内で適用することは違法ではありません。

賃金総額とは

賃金総額というのは、一賃金支払期に対して実際に支払われた賃金の総額(手取りの金額ではなく本来の支給額)のことを指します。遅刻や早退、欠勤などに対してノーワークノーペイの原則に基づき行った賃金カットと制裁による減給とが重なった場合は、ノーワークノーペイによる賃金カットを行った後の賃金の総額が対象となります。

制裁による減給を行う場合の注意点

制裁による減給に関しては、金額面での制限だけではなく、運用面での制限も存在します。

就業規則への明記が必要

制裁による減給は、就業規則上に根拠がある場合にのみ行うことができます。よって、従業員に対するペナルティとして減給処分を行えるようにしたいと考えているのであれば、そのことを就業規則上に規定する必要があります。

ちなみに、制裁事項に関しては、会社がルール化した場合は必ず就業規則上に規定して、その内容を全従業員に周知させることが義務付けられています。

懲戒処分としての効力

就業規則というのは、従業員全体に適用する労働条件等を定めた会社のルールブックです。従業員代表者の意見を聞いて、全従業員に周知し、労働基準監督署に対する届け出手続きを行った場合に、規定された内容が正式に効力を発します。

そのような就業規則上に減給を含む懲戒処分に関する規定が存在すれば、会社が従業員に対して減給のペナルティを科すことへの効力も生じます。

なお、従業員数が10名未満であるために就業規則を作成していないなどにより、減給に関する就業規則上の規定根拠が存在しない状況下で特定の従業員に対して減給のペナルティを科す場合には、減給する理由に社会的相当性が認められ且つ本人の同意を得ることが求められます。

就業規則への記載方法

制裁による減給を就業規則上に規定する場合は、懲戒に関する規程の中に減給の項目を設けて具体的な理由を記す対応が一般的です。

以下に、規定するときの例を記します。


就業規則第〇〇条(懲戒の種類および決定)

懲戒処分は次の6種類とし、就業規則第〇〇条に定める賞罰委員会において処分を決定する。

(1)譴責
  始末書をとり、将来を戒める。
(2)減給
  1回につき平均賃金の1日分の半額以内とし、その総額が該当する
  賃金支払期間に支払う賃金の総額の10分の1の範囲内で行う。
(3)出勤停止
  ……
(4)……
  ……

2 処分が決定された場合、人事部より本人に通知する。

就業規則第〇〇条(減給事由)

社員が次の各号の一つに該当するときは、減給に処する。
(1)譴責処分を1年間に2回以上うけたとき
(2)業務上の指示命令に従わず、注意をしても態度が改まらないとき
(3)……


一事案に対して一回のみ

一つの懲戒事由に対して、複数回繰り返して制裁による減給を行うことはできません。あくまでも、一つの懲戒事由に対して一回の制裁による減給を行うというのが鉄則です。

なお、一つの懲戒事由に対して、制裁による減給とは別に出勤停止処分を科して、当該出勤停止処分期間中の賃金を支払わないという対応を行うことはできます。

前述した懲戒規程の中に出勤停止に関する項目が設けられており具体的な理由も記されている状態で、対象となる懲戒事由が減給の事由にも出勤停止の事由にも該当している場合に、そのような運用が可能となります。

過去への遡りはできない

従業員が不始末を起こしたときに、制裁による減給を行える根拠がなかったために、後日減給に関する規定を作成して、過去に遡って減給処分を科すような運用を行うことはできません。懲戒事由が発生した時点で、それに対して制裁を行う根拠があった場合にのみ制裁を科すことができるのです。

相当性を確保する

制裁を科せられることは従業員にとっては不利益なことであり、相当性を欠いた制裁は、労使間でのトラブル発生のもととなります。ここでいう相当性とは、制裁を科すことの合理性と手続きのことを言います。

制裁を科すことの合理性

制裁を科すことの合理性というのは、制裁の内容が重たい場合、就業規則上に規定された事由に該当していたのだとしても、問答無用でいきなり適用するのではなく、対象者を指導し、あるいは軽い制裁を科すなどして本人に改心や事態を改善する機会を与え、それでも状況が繰り返されるなどして追加の制裁が必要となった場合に適用するようなやり方が求められているということです。

減給を科す場合も、いきなり適用するのではなく、先ずは注意を与え、あるいは始末書を書かせて、それでも改まらない場合に適用するやり方が望ましいです。

制裁の手続き

制裁を行う場合、客観的な事実に基づいて、公平に決定することが求められています。

本人の主張に耳を傾けることなく一部の情報だけを鵜呑みにして処分を科す、特定の人間だけで恣意的に処分を決定する、などといった対応を行った場合、処分を巡る争いが発生した時に、その処分が無効であると判断されてしまうこともあります。

まとめ

  • 企業は、合理的な理由がある場合は、従業員に対して減給を行うことができる。
  • 制裁による減給を行う場合は、金額面、および運用面に関する制限がある。
  • 制裁を行う場合は、就業規則上に根拠を設けて、内容を全従業員に周知する必要がある。
  • 就業規則に基づく制裁を行う場合であっても、一事案につき一回のみ、過去への遡りはできない、相当性を確保しなければならない、といった制約がある。
  • 制裁を行うことに関しては、理由の合理性や手続きの正当性が求められるため、専門家への相談を行うなど、慎重な対応が求められる。

<執筆者>大庭真一郎 中小企業診断士・社会保険労務士(大庭経営労務相談所)

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