選択と集中
選択と集中とは自社の得意とする事業分野を見極め、その事業分野に対して経営資源を集中的に投下することによって経営効率や業績を高め、競合他社との差別化を図る攻めの経営戦略です。選択と集中の実施によって組織の飛躍的成長や経営危機からの復活を実現させるために必要となる数々のノウハウを、言葉の持つ意味や英語訳、実施によるメリット・デメリット、具体的な実施方法と押さえておくべきポイント、実際に選択と集中に取り組んだ企業の成功事例や失敗事例などの項目に整理し、分かりやすく解説致します。
選択と集中とは
選択と集中とは、複数の事業分野に進出している多角経営企業や多種多様な製品を取り扱っている企業が自社活動の中核となるコア事業の見極めと選択を行い、組織内の経営資源を集中的に投下することによって経営の効率化や業績向上を目指す経営戦略です。
この選択と集中によって除外されてしまったノンコア事業は、規模の縮小や撤退、事業売却などの選択肢から今後の対応を検討されることになります。
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選択と集中の英語訳
選択と集中は英語で『Selection and Concentration』や『Concentration in Core Competence』と訳されています。
『選択』を意味するSelectionと『集中』を意味するConcentrationを組み合わせた『Selection and Concentration』はとてもシンプルな直訳的表現です。それに対し、『競合他社に対して圧倒的なアドバンテージを得ている事業分野』や『独自の技術やノウハウを多く保有している事業分野』、『他社が容易に模倣することのできない技術やスキル』などを指すCore Competence(コア・コンピタンス)にConcentration(集中)する『Concentration in Core Competence』は意訳的表現であるといえるでしょう。
『選択と集中』という概念はピーター・ドラッカーが生み出した
「成果をあげる人は、多くのことをなさなければならないこと、しかも成果をあげなければならないことを知っている。したがって自らの時間とエネルギー、そして組織の時間とエネルギーを、一つのことに集中する。もっとも重要なことを最初に行うべく、集中する。」
【引用】(ピーター・F・ドラッカー,『プロフェッショナルの条件:いかに成果をあげ、成長するか』,ダイヤモンド社,2000年)
「完全な失敗を捨てることは難しくない。自然に消滅する。ところが昨日の成功は非生産的となったあとも生き続ける。」
【引用】(ピーター・F・ドラッカー,『経営者の条件』,ダイヤモンド社,1966年)
これらは経営の神様として有名なオーストリアの経営学者ピーター・ファーディナンド・ドラッカー(Peter Ferdinand Drucker)氏の言葉です。この他にもドラッカー氏は『選択と集中』に関する数々の名言を残しています。
今や多くの企業経営者が経営手法のスタンダードとして認識している『選択と集中』ですが、その概念が今から50年以上も前にドラッカー氏によって生み出されていたことを知る人は決して多くありません。
ジャック・ウェルチが『選択と集中』を世に広めた
選択と集中という言葉を聞いて多くの人が最初に思い浮かべる人物は、ドラッカー氏ではなくジョン・フランシス・“ジャック”・ウェルチ・ジュニア(John Francis “Jack” Welch Jr.)氏でしょう。
ウェルチ氏は1981年から2001年にかけてゼネラル・エレクトリック(General Electric Company、GE)社のCEO(最高経営責任者)を務めた人物であり、20年の間にGE社の売上高を5倍以上、純利益を8倍以上に増大させた経営手腕を持つことから『伝説の経営者』や『20世紀最高の経営者』と評されています。そのウェルチ氏が『M&A(企業の合併・買収)』とともに力を入れていたのが『リストラ』と『ダウンサイジング(規模縮小)』です。
ウェルチ氏はCEOに就任後すぐにGE社の経営コンサルタントを担当するドラッカー氏のもとを訪れ、GE社の現状分析やコンサルタントを依頼しました。そして、ドラッカー氏のコンサルティングを受けたウェルチ氏は『世界で1位か2位になれる事業だけに注力する』という大規模な選択と集中の実施を決意したのです。
一見無謀とも思える大規模な選択と集中を実施した結果、GE社は飛躍的な成長を遂げることができました。このウェルチ氏の功績はすぐに全世界で大きな話題となりました。そして、ウェルチ氏の名前とともに『選択と集中』という経営改革手法も広まっていったのです。
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選択と集中のメリット
選択と集中という言葉を経営用語として耳にしたことはあるけれど、経営戦略や成長戦略としての効果や組織にもたらすメリットについて正しく理解できていない企業経営者は決して少なくありません。 組織内で選択と集中を戦略的に扱うため、選択と集中が組織にもたらすメリットについてしっかりと学んでいきましょう。
事業価値を最大化することができる
選択と集中による最大のメリットは経営効率化による事業価値最大化です。事業価値とは企業が行っている事業もしくは事業に投資している経営資源が今後生み出していくと予想される価値の総和の事を指します。
経営資源に含まれる『ヒト』、『モノ』、『カネ』、『情報』の4要素はいずれも有限であり、無計画に際限なく使用することはできません。そのため、ある事業の事業領域拡大を実現させるためには、融資や新規採用といった経営資源の増加策を練るか別事業の縮小を検討しなければなりません。
赤字事業を縮小または撤退して黒字事業に力を注ぐというのは日本企業だけに限った話ではなく、世界中のビジネスシーンにおけるマネジメントの定石です。組織内に存在する経営資源を効率的に活用することによって、事業価値の最大化を実現することができるでしょう。
大幅なコスト削減を実現できる
どのような事業を営む企業であっても、自社のコア事業に関しては突出した高い知識と優れたノウハウを保有しています。そのため、事業範囲を得意な事業分野のみに絞ることにより、組織内に蓄積された数々のノウハウを最大限に活かした事業活動を展開することができるようになります。
事業規模拡大に伴う増員や新製品開発に伴う業務増加に対しても、該当分野において培ってきた知識や経験をフル活用することで容易に人員配置や業務プロセスの最適化を行うことができます。また、組織構成がシンプル化することで組織内の情報共有や事務処理がスムーズとなるため、無駄なコストを圧縮することができます。
このように選択と集中を実施することで組織は大幅なコスト削減を実現することができるのです。
得意分野において飛躍的な成長が期待できる
企業にとってマーケティングは市場ニーズを学び、顧客の声を得ることのできる貴重な機会です。しかし、事業を多角化してしまうと各事業に対して個別のマーケティングが必要となるため、多くのコストをかけて全事業に対して詳細なマーケティングを実施するか、総コストを抑えるために事業ごとのマーケティングの質を下げるかのどちらかを選択しなければならなくなります。
それに対し、事業分野を1つに絞り込んだ企業であれば詳細なマーケティングを定期的に実施することができます。また、新商品開発に関しても多角経営の一角として同事業を営んでいる企業とは比較にならないほど多くの費用を投資することが可能となります。そのため、顧客満足度の高い商品やサービスを次々に開発し、提供することができるのです。
顧客の心を鷲掴みにする商品やサービスを継続的に世に送り出すことで、自社のブランド価値は少しずつ段階的に高まっていきます。企業や商品の知名度が高まることによって、更なる売上アップやシェア拡大を期待することができるでしょう。
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イノベーションを生み出しやすくなる
イノベーション(innovation)とは、従来の発想やイメージとは異なる新しい切り口や活用法を創造することです。ビジネスシーンにおいては一般的に『ユーザーに衝撃と感動を与える革新的な新商品や新サービス』をイノベーションと呼んでいます。
このイノベーションを生み出すためには、『明確な経営戦略』や『多様性』、『マーケティング力』、『多くの経営資源』、『多くの時間』など様々な要素が必要となります。そして、これらの要素の多くは選択と集中の実施によって組織内に確保することができるため、多角経営を行っているライバル企業に比べてイノベーション創造に関しても有利な環境を構築することができるのです。
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コスト・リーダーシップ戦略を展開することができる
コスト・リーダーシップ戦略とは、アメリカの経営学者でありハーバード大学経営大学院(Harvard Business School、HBS)の教授でもあるマイケル・ポーター(Michael Eugene Porter)氏が提唱した『コストの低さや価格の安さを最大の武器に集客を行うことで競合他社に対する競争力を高める競争戦略』です。
選択と集中の実施によって経営資源を一極集中化することで生産量増加や作業効率化による大幅なコスト削減を図ることができますが、この削減されたコストを商品やサービスの提供価格に反映させることにより、コスト・リーダーシップ戦略を展開することができるのです。
この際、削減されたコスト全てを提供価格に反映させることによって価格競争の面で圧倒的な競争優位性を得ることができ、競合他社よりも僅かに価格を下げることで競争優位性を保ちながら売上や利益の最大化を図ることができます。
選択と集中によるコスト削減効果を活かしたコスト・リーダーシップ戦略を展開することによって、競合他社や市場の動きに合わせた柔軟性のあるポジショニングを実現させることができるでしょう。
経営の安定性が高まる
経営に絶対的な安全策は存在しません。しかし、恒常的に赤字を出し続けている事業部門を放置してしまっては、経営の安定性を大きく損なわせてしまいます。選択と集中は組織の抱えるリスクを最小化し、リターンを最大化させるという基本的に忠実な方法で組織の経営安定性を高めてくれるのです。
選択と集中のデメリット
選択と集中は多くの効果やメリットを組織にもたらしてくれます。しかし、副作用ともいえる問題点やデメリットも複数存在します。より安全に、そして効果的に選択と集中を扱うため、プラス面と合わせてマイナス面も学んでおきましょう。
組織内の人財を減少させてしまう可能性がある
GE社のウェルチ氏は選択と集中によって大規模なダウンサイジングを実行しました。そして、それに伴い多くの人材を解雇しました。しかし、ここに2つの人財減少リスクが存在するのです。
1つめは人財の流出。選択と集中によって得意な事業分野のみに絞込みを行うことで、少なからず人材過剰な状況が発生します。また、どれだけ優秀な人材であってもその事業分野に適していなければ最大限活用することはできません。このような背景から、解雇や自己退職によって人財が外部へと流出してしまう危険性があります。
2つめは人財の消失。実施目的や実施後の具体的なイメージを正しく共有できていないまま進められた選択と集中は、従業員たちからモチベーションと信頼を奪い去ります。また、人材特性とのマッチング精度が低い職場に再配置された人財の中には、パフォーマンスを十分に発揮できないフラストレーションから人在や人罪へと姿を変えてしまう者もいます。
このように選択と集中は組織内の人財を減少させるリスクを多く含んでいるため、正しい知識の下、計画的かつ戦略的に進めなければならないのです。
日本的雇用慣行との相性が悪い
GE社の選択と集中では大規模な人員整理や再配置が行われました。しかし、多くの日本企業では未だに終身雇用制度や年功序列制度といった日本的雇用慣行を雇用条件として掲げているところも多いため、「大規模な人員整理や再配置を伴う選択と集中は日本企業には向いていない」という声を耳にすることも少なくありません。
終身雇用制度とは正社員雇用した従業員を特別な事情がない限り同社で定年まで長期雇用することを前提とした制度であり、雇用側の一方的事情により解雇した場合には雇用者側から解雇権の濫用として解雇の無効を訴えられることがあります。
また、年功序列制度は勤続年数や年齢に応じて役職や賃金を半自動的に上昇させていく制度であり、選択と集中による再配置で保有スキルと要求スキルの不一致が発生した場合にコストパフォーマンスが大幅に低下するという問題が生じます。
このように会社都合による人員整理や人材特性を最優先しない再配置が日本的雇用慣行と相性が悪いことも、選択と集中のデメリットであるといえるでしょう。
変化対応力が大幅に低下することで倒産リスクが高まる
選択と集中の実施によって組織の経営安定性を高められるのは紛れもない事実です。しかし、実施前に綿密な中長期成長戦略を組んでおかなければ、その効果は一時的なものになってしまいます。
【選択と集中の実施前に確認すべきポイント】
- 選択候補にあげられた事業分野は今後も長期にわたって需要を見込むことができるか
- 他社の事業参入によって更なる市場拡大や需要拡大を見込むことができるか
- 自社の主力商品や主力サービスの存在意義を奪うような代替品や代替サービスが生まれる可能性はないか
- その事業分野にはイノベーションを生み出す余地が残されているか(商品やサービスのアイデアが出し尽くされていないか)
- 流行や市場ニーズの変化によって事業分野から撤退を余儀なくされた場合の対応を考えているか
選択と集中による一極集中経営は、多角経営に比べてリスク分散という点で大きく劣っています。そのため、選択と集中の失敗によって組織が傾いてしまうほどの致命的ダメージを負ってしまった企業も多く存在します。
このような最悪の事態を回避し、組織の更なる繁栄を実現させるためにも、選択と集中の実施には高い先見性を持って戦略的に取り組まなければならないのです。
組織の成長可能性に制限がかかってしまう
得意事業への一極集中は非常に効率的で安定性の高い戦略です。しかし、その一方で組織の成長可能性を狭めてしまうリスクも含んでいます。
鉄工業から自転車部品と釣具の製造へとシフトすることで成功を収めた株式会社シマノ(旧:島野工業株式会社)や、繊維機械製造と自動車製造の両分野で業界トップレベルの成果を出すことに成功した株式会社豊田自動織機およびトヨタ自動車株式会社など、創業当初と異なる事業分野において成功を収めた企業は多く存在しますが、選択と集中により事業分野を1つに絞った企業は流行や市場ニーズの変化などの外部要因による主力外事業活性化の恩恵を一切受けられなくなってしまうのです。
従業員や株主からの反発が起きやすい
選択と集中の実施は組織にとって大きなチャレンジとなります。
中にはグループ子会社を完全子会社化することによって本社に経営資源を集中させるといったケースもありますが、その多くは事業の縮小や撤退、売却とともに人員削減を伴うものであるため、仕事を失ってしまうかもしれないという不安から選択と集中という手法に拒否反応を示す従業員は少なくありません。また、失敗した時のダメージが大きく、計画的かつ戦略的に扱わなければ第一線で戦い続けられる組織力を維持することが難しいため、株主からも否定的な意見が寄せられることがあります。
このように全体の足並みが揃っていない状態では、強制的に選択と集中を実施したとしても絶対に失敗してしまいます。個々の意見にしっかりと耳を傾け、組織に関わる全ての人物が納得できる形を導き出すことによって選択と集中の成功率を高めることができるでしょう。
選択と集中の実施方法とポイント
選択と集中は組織の持つ強みを最大化することによって業績向上や他社との差別化を図ることのできる優れた経営戦略です。ですが、その一方で取り扱いを誤ることにより組織を傾けてしまうほどの大きなダメージを負ってしまう危険性も含んでいます。
選択と集中を組織成長へと正しく結びつけるためには正しい実施方法を学ばなければなりません。
選択と集中は次の9つのプロセスを通じて実施することになります。
1.自社の企業理念や経営方針、今後のビジョン、経営課題を再確認する
選択と集中の第一歩は自社の企業理念や経営方針、ビジョン、経営課題の再確認から始まります。ここでしっかりと企業の方向性を再確認しておくことにより、「最も大きな収益をあげているから」や「最も多くのノウハウを蓄積しているから」といった表面的な理由ではなく、創業者の想いや将来ビジョンの実現といった戦略的な理由で注力するべき事業を選択することができるようになります。
2.選択と集中の実施単位を設定する
複数の事業分野に進出している大企業であれば、その中の1つに絞り込みを行うことで選択と集中の効果を得ることができますが、単一事業分野のみで活動している中小企業はそういうわけにいきません。
しかし、そのような場合においても実施単位を『商品』、『サービス』、『対象顧客(ターゲット層)』、『対象エリア』などに細分化することで『事業分野』の選択と集中と同様の効果を期待することができます。
適切に実施単位を設定するためには企業の現状を正しく把握する必要があります。事業内容や事業規模、扱っている商品やサービスといった基本的情報に加え、市場占有率(マーケットシェア)や市場における自社の立ち位置といったマーケティング情報を統合的に分析することによって、自社に最適な選択と集中の実施単位を設定することができるでしょう。
3.組織の中核となる事業分野や商品、サービスの見極めを行う
選択と集中の実施単位を適切に設定することができたら、その単位に合わせて中核となる事業分野や商品、サービスの見極めを行っていきます。また、同時並行的に実施計画や中長期成長戦略の枠組みを作成していきます。
この2つの作業は、選択と集中の成否に大きな影響を与える重要なものです。選択と集中の失敗リスクを最小化し、組織の成長可能性を最大限に高めるため、前述の【選択と集中の実施前に確認すべきポイント】をしっかりと押さえつつ、SWOT分析やPEST分析、5F(ファイブフォース)分析などのフレームワークを活用することで、最善の選択を行うように心掛けましょう。
SWOT分析
SWOT分析とは、自社を取り巻く外部要因と自社内に存在する内部要因を『強み(Strengths)』、『弱み(Weaknesses)』、『機会(Opportunities)』、『脅威(Threats)』の4つに分類することで、組織の置かれている環境や組織内の現状を明白にするツールです。
SWOT分析を活用することによって、ライバル企業と比較して自社が優れている点や劣っている点、自社製品への需要が高まる市場機会や自社の存続を脅かす環境変化や代替案の発生予測など様々な情報を1つのフレームワーク上で整理することができるため、組織の中核となる事業分野や商品、サービスの洗い出しや見極め、成長機会の予測、リスク予測が戦略的かつ容易に行えるようになります。
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PEST分析
PEST分析とは、自社を取り巻く外部要因を『政治環境(Politics/Political)』、『経済環境(Economy/Economical)』、『社会環境(Society/Social)』、『技術環境(Technology/Technological)』の4つに分類することで、マクロ環境を効率的に分析することのできるツールです。
PEST分析を活用することによって、選択した事業分野や商品、サービスが将来的に安定した収益を生み出すことができるかどうか理論的に確認すると同時に、組織に対してマクロ環境が与えるチャンスや脅威を予測することができます。
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5F分析
5F(5 Forces Analysis)分析とは、前述したハーバード大学経営大学院のポーター教授が著書『競争の戦略(原題:Competitive Strategy)』で示した業界構造の分析方法です。
競争戦略を得意とするポーター教授が生み出した5F分析は、『新規参入業者の脅威(Threat of new entrants)』、『代替品の脅威(Threat of substitutes)』、『買い手の交渉力(Bargaining power of customers)』、『売り手の交渉力(Bargaining power of suppliers)』、『業界内における競合(Industry rivalry)』という5つの要因を整理することにより、業界の魅力度を客観的に評価することができます。
この5F分析をコア選択に活用することによって、候補としてあげられた事業分野や商品、サービスの将来性や市場魅力度を測ることができます。
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4.非中核的な事業や商品、サービスの取り扱いについて検討する
選択と集中の『選択』が終了したら、『集中』の対象外となった非中核的な事業(ノンコア事業、非中核事業)や商品、サービスの今後の取り扱いについて検討していきます。また、前プロセスで作成した枠組みをベースにして実施計画や中長期成長戦略の草案を作成していきます。
非中核的な事業や商品、サービスに対する一般的な取り扱い方法として次のような選択肢があげられます。
- 事業廃止
- 事業譲渡
- 事業規模縮小(国内事業の販売エリア縮小、対象顧客層の限定など)
- 事業中止(予定していた新規事業の凍結など)
- 事業撤退(海外市場からの撤退など)
- 商品の生産終了
- 商品の新規販売終了
- サービスの新規申込受付終了
- サービス提供の終了
- 商品やサービスのサポート終了
これらの対応は顧客満足度や企業信頼度、エンゲージメントなどを大きく低下させてしまう恐れがあるため、段階的かつ緩やかに進めていく必要があります。実施段階それぞれに対する期間設定や担当者の指定、責任の所在、具体的な実施方法など、草案の段階で詳細まで決めておくことにより、従業員や株主の理解を得やすくなるでしょう。
5.従業員や株主に意見を求める
実施計画や中長期成長戦略の草案作成が終了したら、従業員と株主に対して公開して意見を求めます。
「なぜこのタイミングで選択と集中を実施するのか」や「コアとなる事業や商品、サービスはどのような理由で選ばれたのか」、「数多く存在するデメリットにはどのように対応するのか」など、実施計画や中長期成長戦略の草案作成に至った一連の流れを企業経営者が自らの言葉で説明することによって、自社における選択と集中の必要性や重要性を正しく伝え、今後の経営方針や事業方針について共通認識を持つことが可能となります。
この際、絶対に従業員や株主に対してトップマネジメント(最高経営層)の考えや想いを一方的に押し付けたり、無理やり説得しようと試みてはいけません。
選択と集中を成功に導くために必要なものは説得ではなく納得です。全ての従業員と株主が心から納得することのできる実施計画と中長期成長戦略を完成させるためのプロセスであることを正しく理解し、肯定的な意見だけではなく否定的な意見に対しても素直に耳を傾け、従業員や株主の想いに真正面から向き合いましょう。
6.再調整を行い、実施計画と中長期成長戦略を完成させる
従業員や株主から寄せられた意見を基に再調整を行い、全ての従業員と株主の理解を得ることができる実施計画と中長期成長戦略の完成を目指します。この際、選択と集中の効果測定を客観的かつ効率的に実施するため、コアとして選択された事業分野や商品、サービスに対してKPI(key performance indicator=重要業績評価指標)やKGI(Key Goal Indicator=重要目標達成指標)といった指標を設定しておきます。
また、必要に応じて『事業廃止や譲渡などに伴う人員整理のフォローアップ体制の強化』や『組織内における再活性化支援策の策定』などの取り組みも同時並行的に実施します。
7.全ての利害関係者に対して選択と集中の実施を報告する
実施計画と中長期成長戦略が完成したら、変更点や変更理由を分かりやすく整理した上で従業員や株主に対して再公開します。また、顧客満足度や企業信頼度の低下を最低限に抑えるため、仕入れや販売、製造、サポートなど非中核的事業や商品、サービスに関わる全ての顧客やエンドユーザー、企業に対しても選択と集中の実施決定に至った経緯や今後の予定など戦略上問題のない範囲で公開します。
8.選択と集中を実施する
いよいよ選択と集中の実施となります。
これまで長きにわたり営んできた事業や多くの開発資金を投じて生み出した製品を切り捨てなければならない選択と集中は、企業経営者にとっても多くの痛みを伴う厳しい施策です。だからこそ、事業再編や事業構造改革による経営効率化や飛躍的成長を企業経営者自身が疑うことなく信じ続け、軸をぶらすことなく計画通りに進めていかなければなりません。
ここまでのプロセスを丁寧に踏んできたことにより、リスクの最小化という課題はすでに達成しています。状況変化や細かなトラブルに対して冷静かつ柔軟な対応を取ることによって、大問題に発展させることなく選択と集中を進めることができるでしょう。
9.選択と集中の効果を確認し、中長期ビジョン実現に向けて継続的に取り組む
選択と集中の実施から一定の間隔を置いて施策の効果測定を行います。選択と集中の効果測定には中長期成長戦略の作成時に設定しておいたKPIやKGIなどの指標を用います。
この効果測定は実施後の一度きりではなく定期的に実施することが大切です。定期的な効果測定を実施し、予測していた市場変化と現状の差異を見極めながら中長期成長戦略に細かな修正を加えることによって、作成時に描いていた中長期ビジョンを実現させることができるでしょう。
選択と集中の成功事例
選択と集中の実施により大きな成果をあげた企業は多く、それらの企業事例からは良質なノウハウを数多く得ることができます。ここでは選択と集中の成功事例として3社の企業事例を紹介致します。
General Electric Company
選択と集中を語る上でGeneral Electric Company(ゼネラル・エレクトリック)社の成功事例は欠かすことができません。なぜなら、このGE社で実施された選択と集中が大成功を収めたのをきっかけに、全世界中に選択と集中という手法が拡散されていったからです。
多角化戦略によって企業規模を拡大してきたGE社
GE社は世界でも有数の多国籍コングロマリット企業であり、扱っている事業分野や商品、サービスは多岐にわたります。そのため、多角化戦略を語る際にもGE社の名前をあげられることが多くあります。
選択と集中と正反対の多角化戦略によって企業規模を拡大してきたGE社において、選択と集中はどのような形で実施されたのでしょうか。
ウェルチ氏による大規模な選択と集中の実施
市場で4位か5位でいると、No.1がくしゃみをしただけで肺炎にかかってしまう。No.1なら、自分の命運をコントロールできる。第4位グループの連中は合併に明け暮れ、苦しむ。第4位になると、事情が全く違ってしまうからだ。苦しむことが仕事になってしまう。だからこそ、より強大になるための戦略的方法を見極めることが必要になる。世界でNo.1かNo.2でなければ再建か、売却か、閉鎖かのどれかだ。
1981年から2001年にかけてGE社のCEOを務めたジャック・ウェルチ氏がCEOに就任した当時、GE社は43もの事業部門と350の事業を抱えていました。しかし、実際にはそのうちわずか15の事業で収益全体の90%を稼いでいる状態であり、335の事業は収益性や将来性の低さが問題視されていました。
そこで、ウェルチ氏はGE社の経営コンサルタントであるピーター・ファーディナンド・ドラッカー氏のコンサルティングを受け、GE社が世界で1位か2位を取れる事業のみを残し、その他全てをGE社から切り離すというとても大規模な選択と集中を実施したのです。
100年以上営んできた家電事業の売却
後に『ナンバーワン、ナンバーツー戦略』と呼ばれるこの大規模な選択と集中は、GE社の看板ともいえる家電事業にまで及びました。この家電事業は、発明王としても有名なトーマス・アルバ・エジソン(Thomas Alva Edison)氏がGE社の前身となるEdison General Electric Company(エジソン・ゼネラル・エレクトリック会社)を創業した当時から営んでいるものであり、多くの事業を扱うGE社の中で最も古く大切に扱われてきた事業でした。
家電事業はそれなりの利益を上げており、電機メーカーとしても3位4位の位置に付けていました。そのため、家電事業の売却には組織内からも大きな反発の声が上がりました。
しかし、ウェルチ氏は確固たる意思のもとに選択と集中を進めていきました。 そしてその結果、GE社の売上高や利益は大幅に上昇、株価も比例するように高騰していったのです。
イメルト氏による新たな選択と集中
GEのような古い企業は、10~15年ごとに、ゼロからやり直す気持ちで、企業文化を根底から破壊しなければなりません。
企業の総合力を生かすために、ときには難しい、個人的にもつらい意思決定をしなければいけないのです。
ウェルチ氏からCEOを引き継いだジェフリー・ロバート”ジェフ”・イメルト(Jeffrey Robert “Jeff” Immelt)氏は、GE社全体の50%以上の利益を生み出していたこともある金融部門からの撤退を決断しました。この金融部門はウェルチ氏が自身の行った選択と集中の際に中核事業として扱ったものであったため、一部からは「ウェルチ氏の選択をイメルト氏が否定した」との声も上がりました。しかし、選択と集中における『中核』を正しく理解していれば、すぐにその考えが誤りであることに気付くことができます。
選択と集中によって選択される組織の『中核』は、市場におけるシェア率や現状、ニーズ、今後の市場成長予測など、時代や環境の変化に合わせて戦略的に変化させていくべき変動要素です。そのため、このように『選択』結果が異なることは至極当然なことなのです。
ウェルチ氏とイメルト氏が残した数々の功績も、両者の異なる『選択』がどちらも正しいものであったことを裏付けています。
フラナリー氏の実施する選択と集中に多くの注目が集まる
2017年8月1日、2001年から16年間CEOを務めたイメルト氏に代わってジョン・フラナリー(John L. Flannery)氏がGE社の11代目CEOに就任しました。
ウェルチ氏とイメルト氏に続く形でフラナリー氏が実施する選択と集中に注目することによって、長年にわたり世界を牽引し続ける企業のトップの視界や思考を感じ取り、今後の市場変化の予測や自社の選択と集中に活用することができるでしょう。
【参考】100分de名著 「マネジメント」ドラッカーより、ジャック・ウェルチ氏とのエピソード|生命(いのち)を輝かせる言葉の森
【参考】なぜ米GEは創業事業の家電事業を売却したのか?(SBCr Online)
【参考】製造と働き方の未来へ、デジタルで生まれ変わる巨人GE | IT Leaders
【参考】あの「20世紀最高の経営者」の神話が崩壊!(Business Journal) 赤かぶ
キヤノン株式会社
資本戦略や開発戦略はインターナショナルだ。しかし人事はローカルなものだ。移民が多く多宗教多民族で、ルールで成り立っている流動性の高い米国社会には米国のやり方がある。しかし日本は基本的には同一民族で、互助の精神が社会にある。だとすれば、その特色を生かす経営のやり方が合理的だ。日本では終身雇用が合理的だと考えている。
GE社の選択と集中は人員整理を伴うものであったため、国内では「日本企業が実施することはできない」という意見も多く上がりました。この『選択と集中=大規模な人員整理』というイメージを見事に払拭したのがキヤノン株式会社の第6代、第8代社長を務めた御手洗冨士夫氏です。
御手洗氏は23年間アメリカで勤務した経験をもとに『世界的な経営手法と取り入れながらも人事はローカルに徹する』という独自の経営哲学を作り上げ、終身雇用制度を維持した状態で選択と集中を実施することに成功しました。
御手洗氏による日本版『選択と集中』
御手洗氏は1995年の社長就任後すぐ、キヤノン株式会社にキャッシュフロー経営を取り入れました。その後、液晶ディスプレイ事業や光ディスク事業、パソコン事業から撤退し、それらに費やしていた経営資源を採算事業であるプリンター事業やカメラ事業、半導体製造装置事業などに集中させました。
廃止事業に関わっていた多くの従業員たちは、この選択と集中によってこれまで行ってきた仕事を失ってしまいました。しかし、御手洗氏は人材の再配置と合わせて『年功序列制度の廃止』と『成果主義の導入』を実施することにより、選択と集中による人員整理や退職勧奨ゼロを実現させたのです。
御手洗氏の人材に対する思い入れは非常に強く、厳しい経営環境の中でも一切の人員整理を行うことなく、『休日削減』、『フレックスタイム制度の廃止』、『独身寮や社宅補助の廃止』、『諸手当の一部廃止』などの施策を講じることによって従業員の雇用を守り続けました。
デフレ不況に屈することなく、雇用を維持しながらキヤノン株式会社を3期連続の純利益最高記録更新へと導いた御手洗氏の手腕は世界的にも高く評価され、2003年にはアメリカのBusinessWeek(ビジネスウィーク)誌が選ぶ『世界の経営者25人』に選ばれました。
【参考】なぜ「選択と集中」は日本で失敗するのか?成功したキヤノンと武田薬品の巧妙な手法 - ライブドアニュース
株式会社日立製作所
株式会社日立製作所(通称、HITACHI)は国内最大の電気機器メーカーであり、連結子会社864社、持分法適用会社388社の計1,252社を傘下に置く日立グループの中核企業です。(2017年6月時点)
今や世界有数の大手電機メーカーとして世界中で活躍している株式会社日立製作所ですが、その背景には選択と集中の実施によってバブル崩壊やリーマンショックといったマクロ環境の変化による重大な経営危機を乗り越えた辛く厳しい過去が存在していました。
川村氏による経営再建に向けた『選択と集中』
悪い事業は悪くはっきり見せて、直すか潰すかしなきゃいけない。良い事業がそれを補っちゃって、何となく、そこそこいいような格好にしておくのが一番良くない。
1990年代に起きたバブル崩壊をきっかけに業績が低迷し、2009年のリーマンショック後に過去最大となる7873億円もの損失を計上した株式会社日立製作所のトップマネジメントは、創業以来の苦境となるこの状況を打破するため、異例ともいえる役員人事異動を実施しました。この役員人事異動によって会長兼社長に就任したのが、株式会社日立製作所の子会社である株式会社日立プラントテクノロジーと日立マクセル株式会社(現:マクセルホールディングス株式会社)の会長を兼務していた川村隆氏です。
株式会社日立製作所の経営再建という重大な任務を与えられた川村氏は、高度な技術力という自社の強みに着目し、今後発生するであろう市場変化を見据えた上で『脱・綜合電気』を掲げました。そして、情報通信事業や社会インフラ事業を中核として選択し、ハードディスク駆動装置事業の売却や薄型テレビの国内生産の終了など市場において競争優位性の低い事業分野や商品に次々とメスを入れていきました。
複数の『選択と集中』によるV字回復
川村氏は事業分野や商品だけではなく、『グループ企業』や『対象顧客』という単位でも選択と集中を実施しています。具体的には、2009年の時点で19社存在していた上場子会社を3年間で11社まで絞り込み、主な取引形態をBtoC(Business to Consumer=消費者向け販売)からBtoB(Business to business=企業間取引)へとシフトしました。
川村氏の実施した数々の選択と集中によって、株式会社日立製作所は2011年3月期に過去最高額となる当期純利益を計上し、V字回復を果たしました。また、選択と集中による効果は国内だけに留まらず、国内事業の業績向上に影響を受ける形で複数の海外事業を黒字化へと導きました
【参考】電機決算の明暗鮮明 日立最高益、ソニー赤字最大 :日本経済新聞
【参考】日立、V字回復で「攻め」に舵切る~世界展開のカギ、CEO・COO新設の狙いとは?- 記事詳細|Infoseekニュース
【参考】「投資下手」から卒業できない日本企業の弱み | 中原圭介の未来予想図 | 東洋経済オンライン | 経済ニュースの新基準
【参考】東芝は失敗、日立は成功の「選択と集中」 差はトップの覚悟 | マネーポストWEB |『マネーポスト』(小学館)公式サイト - Part 2
【参考】どん底から復活!V字回復した企業特集|Infoseekニュース
選択と集中の失敗事例
選択と集中の実施に失敗し、大きな損失を被ってしまった日本企業は決して少なくありません。シャープ株式会社の失敗事例を学ぶことで、選択と集中の抱えるリスクをより具体的に理解し、自社における選択と集中の成功率を高めていきましょう。
シャープ株式会社
シャープ株式会社(SHARP)は大手電機メーカーとして多くの素晴らしい商品を生み出してきた100年以上続く日本の老舗企業です。しかし、選択と集中の失敗が経営に致命的なダメージを与えてしまったことにより、日本の大手電機メーカー初の外資傘下企業となってしまいました。
得意分野である液晶事業への選択と集中
冷蔵庫やオーブンレンジなどのキッチン家電にエアコンや空気清浄機といった空調家電、美容家電やオーディオ機器など様々な分野でヒット商品を連発してきたシャープ株式会社ですが、その中でも液晶テレビや液晶画面を開発生産する液晶事業が特に大きな業績を上げていました。そこで、シャープ株式会社は高い業績を誇る液晶事業を『選択』し、経営資源を『集中』させることによって更なる飛躍を目指したのです。
選択と集中の実施により、シャープ株式会社の高品質な液晶は世界中で高く評価され、三重県亀山市のシャープ亀山工場で生産する液晶テレビは『世界の亀山モデル』として愛されました。しかし、その勢いはそれほど長くは続かなかったのです。
『液晶のシャープ』を襲った2つの波
日本企業が日本国内で生産する高品質な製品として多くの人々に愛用されたシャープ株式会社の液晶製品は、突如発生した『製品ライフサイクルの短期化』と『液晶の低価格化』という2つの波によって窮地に追い詰められることになりました。
情報処理技術やカメラレンズ技術の高度化によってスマートフォンやタブレットなどの情報通信機器の高性能化が加速した結果、ユーザーの買い替えも以前に比べて頻回になり、液晶画面を採用した商品の製品ライフサイクルは急速に短くなっていきました。また、低価格ながら高品質な液晶画面の登場により、ブランド力や安心感よりも手軽さや価格を最重視するユーザーが増加していきました。
日本の大手電機メーカーが外資企業の傘下へ
『製品ライフサイクルの短期化』や『液晶の低価格化』といった市場環境の変化に対し、シャープ株式会社のトップマネジメントは自社の強みである『大型高品質な液晶』を追求することを決意しました。
しかし、地上デジタル放送への完全移行に伴う地上デジタル放送対応テレビ特需を終えたばかりの一般家庭において大型液晶ディスプレイに対する需要は少なく、状況を一変するほどの効果を得ることはできませんでした。
シャープ株式会社が『液晶の大型化』に注力している間、大量生産を得意とする海外企業は『更なる低価格化』や『液晶の代替品開発』に焦点を当てて取り組んでいました。その結果、市場は『低価格液晶』と液晶の代替品となる『有機エレクトロルミネッセンス(有機EL)』で溢れかえり、シャープ株式会社の持っていた競争優位性は完全に失われてしまったのです。
シャープ株式会社はその後も様々な取り組みを実施してV字回復を試みましたが、選択と集中の失敗によって生まれた損失やダメージを消し去ることはできませんでした。そして2016年4月、電子機器の受託生産を行うEMS(electronics manufacturing service)企業の世界最大手である鴻海精密工業がシャープ株式会社の発行済株式の3分の2弱を取得したことによって、シャープ株式会社は日本の大手電機メーカー初となる外資傘下企業となってしまったのです。
【参考】2/2 シャープを失敗に導いた戦略、「選択と集中」とは何か マネジメント All About
【参考】「選択と集中」のまやかし シャープ失墜より考察 | ビジネスジャーナル
【参考】選択と集中とは?成功・失敗の事例、意味、日本企業では? | BRAVE ANSWER
まとめ
- 選択と集中とは、自社が扱っている複数の事業分野や商品、サービスの中から中核となるものを選択し、その事業分野や商品、サービスに対して組織内に存在する経営資源の多くを集中的に投下することによって、経営の効率化や業績の向上、競合他社との差別化などの効果を生み出す攻めの経営戦略である
- 選択と集中は、『経営の神様』ピーター・ドラッカー氏によって概念化され、『伝説の経営者』ジャック・ウェルチ氏によって広められた
- 正しい認識のもとに実施された選択と集中は組織に多くのメリットをもたらし、誤った認識のもとに実施された選択と集中は組織に多くのデメリットをもたらす
- 選択と集中は9つのプロセスによって構成されており、そのプロセスを正しく踏むことでリスクの最小化を図ることができる
- 市場におけるシェア率や現状、ニーズ、今後の市場成長予測など、時代や環境の変化に合わせて選択するべき『中核』も変化していく
- キヤノン株式会社で第6代、第8代社長を務めた御手洗冨士夫氏は、年功序列制度を廃止し、成果主義を導入することによって、終身雇用制度が根強く残っている日本企業でも実施可能な人員整理を伴わない選択と集中を実現させた
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