情報共有
情報共有は会社などの組織で仕事をするうえで欠かせない重要なものです。業務を効率的に行うには、情報共有が重要である理由を明確に知り、効果につながるポイントを意識することが大切です。本記事では情報共有の必要性を説明し、共有が不十分だと何が問題なのか、うまくいかない原因は何かを解説。解決策として有用なツールも紹介します。
情報共有の必要性とは
情報共有の必要性は、組織で仕事をする多くのメンバーが感じることですが、ただの情報の交換で終わらせず、より有意義なものにするには、情報共有の目的を理解しておくのが大切です。ここでは、情報共有の2つの目的をご紹介します。
情報共有の目的
情報共有の重要な目的の1つに「組織人材の能力向上」があります。
業務とは何らかの目標を達成するために行うという側面の他に、その仕事に携わる社員の成長を促すというOJTの側面もあります。実際に、プロジェクトでチームメンバーを構成する際に、経験があるベテラン社員と若手メンバーを組み合わせてナレッジの共有を促進するというケースも多いでしょう。人材同士の情報共有が活性化すれば、個人の能力や経験が拡散し、スキルの底上げが期待できます。
もう1つの目的は、「業務の効率化」です。
組織でプロジェクトを進めるメリットは、役割分担をして同時並行的に業務を進められるという点にあります。ただし、チームプレーの特長を最大限に発揮するには、個々人が得た情報を独占しておくだけでは不十分で、共有しなければ相乗効果が薄れてしまいます。事業では、戦略や企画立案といった大きな判断だけでなく、日々の業務でも情報の正確性や新鮮さが大切です。情報共有が綿密に行われていれば、最適な意思決定や業務効率化にもつながります。
情報共有ができていないと起こりうる問題
必要な情報が共有されないと、知識の属人化が進んでしまい、組織としての相乗効果が発揮できないというデメリットがあります。その結果、業務が停滞したり、思いもよらないトラブルに発展したりするリスクもあるのです。また、メンバーが有益な情報を持ちよらず、独立して業務をするのは組織として好ましい状態とは言えません。
ここでは、情報共有が不足して、知識が属人化することによって起こってしまう問題を3つに整理して紹介します。
組織力を強化できない
情報共有が不足すると、組織の学習効果が機能せず、組織メンバーのスキルの底上げができない可能性があります。そのような状況では、たとえメンバーが個別に成長していたとしても、組織内でシナジー効果が発揮されないでしょう。これでは組織力が向上せず、業務効率化の妨げにもなりかねません。
経営組織論の研究者である金沢大学の白石弘幸教授によると、論文『組織学習と学習する組織』(2009年)で、「組織として皆で学ぶと、個々人で学習した際には現れない効果が生じ学習内容が変わってくるのである」と指摘。組織は「学習に関してある種の相乗効果が生まれる」と主張しています。
本来、ビジネスの組織とは、情報共有を行うことでお互いに学習し合い、自然に能力が底上げされていくものです。また、チーム力を発揮し個々人がバラバラに作業するよりも効率的に高い成果を生み出せるという特性があります。
例えば、特定の課題を自分だけで解決するよりも、すでに同様の案件に取り組んだ経験がある先輩社員に教えを受ければ、教育効果もあるうえ手間も時間も節約することが可能です。あるいは、業務に取り掛かる際も、社内の誰かがベストプラクティスをマニュアルとして可視化している状態であれば、無駄なく効率的な仕事ができるでしょう。
ビジネスチャンスの損失
情報共有がうまくいっていなければ、ビジネスチャンスを逃してしまい、機会ロスにつながる可能性もあります。
営業やマーケティングの部署では、顧客や市場に関する情報を取り扱う機会が多いですが、これらは売上にも影響する非常に重要な情報です。営業担当者は顧客のニーズや最新の動向などを把握しつつ、タイムリーに提案をする必要があります。マーケティング担当者は商品の売れ行きや市場データを分析して、必要なアクションにつなげなければなりません。
また、特に重要な情報は、部署内で的確に連携することが大切です。例えば、営業担当者が取引先候補の窓口担当者の異動を知っていたのに、自身も配置換えになり引き継ぎが不十分に終わってしまった場合、別の営業が人間関係を構築し直すのは簡単ではありません。結果的に、取引のチャンスを逃してしまうことになります。
他にも、それ単独では重大性がわからなくても、組み合わせると決定的に重要な情報は存在します。それにも関わらず、組織のメンバーが属人的に抱えており共有されないことが原因で、実は潜んでいたチャンスを無意識的に失っているケースもあり得るのです。
良好な人間関係を構築できない
組織の人間関係は、情報共有とは切り離せない関係にあります。人間関係が良好な組織の場合、日々の報告や情報連携がスムーズになり、業務の無駄が削減され、トラブルの発生も防止する効果が期待できるでしょう。このような場合、ますます情報の共有が円滑化し、組織のパフォーマンスが高くなり、さらに人間関係にも影響するという良いスパイラルが起こります。
一方、情報共有にあまり積極的でない組織の場合、メンバー同士の意思疎通の回数が少なく、お互いを理解し合えない可能性があります。組織での仕事では、ルールやマニュアルに従えばそれで十分というものではなく、実際は企業文化や暗黙知と呼ばれる部分が重要な役割を果たすことも多いものです。そのためには人間関係を良好にする必要がありますが、情報共有が不十分だとチームワークが機能しない可能性があります。
情報共有がうまくいかない原因
会社内で情報共有の取り組みを始めても、必ずしもうまくいくわけではないのが難しいところです。
部署内の風土や習慣は一朝一夕にできたものではなく、変えるのは簡単ではありません。情報共有の文化を社内に浸透させるためには、失敗してしまう原因を理解したうえで、効果的な対策を取ることが大切です。
ここでは情報共有がうまくいかないいくつかのパターンを紹介します。
情報共有のルールが明確でない
もともと情報共有の量が不十分であったり、活発な情報共有があるにも関わらず効果的に生かされないなど問題がある場合、現在の情報共有の方法を分析して問題点を洗い出し、新しい仕組みを作ると改善される可能性があります。
情報共有とは、簡単なようで実際は難しいものです。「誰に、何を、どのように伝えるか」は、案件や内容ごとに異なり、受け手側も個別に優先順位を判断しなければなりません。そこで、ルールやガイドラインのような形で、社員間のコンセンサスがあれば問題が解決することもあるでしょう。
社員同士が自発的に情報交換をする組織体質であれば、ルールを設定することがかえって硬直化を招き、悪影響になるリスクもありえるので、注意が必要です。
組織が縦割り化している
組織の縦割り化(セクショナリズム)も、情報共有がうまくいかない原因になることがあります。特に大きな組織ほど、セクションが分かれており、互いに有益な情報を抱えているのに連携が取れないという問題が起こりがちです。
行うべきことが明確で、固定的なプロジェクトを推進する時に、分業体制は力を発揮する一方、困難な課題が発生した場合や、新しい発想が必要な時には、枠組みがかえって妨げになることもあります。
経営者や管理者としては、定期的に現場の社員同士が交流する場を設けたり、自分自身が常に他部署との情報交換も心掛けていたりすることが有効です。現場の社員同士のコミュニケーションが促進され、縦だけでなく横や斜めといった連携も増えていくでしょう。
ツールの活用が不十分
ツールの活用が不十分なために情報共有がうまくいかないこともあります。情報共有の手段は、打ち合わせ、電話、文書などがあるほか、情報共有ツールは、電子メール、進捗管理システム、SFA/CRMなどさまざまです。どのような手段にも長所短所はありますが、情報共有を効果的に行うには、組織に合った手段を用意しましょう。
また、ツールを導入するのであれば、導入後の効果的な利用方法を社員に教育していく必要があります。一時的には教育コストが発生しますが、現在のツールは高機能なものも多く、慣れれば劇的に業務負担を軽減するものも提供されているのです。
ツールを導入しているものの情報共有がうまくいっていないなどの場合は、現在のツールの使用方法を確認すると改善のヒントが眠っている可能性があります。
情報共有を効果的に行うために意識したい3つのポイント
組織では情報共有の活発化が大切ですが、そのためには、情報の「蓄積」「共有」「活用」という3つのポイントを意識することが重要です。
蓄積:取得した情報を記録、保管、管理すること
蓄積すべき情報とは、例えば、営業によって知り得た顧客企業のニーズなどの外部情報や、プロジェクトの進捗状況といった内部事情です。この時、数ある情報を優先度に応じて取捨選択し、後から把握しやすくする仕組みが役立ちます。
共有:個人が取得、蓄積した情報を社内に展開すること
定例の打ち合わせや、随時のコミュニケーションなどさまざまな方法がありえますが、「どの情報を、いつまでに、誰に」といった共有の切り分けを意識することが大切です。
活用:蓄積し共有された情報を事業にどのように応用するか
活用とは実践的なアクションです。有用なナレッジや、業務に関する重要な周知事項があった際に、ただ共有するだけではあまり意味がありません。その情報をもとに、何か具体的な意思決定につなげたり、業務にポジティブなインパクトを与えることで初めて活用に至ったといえます。
情報共有を円滑に進めるためにはツールの導入が有効
情報共有を円滑に行うには、ツールを導入することが効果的です。今の時代、情報量が増え、スピード感もますます重要になりつつあり、さらに「働き方改革」の名のもと働きやすさまで意識しなければなりません。このような背景のなか、絶対に外せないアナログな部分は残しつつも、その一方で変えられる部分はシステム化していくことが大切です。
現在、情報共有のためのツールは数・種類ともに大変充実しており、利用する企業にとっては自社に合うものを選びやすい時代といえます。例えば、メッセージや画像データをやりとりできるチャットツールや、顧客情報を一元管理できるタイプなどさまざまです。サービスの利用方法についても、システム開発が不要なため費用が安く、導入期間が短いクラウド型も主流になりつつあります。
ここでは、情報共有に便利なツールを3つに分類し、各特徴を紹介します。
SNS型
SNS型とは、いわばビジネス版のSNSツールです。例えば、チャット機能、音声・ビデオ通話、スケジュール管理、タスク管理など、SNSを利用するような感覚で直感的に操作ができるのが特徴的です。
電子メールを使うよりもコミュニケーションが手軽なうえ、電子メールに劣らずグループチャット機能やファイル共有といった機能も豊富に備えているものもあります。もちろんスマホやタブレット用のアプリも用意しているサービスが多いです。導入すれば従来よりも情報共有のハードルが下がることが期待できるでしょう。
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進捗管理型
進捗管理型とは、主に個人のスケジュール、タスク、プロジェクトの進捗を管理する機能が充実しているツールです。進捗管理といえば、工数管理や原価計算といった専門的機能や、ガントチャートなどをイメージしますが、実際は情報をやり取りする機能が充実しているツールが数多く存在します。
主にシステム開発などのプロジェクトの現場で利用されるケースが多く、多くのメンバーが関わる場合は、メッセージの管理や進捗の把握に非常に重宝します。プロジェクトごとに情報共有を行いたい場合はおすすめのタイプです。
【関連】「進捗管理」とは?管理方法やメリット、おすすめの進捗管理ツールと合わせてご紹介/BizHint
SFA/CRM
SFA/CRMとは、それぞれ「営業支援ツール」や「顧客関係管理」などと訳され、営業の現場などで情報共有を効率化するために利用されるツールです。厳密に区別するとSFAは営業担当者の支援寄りで、CRMは顧客情報を把握しやすくすることが主な目的とされています。ただし、営業活動の見える化や顧客情報の管理は密接な関係にあるうえ、両者一体型のツールも存在するため、明確に区別をせず「SFA/CRM」とまとめて呼ばれることも多いのが現状です。
SFA/CRMとは、基本的に営業活動やマーケティング活動で利用されるもので、最大の特徴として顧客や営業担当者に関するあらゆる情報を一元管理することができます。例えば、顧客企業の窓口担当者、引き合いのレベル、商談スケジュールといった内容や、営業担当者の予定、商談履歴、提案資料など、あらゆる情報が対象です。
従来であれば顧客との商談結果やスケジュールを打ち合わせの場で周知したり、オフィスで日報を記入したりしていたものが、ツールを利用すればいつでもどこでも端末から入力ができるためリアルタイムに共有でき、商談後に直帰することも可能になります。ツールによって情報共有が大幅に効率化し、生産性向上や働き方改革も期待ができるでしょう。
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まとめ
- 情報共有は、組織人材の能力の底上げや業務の効率的な推進のためには欠かせません。
- 情報共有では「蓄積」「共有」「活用」の3つを意識すると効果的です。
- 必要な情報が共有されない場合、ノウハウの属人化、業務の非効率化、人間関係の停滞といった悪影響が出るおそれがあります。
- 情報共有が不十分になる原因には、ルールの不明確、セクショナリズム、ツールの非活用が挙げられます。
- 情報共有を推進するにはツールの導入が有効で、「SNS型」「進捗管理型」「SFA/CRM」の3種類があります。
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