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センスメイキング

2020年8月31日(月)更新

センスメイキングとは、想定外な出来事や不確実性の高い事象に対して「意味付け」を行うことで状況を好転させる循環プロセスです。組織やチームのリーダーがセンスメイキングを最大限に活用することで、複雑で先行きが不透明な現代社会を勝ち抜くために欠かすことのできない、大きな推進力を得ることができます。当記事では、センスメイキングの意味や具体例をはじめ、注目されている背景や実施プロセス、参考本まで詳しく解説いたします。

センスメイキングとは

センスメイキング(sensemaking)とは、組織心理学者のカール・ワイク氏が生み出し発展させてきた理論で、経営学において現在注目されている分野のひとつです。直訳すると「意味づけ」という意味になります。

ビジネスの現場では、組織内の人材やステークホルダーの理解や協力を得るため、このセンスメイキングが様々な場面で活用されています。

通称「腹落ち」の理論

早稲田大学ビジネススクールの入山章栄教授は、センスメイキングは 「腹落ち」の理論 であると言います。

センスメイキングはいまだ発展中で、その定義自体も多様だ。しかし筆者の理解では、その本質をよくとらえた日本語がある。それは「納得」であり、さらに平たく表現すれば「腹落ち」である。センスメイキング理論は、「腹落ち」の理論なのだ。
【引用】世界標準の経営理論/入山 章栄

さらに、腹落ちさせるだけではなく、そのあと「行動にうつす」という点も重要です。行動をおこさない限り、環境に変化をあたえることはできません。

つまりセンスメイキングとは、 組織のメンバーやステークホルダーが納得のいく答えを導き出し、意味づけして、行動させるまでのプロセス を指しているのです。

センスメイキングの具体例

センスメイキングを体現しているエピソードとしてよく語られるものに、ハンガリーの偵察部隊の雪山遭難のストーリーがあります。

数十年前、ハンガリー軍の偵察部隊が雪のアルプス山脈で遭難し、吹雪の中で死の恐怖に怯えていました。その時、部隊の一人がたまたま「地図」を持ち合わせており、その地図を頼りに下山したところ、隊員全員の命が助かりました。そして、後々確認したところ、その地図は「アルプス山脈」ではなく「ピレネー山脈」の地図だったというストーリー。

危機的状況の中で、隊員全員がその地図によって「下山できる」と納得して、能動的に行動した という点が重要なポイントです。

【参考】雪山で遭難した軍隊はなぜ生還できたのか / 世界標準の経営理論/ダイヤモンド・オンライン

今、センスメイキングが重要視される理由

事実を見極めることよりも、 「全員が納得する(腹落ちする)」答えを導き、行動にうつしていく ことがセンスメイキングです。

そのためセンスメイキングは、上記の例の通り、予期せぬことがおきたり、先行きが見えず混乱状態に陥っているときなどに力を発揮します。

近年は「VUCA(ブーカ)時代」とも呼ばれ、不確実性が高く、複雑で予測ができない経営環境にあります。さらにコロナウイルスの影響で、現代はまさに混沌の時代と言えるでしょう。

リーダーやトップマネジメント層など、 組織やチームに対して強い影響力を持つ人物 がセンスメイキングを最大限に活用することによって、この複雑で先行きが不透明な VUCA時代を勝ち抜くための大きな推進力を手に入れる ことが可能となるのです。

【関連】VUCAの意味とは?VUCAな時代に求められるリーダーシップとは?/BizHint

センスメイキングとOODAループ

OODAループとは、『Observe(観察)』、『Orient(情勢判断)』、『Decide(意思決定)』、『Act(実行)』という4つのプロセスを正しく踏むことで、様々な環境変化に対して臨機応変かつ柔軟な対応を可能にするフレームワークです。

組織やチームが置かれている現状に対するベストな選択肢を検討、選択し、従業員(社員)やチームメンバー、株主、取引先企業などの理解や協力を得られるように働きかけを行うセンスメイキングは、OODAループにおける『Orient(情勢判断)』と『Decide(意思決定)』に該当すると考えられています。

【関連】OODAループとは?PDCAサイクルとの違いや活用ポイントをご紹介/BizHint

センスメイキングの実施プロセス

センスメイキングは『感知』、『意味付け』、『行動』という3つのプロセスで構成されています。

また、これらのプロセスを循環させることによって、重複的に効果を高めていくことができます。

【感知】現状を俯瞰的に捉え、いち早く情報を感知する

センスメイキングの活用において土台となるのが「情報を感知する」というプロセスです。

先ほど述べた通り、センスメイキングは予期せぬことがおきたり、先行きが見えず混乱状態に陥っているときなどに力を発揮します。

そのため、以下のようなシーンで高い効果を発揮すると言われています。

  1. 危機的な状況 … 市場低迷やマーケットシェア低下、天変地異による経営危機などに直面した状態
  2. アイデンティティの喪失 … 自社の事業や強みの陳腐化、経営理念やビジョンに疑念が生まれている状態
  3. 意図的な変化 … イノベーション創出、多角化戦略、M&Aなどをおこした場合

組織やチームの現状を俯瞰的に捉え、これらの情報をいち早く感知する ことで、組織やチームをより望ましい形へと導くことができるでしょう。

ここで注目すべきは、①危機的な状況や②アイデンティティの喪失に対するセンスメイキングが「 受動的 」であるのに対し、③意図的な変化を起こすためのセンスメイキングは「 能動的 」であることです。

組織やチームの更なる成長を目指し、センスメイキングを攻めの姿勢で扱うように心掛けることで、その活用シーンは何倍にも広がります。

【意味付け】情報に意味付けを行い、ストーリーを構築する

特定の事象に対して生まれる感情や、経験から学び取る内容は人によって千差万別です。

特に、予期せぬことが起きた際にはこれらが顕著に現れます。今まで経験したことのないような危機に直面したのであれば、周りは混乱し、確かな情報もありません。そのため、その危機に対しての絶対的な答えを導くことができないのです。

そのため【意味付け】のプロセスでは、起きた事象に対して 関わるメンバー全員が共通の認識やイメージを持ち、足並みを揃えられる ように働きかけていきます。

ここでリーダーが行うべきことは2つ。

  • 多様な情報・解釈の中から特定の内容を選択
  • メンバーが腹落ちしてくれるような意味づけ・ストーリーを構築し、伝える

このようにして、組織全体の方向性を合わせていきます。

センスメイキングを行うリーダーは、先入観や固定概念に縛られてはいけません。あらゆる可能性を否定することなく前向きに検討しなければ、組織やチームを最善へと導く一手を見つけることはできないからです。

重要なのはストーリーを語ること

近年、プレゼンテーションや営業などの場面において、 自身の想いや考えを印象深く相手に伝える「ストーリーテリング」が注目されています。センスメイキングの意味付けにおいてもこのストーリーテリングが非常に重要です。

そして、「なぜそのタイミングなのか」や「なぜその方法なのか」などの疑問や、「本当に大丈夫なのか」という不安を払拭するだけではなく、「 自分たちだからこそ実現可能である 」という自信を与えられるようなストーリーを構築することが大切です。

また、個々に対して定型文のようにストーリーを伝えるのではなく、受け手の立場や自身との関係性、組織やチームへの印象など様々な要素を踏まえた上で口調やテンポ、話す順序なども考慮しましょう。

【関連】ストーリーテリングとは?効果やプレゼンでの使い方、具体例もご紹介/ BizHint

【行動】他者の心を揺さ振り、自発的な行動へと導く

センスメイキングは、「行動」にまで結びつくことで、初めて効果を発揮します。

人は心を強く揺さ振られることによって「自分がやるべきことは何か」や「自分にできることは何か」を自発的に考え、実行する ようになります。

全ての従業員やステークホルダーが同じ認識を持って組織が置かれている現状に向き合い、各自に与えられた役割をしっかりと果たすことで、新たな環境変化を意図的に生み出すことが可能となるでしょう。

そして、この変化を見逃さず新たな情報として感知することによって、 センスメイキングを循環させる ことができます。

一つ一つの行動に意味があることを自覚することで人は更に強くなります。センスメイキングを循環プロセスとして認識し、正しく扱うことによって、組織やチームの未知なる力を引き出すことが可能となるでしょう。

センスメイキングの7つの要素

センスメイキング理論発展の中心人物であり、レンシス・リッカート特別大学の組織行動と心理学の名誉教授でもあるカール・E. ワイク(Karl E. Weick)氏は、著書『Sensemaking in Organizations(1995)』の中でセンスメイキングの特性として次の7つをあげています。

  1. Grounded in Identity Construction(アイデンティティ構築に基づいた)
  2. Retrospective(回顧的)
  3. Enactive of Sensible Environments(道理にかなった環境をイナクトする)
  4. Social(社会的)
  5. Ongoing(進行中の)
  6. Focused on and by Extracted Cues(抽出された手掛りに焦点を合わせる)
  7. Driven by Plausibility Rather Than Accuracy(正確さよりももっともらしさによって推進する)

これら7つの特性には、センスメイキングの実施プロセスや意識するべきポイントなどセンスメイキングに関するありとあらゆるノウハウが数多く詰まっています。

【参考書籍】センスメーキング イン オーガニゼーションズ/Karl E. Weick(文眞堂)

センスメイキングを学ぶ上で参考になる本

センスメイキングについて学べる書籍をご紹介します。

センスメーキング イン オーガニゼーションズ

センスメイキング理論発展の中心人物であり、レンシス・リッカート特別大学の組織行動と心理学の名誉教授でもあるカール・E. ワイク(Karl E. Weick)氏の著書です。

センスメイキングの7つの特性や、実態、留意点、心構えなどについて、理論・実践の両面から詳しく解説しています。

カール・E. ワイク氏の記したセンスメイキング理論に関する書籍を読み解き、個々の特性や他の特性との関連性について学ぶことによって、センスメイキングの本質を理解することが可能となるでしょう。

【参考】センスメーキング イン オーガニゼーションズ/文眞堂

センスメイキング 本当に重要なものを見極める力

戦略コンサルティング企業の創業者であるクリスチャン・マスビアウ氏の著書。テーマ「人」に設定し、あらゆる事象を数字やモデルだけで捉えず、真実を見極めることの重要性について説いています。

【参考】センスメイキング/PRESIDENT STORE

まとめ

  • センスメイキングを実施することで、戦略や施策に対する組織内人材やステークホルダーの理解や協力を得ることができる
  • リーダーやトップマネジメント層など組織やチームに対して強い影響力を持つ人物が活用することで、複雑で先行きが不透明な現代社会を勝ち抜くために欠かすことのできない大きな推進力を得ることができる
  • 『感知』、『意味付け』、『行動』という3つのプロセスを循環させることで、重複的に効果を高めていくことができる

※参考書籍※世界標準の経営理論
著者:入山章栄
出版社:ダイヤモンド社
発行年月:2019年12月

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