連載:第74回 IT・SaaSとの付き合い方
バラバラの顧客リストを一元化。営業を効率化するシステム選定と定着の経緯
BizHint 編集部
2026年3月19日(木)掲載
IT・電気通信分野の総合サポートを手がけるエコー電子工業株式会社。約2000社という既存顧客リストを抱えながらも「常時アプローチできているのは3分の1ほど」「営業担当者がバラバラに名刺を管理し一元化できていない」という10年来の課題を抱えていました。そうした状況下、データドリブンの営業体制の構築を見据えた種蒔きとして、名詞管理システムSansasnの導入を推進。これにより顧客との接点・関係性の見える化が進むとともに、組織的なマーケティングも可能に。一連のシステム選定や導入・定着の経緯について伺いました。
(お話を伺った方)
エコー電子工業株式会社
執行役員 ソリューション事業部 事業部長
守 正幸さん
(福岡・IT・従業員数 約300名)
※本記事は取材時点(2025年11月)の情報に基づいて制作しております。各種情報は取材時点のものであること、あらかじめご了承ください。
2000社の顧客リスト。常時アプローチできていたのは3分の1だった
――貴社では顧客管理をはじめとした営業・マーケティング活動のため、2021年に名刺管理システム「Sansan」を導入されたのこと。その背景を教えてください。
守 正幸さん(以下、守): 当社は現在、九州を中心にITソリューションの提案やサポートを行っています。もともとは無線機の販売からスタートしたのですが、会社としての歴史は60年に及びます。
そして約10年前、「接点があるお客様リスト」は2000社以上という数になってきていました。営業部門としてはお客様との接点強化、関係構築を図ろうとするのですが、常時アプローチできていたのは、そのうち3分の1弱の600社ほど。残りのお客様にはアプローチできていない状態が慢性化していました。
ただ「常時アプローチできているお客様の数」といっても、その定義はあいまいなもの。日々の報告で耳にする会社名や案件名などをまとめると全体の3分の1くらいかな?といった感覚値でした。一年間の受注案件のリストを見返すと、数年にわたって「同じようなお客様」が並ぶ状態が続いていました。
一方で、会社としての売上はありがたいことに右肩上がりで伸長。同時に営業部門としての目標も上がっていきます。いよいよ、それまでの600社ほどのお客様とのお取引だけでは、目標達成が難しい状況になっていきました。
ここに至って 「まずは2000社のリストを有効活用しなければ、数年後には売上目標の達成が困難になる」という見立てが現実味を帯び、危機感を持つに至りました。
――お客様リストの課題が認識された際には、どのような改善に取り組まれたのでしょうか?
守: 少し別方面からのアプローチにはなるのですが、10年ほど前にホームページを活用しての商談増加、いわゆるデジタルマーケティングにチャレンジし、その際にMAのシステムを導入しました。
これがうまく機能すれば顧客管理システムとしても使えそう、という見立てがあったのですが、結果はあまりうまくいきませんでした。その後、社内におけるMAシステムの利用も希薄なものに…。
その後、お客様リストの活用について大きな取り組みはありませんでした。日々の業務に追われていたことや、それはそれで営業活動が何とか回っていたという背景もあるかと思います。
営業DXを志向。顧客リストの一元管理からのスタート
――あらためて、名詞管理システムの導入はどのように進んだのでしょうか?
守: 検討を始めたのは2021年の春ごろ、ちょうどコロナの最初の混乱が収まったくらいの時期でした。私はソリューション営業部の部長をしており、いわゆる営業DXへの種蒔きを志向していました。
というのも、先述の顧客リストの課題しかり、組織として顧客管理の一元化ができていなかったからです。営業担当者はそれぞれバラバラに顧客管理・名刺管理をしていました。
組織として導入していた無償の顧客管理システムを使ったり、個人で名刺アプリの「Eight 」を使ったり、前述のMAシステムを使ったり…。結果、お客様との関係性や過去のコンタクト履歴などが組織として見られない、共有できない状態でした。同じお客様に別部署から重複してアプローチしてしまうようなこともありましたね。
そうした中、当時の社長が「Eight」を使っていて「なかなかいいね」といった会話をしたことなどから、名詞管理システム「Sansan」に関心を抱きました。すぐにSansanに問い合わせをして提案を受け、7月ぐらいには役員会で導入を提案。当時はDXと合わせて「データドリブン経営」も叫ばれていた時期で、『Sansanを活用してデータドリブンによる営業活動を推進したい』と説明しました。

――経営陣の反応はいかがでしたか。
守: 費用などについての指摘はなかったものの、導入の効果について質問がありました。「売上がこれだけ上がります」とまでは明言できなかったのですが、名詞管理・顧客リストを整備すれば、デジタルマーケティングによってイベントなどの集客はほぼ確実に増やせます。そうすれば、そこから連なる商談数、受注数は増えるという説明をしました。
そもそもそれ以前はリストをまったく活用できていなかったわけですから 「集客や商談、売上が増えることはあっても、減ることはないだろう」ということですね。社内提案から2か月後の9月には決裁が下り、導入に向けて進めることが決定しました。検討を始めておおよそ4~5ヶ月くらいですね。
問い合わせ対応や提案時の手厚いフォローが印象的だった
――名刺管理や顧客管理システムについて、Sansan以外の選択肢は検討されましたか?
守: まず、いわゆる大規模なSFA・CRMのシステムは導入そのものに時間がかかると考え検討から外しました。社内に点在している顧客情報や名刺情報をデジタルで一元化して、まずは「お客様との接点の見える化」に注力した方が、後々スムーズに進む可能性が高いと考えたからです。
また私の立場上、営業の数字を追いかけていることもあり、できるだけ早く、またわかりやすく成果が見えることを優先した部分もあります。 一旦、顧客情報を一元化して組織に定着させてしまえば、その後からでもSFAやCRMとの連携も視野に入れられる、といった見通しがありました。
そしてスピード感という意味では、Sansanと比較する形で旧来から導入していたMAシステムの別サービスの話は聞きました。とはいえ、いざ提案を受けてはみたものの、普段からフォローやサポートをいただいていなかったこともあり、導入後の不安から本格検討には至りませんでした。
一方、Sansanは問い合わせ対応やその後の提案、導入後のサポートに至るまで、手厚くフォローしていただいた印象です。もし商談時の対応に違和感があれば導入は決断しなかったと思いますが、特に問題を感じることはありませんでした。
トライアルで試したイベント集客で効果を実感
――その後の導入や設定プロセスについて教えてください。
守: 2021年の9月から、本格導入を見据えたトライアルという形で始めました。トライアルにあたっては、複数部門で並行して実施しました。当社の課題感を鑑みると、部署を横断して運用しないと効果が見えないと考えたからです。部署や個人でバラバラの顧客管理を一元化しようという取り組みですので。
また導入にあたっての一連の実務面では、当時の私の部下が中心になって動いてくれました。Sansanとの商談から同席してくれて、初期設定をはじめ各部署を回って名刺登録の働きかけなど、振り返るとまさに導入のキーマンでした。彼女は普段から「デジタル化しないとまずい」「手作業、アナログ運用だと営業に限界がくる」といった課題について、私と共通認識を持っていました。
それこそ、名詞情報・顧客情報の登録は組織として習慣化していく必要があります。積極的に登録してくれる部署もあれば、そうでもない部署もありました。そうした部署に対しては、彼女が機を見て呼びかけ続けてくれました。「今月やりましたか?」と。超アナログではありますが、これは本当に大事な活動でしたね。
また、年配の経営層の中には8000枚という数の名刺を紙で保管されている方もいました。それを社内で登録するのは難しいので、Sansanの名刺取り込みサービスを利用しました。

――トライアル期間中に、効果を実感されたエピソードはありますか?
守: 最も効果を感じたのは、当社が年に1回開催している大きな自社イベントの集客です。
9月からトライアルを始め、イベントは11月だったのでちょうど良いタイミングでもありました。せっかくだから、そのイベントの集客にSansanを使ってみたんです。例年、そのイベントのお客様への案内は、各営業担当がお客様と対面して行ったり、また個別で連絡したりしていました。それをSansanに集約したお客様のデータを使って、メールで一斉に案内したんです。
すると、例年よりも飛躍的に集客数が伸びて、過去最高を記録しました。これは最初にその効果を感じた出来事で、今でもはっきり覚えています。
――営業部門のスタッフの反応はいかがでしたか。
守:「本当にSansanを入れてよかったね」と、私含め皆で喜んでいました。営業スタッフからすれば普段の自分の営業活動をしながら、イベントの勧誘もしなければならないという負荷があったものが、大きく軽減されました。しかも、イベントの集客効果も向上しているわけですから。
データとして見えた営業の実態。お客様との接点が可視化された。
――導入後の効果について教えてください。
守: 一番大きいのは、今まで「感覚値」で語っていたお客様の状況や関係性が、データで見えるようになったこと です。「どのお客様と、誰が、いつ、どのような接点を持ったのか」が可視化されましたし「どのお客様としばらく接点がないのか」といったこともすぐにわかるようになりました。
例えば営業担当者が初めてのお客様に訪問する際は、まずSansanで履歴を調べます。そしてもし、過去に他の担当者との接点があれば、その担当者に話を聞きに行っています。
――「過去に別の担当者がどのような話をしたか」までは確認できないのでしょうか?
守: 当社の場合、それは営業日報の中に情報があるのですが、営業日報を格納している自社製のSFAとSansanが接続できておらず、Sansan経由だと難しいのが現状です。またそのSFAの検索性が高くないことや日報の内容の精度を鑑みると、「以前接点があった担当者に、直接話を聞く」が現状の最適解になっています。
この自社製のSFAについては、新しく別のものを導入するかSansanと連携できるような仕組みにしていくかなど、検討を進めています。
――もともとの課題だった、2000社のお客様リストの活用については?
守: データとして見えたことではっきりとわかったのですが、それまであまりアプローチできていなかったお客様は、ITやDXへの投資が厳しかったり、当社がご提案を差し上げるのは難しいといった事情がある所が大半でした。Sansanを導入したからといって、そうした関係性がひっくり返るわけではありませんので、致し方ない部分はあるかと思います。
しかし一方で、既存のお客様へのアプローチの質・量が強化できたことは間違いありません。既存のお客様への提案や関係性が進化したことは、営業部門としての成果にもつながっています。もちろん、新規のお客様との商談やお取引も増えてきています。

次は商談管理・案件管理の一元化。将来的にはBIツールでの統合分析を
――今後について教えてください。
守: 今後は統合的なCRMやSFAの導入、そしてSansanとのデータ連携を進めていきたいと思っています。Sansanで入口は整備できているので、次はそこから先の商談管理や案件管理ですね。 また中期的には、収支管理や会計システムなどのデータも一元化し、ビジネスインテリジェンス(BI)ツールを介した統合的な分析・意思決定も行えるようにしたいという構想もイメージしています。
ただ、IT業界は移り変わりが本当に激しいです。「去年旬だったものが今年にはもう古い」みたいなことは日常茶飯事。今、本当にこの形でやるのがベストなのか?という悩みは常に付きまといます。
当社の場合、スプレッドシートなどを使って力技である程度やってしまう、やれてしまう所が反省点でもありますが、どこかで決断をしなくてはなりません。いわゆる「データドリブンの営業活動」という当初の目標に向けて、やっとスタートラインに立てたといったところでしょうか。
(撮影:土肥 ツネハル)
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