連載:第49回 総合
インボイス制度、企業の65.1%が順調に対応も「懸念」ありが9割
インボイス制度(適格請求書等保存方式)が10月1日にスタートした。制度の導入にあたって、消費税の仕入税額控除に必要な適格請求書を交付するためには、適格請求書発行事業者の登録を行い課税事業者になる必要がある。そこで問題となったのが、これまで消費税の申告・納付が免除されていた経営規模が小さい事業者やフリーランスなどの免税事業者の動向である。インボイスを発行できない事業者との取り引きは最終的に税負担が増すため、事業者登録を要請されることもあった。また、課税事業者の経理事務も負担が大幅に増すことが予想され、インボイスへの対応にともなう企業の混乱が一部で報じられてきた。
企業の3社に2社がインボイス制度に「順調に対応」、「やや遅れ」は3割
帝国データバンクでは、インボイス制度(適格請求書等保存方式)がスタートして間もない時点で、自社の対応状況を尋ねたところ、65.1%が「順調に対応できている」と回答し、企業の3社に2社が順調にスタートを切っていることが分かった。一方で「対応がやや遅れている」は28.5%、「対応が大幅に遅れている」は3.1%だった。
「社員や取引先へ早めに対処していて、何とかスタートできた」(機械製造)とする企業の声がある一方で、「インボイスの申請はしたけれども、番号の連絡等がない」(鉄鋼・非鉄・鉱業製品卸売)や「振込手数料など、取り扱いについて手探り状態のものが多い」(運輸・倉庫)といった声が聞かれた。
規模別にみると、「順調に対応できている」企業の割合は「大企業」が71.5%に対し「中小企業」は64.2%、「対応がやや遅れている」においては「大企業」24.4%に対し「中小企業」29.1%であった。
「システム変更にお金をかけられない」(建材・家具、窯業・土石製品卸売)や「仕入税額控除に対するルールが細かい。免税事業者対応の税区分など処理内容が増え、少ない人員で対処するには限界がある」(飲食料品・飼料製造)と、「大企業」に比べ「中小企業」で対応が遅れている様子がうかがえた。
9割の企業で制度導入にともなう「懸念事項あり」、とりわけ 「業務負担の増加」が7割でトップ
インボイス制度の導入による懸念事項(現在/今後)について尋ねたところ、「懸念事項あり」の企業は91.0%と9割にのぼった。「懸念事項なし」は6.0%、「分からない」は2.9%だった。
「社内周知に力を入れてきたが、費用の都合上、システムで対応できない部分もあり運用面での不安が残るうえ、大手の販売先でも対応がギリギリまで分からない先もあったため、今後トラブルが起きないかなど、とにかく不安が多い」(機械・器具卸売)や「準備は進めてきたが、後々不備が発覚するかもしれないと不安」(機械製造)と、準備を進めてスタートを切っていても、不安を抱える企業は多い。
懸念事項の内容については、「業務負担の増加(他業務への影響含む)」が71.5%で7割となり、最も高くなった。次いで「社内での理解・連携不足」(51.0%)、「仕入先への対応」(50.1%)が5割台で続いた。そのほか、「請求書の受領時のミス」(36.1%)などが上位にあがった。
「作業時間が大幅に増加し、残業が増えてスタッフが疲弊している」(飲食料品小売)、「仕入先などのインボイスの確認、免税事業者への対応でこれからが大変。業務量は増加する」(金融)と、事務負担の増大などに戸惑う声が聞かれた。
調査概要
アンケート期間:2023年10月6日~11日
有効回答企業数:1,494社(インターネット調査)
調査機関:株式会社帝国データバンク
プレスリリース
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000757.000043465.html
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