設立10年以上で実質死に体状態の「ゾンビ企業」、全国で約16.5万社と推計

「ゾンビ企業」は全国で約16.5万社

具体的に「ゾンビ企業」の定義については、国際決済銀行（BIS）によって「3年以上に渡ってインタレスト・カバレッジ・レシオ（ICR）1未満、かつ設立10年以上の企業」と定義されています。帝国データバンク（TDB）が保有する企業財務データベース「COSMOS1」によると、ゾンビ企業は1万2037社が登録されていました。ここから、現在の「ゾンビ企業」は全国で約16.5万社と推計されています。

これら1万2037社についてその属性を見ると、売上規模では「1億～5億円未満」44.4%で最多、「5000万円未満」11.0%、「5000万円～1億円未満」11.2%を合わせると66.6%と、3社に2社が中小企業に該当しました。

従業員規模別でも、「6～20人」36.9%が最多で、「5人以下」31.0%と合わせて、6割以上を占めています。「業歴に比して収益力が思うように高まらない中小・零細業者がゾンビ企業化しやすい」とTDBでは指摘しています。

また業歴（10年単位・100年間）で見ると、ほぼどの年代も1割程度が存在しますが、最多が「50～59年」15.4%。「業歴30年以上」なら7割以上、「50年以上」なら4割ほどとなっています。なお後継者の有無では、「後継者あり」39.0%、「後継者不在（未定・未詳含む）」61.0%でした。一般的な企業の後継者不在率も同程度ですが、設立10年以上経過している企業としては不安が残ります。

そのほか財務分析によると、ゾンビ企業の「売上高経常利益率」は平均マイナス3.59%で経常赤字の状態。「インタレスト・カバレッジ・レシオ（ICR）」は、マイナス13.50倍と倒産企業の平均をも下回っていました。借入負担を示す「有利子負債月商倍率」も、生存企業の5.41倍に対して、ゾンビ企業は10.39倍と約2倍になっていました。

ゾンビ企業が多いのは「小売業」「東北」

生存企業に占めるゾンビ企業の割合を「ゾンビ企業率」とした場合、全業種平均のゾンビ企業率は11.3%でした。業種別では、「小売業」がもっとも高く17.4%になります。以下、利幅を確保しにくい「運輸・通信業」14.9%、「製造業」12.9%が続きます。

業種をさらに細かく見ると、「菓子・パン類卸売業」26.3%、「酒場・ビヤホール」25.6%、「病院」24.3%、「印刷業24.3%、「スポーツ用品小売業」24.1%などが上位となりました。たしかに“潰れそうで潰れない業種”といったイメージに近いかもしれません。

地域別では、全国平均の11.3%に対して「東北」16.0%が大きく上回ったほか、「中国」13.3%も高い数値を示しています。東北が高いのは、東日本大震災からの復興にともなう資金繰り支援策や返済猶予措置などで、他地域に比べ借入負担が増加していることが考えられます。

全体的に「借入金利」「手元資金」には一定の余裕が見られる半面、「低収益」「過剰債務」が深刻な問題となっていると言えそうです。さらにコロナ禍により、ゾンビ企業が今後大きく増加する可能性も残されています。

調査方法

ゾンビ企業の定義：3年以上に渡ってインタレスト・カバレッジ・レシオ（ICR）1未満、かつ設立10年以上の企業。国際決済銀行（BIS）による。
ゾンビ企業の該当社数：1万2037社（TDBの企業財務データベース「COSMOS1」より）
調査方法：ゾンビ企業に該当する企業データを分析するとともに、帝国データバンクが実施した「新型コロナ関連融資に関する企業の意識調査 」から新型コロナの影響についても把握

プレスリリース
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000522.000043465.html https://www.tdb.co.jp/report/watching/press/p220804.html