連載:第50回 組織作り その要諦
社風も文化も異なる2社が統合、阪急阪神マーケティングソリューションズはいかにして組織をアップデートさせたのか?


関西の生活文化に深く根付き、圧倒的なブランド力を誇る阪急阪神東宝グループ。グループ内の広告代理店とデザイン会社が経営統合し、2020年4月から新しい会社としてスタートを切りました。お互いの課題を補い合うことが期待されての統合でしたが、両社の持つカルチャーは大きな違いがありました。そんな2社が一つの組織として、どのように軌道に乗ることができたのか。その背景と制度やコミュニケーション面での問題点や解決策についてお伺いしました。

写真左)
阪急阪神マーケティングソリューションズ 副社長
宮武 昭宏 さん
写真右)
エンゲージメント局 総務人事セクション 人事部長
深田 浩嗣 さん
異なる強みをもつ2社が統合、しかし……
――それぞれ旧社の事業内容について教えてください。
宮武 昭宏さん(以下、宮武): まず、鉄道をはじめ、不動産、エンタテインメントなど、様々な事業を持つ阪急阪神ホールディングス株式会社を母体とした株式会社阪急アドエージェンシー(以下、旧アドエージェンシー)は、阪急電車などの車内吊りや広告、駅看板の管理・運用など交通広告の総代理機能と、広告代理店の機能を持つ会社でした。
そして、百貨店をはじめとする小売事業を統括するエイチ・ツー・オー リテイリング株式会社を母体とした株式会社阪急デザインシステムズ(以下、旧デザインシステムズ)は、阪急百貨店などの広告媒体等のデザイン制作を行っていました。
――どのような課題があって、2020年4月に経営統合をされたのでしょうか。
宮武: 旧アドエージェンシーは営業力が強みで、獲得した仕事に対してデザインは旧デザインシステムズ等に外注しているものもありました。一方で、旧デザインシステムズはデザイン力に強みを持ちながら、営業力強化に課題がありました。
そこで、デザイン制作メンバー不足と営業力不足という双方の課題を補完し合い、クライアントのニーズにもワンストップで応えられるようになるのではという見通しで統合が決まりました。旧社の体制を引き継いでいるため、当社は阪急阪神ホールディングスとエイチ・ツー・オー リテイリングからほぼ半分ずつの共同出資となっています。グループ内で珍しい形態なので、両グループを繋ぐ役割も担っています。
――経営統合が決まった時の旧2社内での反応はいかがでしたか。
宮武: 吸収合併ではなく、対等な関係性の統合で、メンバーの身分は保証されていましたし、自分達の課題解決につながるものだったので、「これからの成長の可能性を感じさせる」という意見も多かったと伺っています。
――深田さんに伺います。統合後まもなく入社された際、どのような印象を受けられましたか。
深田浩嗣さん(以下、深田): 両社でまったく異なる組織風土だと感じました。
旧アドエージェンシーは鉄道系なので、年功序列の色が濃かったです。男性はスーツの方が多かったですね。
一方で、旧デザインシステムズは、年齢が若くても管理職に登用されるなど、成果で評価されるイメージがありました。クリエイティブ業界なので、朝10時頃に出社し、21時頃まで仕事をするという方も多く、服装もカジュアルで自由。平均年齢も若く、フラットな雰囲気でしたね。
合併後、すぐにコロナ禍で自宅待機や在宅勤務になるなど、組織文化の融合のきっかけがつくれないままで、人事制度も旧2社それぞれの運用を継続している状態でした。同じ会社なのに制度が別物。具体的には、給与の締め日、賞与原資の考え方、人事評価制度、年間休日の数などがそれぞれ違っており、人事部の業務が文字通り二倍になっていました。
お互いでコミュニケーションを取る機会もあまりなく、同じフロアに知らない会社の人たちがいるという感じでしたね。
「環境づくり」から、組織のバージョンをアップデート
――統合後も別会社のような雰囲気が漂う中、着手されたのは?
深田: まずは、2社の制度を統一する「制度・環境づくり」から始めました。勤務時間管理をフレックス制に統一し、それぞれが従来よりも柔軟に働ける制度を整えました。
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