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連載:第4回 入山章栄氏 社外経験を通したリーダー育成

リーダー育成に必要なのは、先の見えない修羅場経験、そして強烈な動機を生む原体験だ

BizHint 編集部 2017年2月7日(火)掲載
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昨年11月に開催されたNPO法人クロスフィールズ主催「社外経験を通したリーダー育成」より、前回に続いて、パネルディスカッションの模様をレポートします。


パネリスト

独立行政法人国際協力機構(JICA)青年海外協力隊事務局 堀内好夫氏 (JICA民間連携ボランティア制度)

株式会社ローンディール代表取締役 原田未来氏 (企業間レンタル移籍プラットフォーム)

NPO法人クロスフィールズ代表理事 小沼大地氏 (新興国「留職」プログラム)

モデレーター

早稲田大学ビジネススクール准教授 入山章栄氏


入山准教授は、成功しているさまざまな起業家は共通して「修羅場経験」と「原体験」を持っていると言います。パネリストたちが自身のサービスを通じて提供しているのもこの2つの原体験です。リーダー育成にはなぜ「修羅場経験」と「原体験」が重要な意味を持つのでしょうか。

「修羅場経験」が不確実なビジネスの世界で決断する力をはぐくむ

入山  3人の話には結構共通項がありますね。1つには、JICAとクロスフィールズは途上国に、ローンディールはベンチャーに人を送っている。そこに 共通するのは「修羅場経験」 だと思います。

私はあるコンサルティング会社と組んで人材の流動化についても取り組んでいますが、そこで一番の課題となっているのも「修羅場経験」という言葉です。

なぜかと言えば、 大手企業の一番の悩みは、これからの経営を任せられる人材がいないこと だからです。日本企業の場合は基本的に事業部の中で同じ仕事をやり続けてキャリアアップしていきますが、経営はその延長上にはありません。

1個の会社を動かすのには答えがない、不確実な世界だからです。にもかかわらず、決断しないといけないのが経営者です。

その決断ができる人材が、大企業には足りていません。 自社という温室の中では育たない からです。

だから大手企業の人事は、こぞってJICAやクロスフィールズのような仕組みを使って社員を修羅場へと送り出し、不確定要素の多い場所で、それでも意思決定して前に進まないといけないという経験をしてもらおうとしているのです。

こうやって言うは易しですが、実際にそれを実現するプラットフォームを運営するというのは大変なことだと思います。

3人ともそれぞれ苦労してやっているのでしょう。そこでお聞きしたいのは、何が一番のモチベーションになっているのか、ということです。

堀内  今の若い人には、外へ出て「他流試合」をすることがもっと必要なんじゃないかという思いでやっています。宮本武蔵が強くなったのは、他流試合を重ねたからでしょう?

入山  宮本武蔵が出てきたのにはびっくりしましたが(笑)、実際に「他流試合」をやってきた50人の方はどういう手応えを持って帰ったんでしょう?

堀内  民間連携ボランティアに参加されたある外食産業の社員の方は、ベトナムのど田舎で経験を積んで戻った後、再び現地へ行ってその拠点の責任者になりました。

ボランティアへ行っている間は、半年ほど毎日ずっと下痢だったと言います。

笑い話のようですが、それくらい厳しい環境に揉まれることで、現地の子供たちがどんな状況に身を置いているか身をもって知ったということです。

そうすることで、 現地の人の目線で考えられるようになった 。こういう人たちを相手に商売しないといけないんだという、原点を知れたということです。

入山  なるほど。私は普段いろんな起業家の方と話す機会があるのですが、今 イノベーターとして成功している人には、共通項として強い原体験を持っている ということがあります。

なぜ、強烈な原体験が必要なのか。当たり前ですが、チャレンジするのは大変なので、それなりのパッションがないとできません。

例えばリクルートで『スタディサプリ』を立ち上げた山口文洋さんは、かつて自身がTACへ通った際、動画で授業を受ける仕組みの不便さを感じたそうです。

そこに技術を取り込めば、もっとうまくやれる。そう考えたことが原体験となり、後に塾へ行けない子供たちに向けて『スタディサプリ』を立ち上げ、大成功を収めるに至ったのです。

ただ、そうした元々の原体験のようなものがない人も、JICAを通じてそうした場所へ行き、半年間お腹を壊すという壮絶な経験をしたことが、新たな原体験になるというわけですね。

原田さんはいかがですか?何がモチベーションとなって『LoanDEAL』をやっているのでしょうか?

原田  僕は新卒でベンチャー企業に入社し、結果的に13年間勤務しました。

長くいると組織への愛着は増していきますが、一方でだんだんと自分の成長実感がなくなっていきました。

このまま井の中の蛙で終わるのは嫌だと思って、カカクコムという企業に転職しました。

カカクコムは事業規模でいうと前職の10倍くらいの大きさなので、マネジメントスタイルもビジネスモデルも全然違います。

そこではいろいろな経験をして成長できたと思っているのですが、同時に、1社目でもまだまだやれることがあったんだなということにも気付かされ、後悔が湧いてきました。

転職したことで築いてきた信頼関係が一度リセットされてしまったし、会社にとっても損失だったかもしれない。

そういう自分自身の問題があったから、ローンディールを始めました。

入山  まさに原田さん自身の原体験があって、『LoanDEAL』が生まれたんですね。では、「留職」プログラムを運営する小沼さんはどうですか?

小沼  青年海外協力隊で行った先と帰ってきた後で、2つの景色を見ました。

シリアでは2000人くらいの住民の方がいる村に住んでNGOで働いていたのですが、現地の村人やNGOの職員たちは皆、強い「想い」を持ち、やりがいを感じながら一生懸命に働いていました。

一方で日本に帰ってきて就職していた学生時代の友達と再会したら、元々ものすごく熱い気持ちを持っていた彼らが、大企業に染まってすっかり冷めてしまっていました。

その2つを比べた時に、働くってそんなに冷めた気持ちでやるものじゃないだろう、1回でいいから会社を飛び出して社会課題の現場を見てきてほしいという思いになったのが始まりですね。

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