会社は社員のためにある。赤字経営を立て直した社長が交わした社員との「約束」とは

株式会社ウエダ本社
代表取締役社長　岡村 充泰さん

1985年 繊維専門商社瀧定株式会社に入社し、1993年 30歳で独立創業。2002年 ウエダ本社代表取締役社長に就任。2003年より負債を整理し、2008年には無借金状態を達成。同年より京都流議定書イベントを主催し、京都への問題提起として毎年開催している。

「潰してくれ」と言われたが…赤字経営を再建することに

――まずは貴社の事業内容と岡村社長のご経歴を教えてください。

岡村 充泰さん（以下、岡村）： 当社は1938年に文房具の卸として母方の祖父が京都市下京区に創業し、コピー・OA機器・オフィス家具など「オフィス」に関わるサービスの提供をしています。創業80年を超えた現在では「働く環境の総合商社」として、より多くの方が“いきいきと働ける場”を増やしていくことを使命として取り組んでいます。

私は大学卒業後に繊維商社に就職し、30歳で独立しました。ウエダ本社は家業ではありましたが、私は弟なので継ぐ前提はなく、ウエダ本社に訪れた最初のきっかけは、自分の商売での売り込みだったんです。

何度か会社に来ているうちに、 当時の子会社の代表たちから「（親会社である）ウエダ本社が大変です！　もう潰してください！」と相談を受けました。

穏やかではない相談に何事かと思いましたが、話を聞くと彼らは経営がボロボロの親会社を後始末して、自分たちの子会社で独立しようと考えていました。社員でもない私がいきなり入っていくわけにはいきませんから、ひとまずはということで、ウエダ本社に非常勤の取締役として入ったのがすべての始まりでした。

――実際に取引先の立場から内部に入ってみて、どのように感じられましたか？

岡村： 「潰してくれ」とのことだったので、もう手の施しようがないところまで来ているのではと思っていました。

確かに数字は悪いのですが、蓋を開けてみると、改善を図った痕跡がなかったんです。まだまだやれることがあると感じて、社内の改革を始めました。

会社が良くなればいいだろうと思っていたのですが、私に「会社の後始末を」と頼んできた子会社の代表たちとの思惑とは違っていたようで……。彼らが一番やってほしかったのは、文字通り「ウエダ本社を潰すこと」だったんです。しかし私が再建に向けて動き出してしまったので、彼らは反目して外に資産を移していく画策などまで行なって大変な騒動になっていきました。

――ご自身の事業もあったにも関わらず、残って改革を続けられたのですね。

岡村： 非常勤の取締役という立場でしたが、このまま私が身を引いたらウエダ本社は本当に倒産してしまうだろうなと思いました。そうなると、社員や仕入先の皆さんはどうなるんだろう、と。私自身もここまでお膳立てをしてきたのに、途中で裏切ることはできないし、家業でもあるので、もう逃げられない。

自分が社長になるしかなかったんです。 当時は子会社を含め約200名の社員がいましたが、唯一儲かっている子会社が反目していたので、思い切って規模を縮小することにしました。SIerの子会社の売却や営業譲渡をして、最終的には1/6くらいまでに縮小させました。当時の社員には売却先への異動か縮小したウエダ本社に残るのかの選択を、酷なことに一週間でしてもらわなければならなかったので、こちらからは人選はせず、残ると言ってくれたメンバーに合わせて、今後の展開を考えることにしました。

それぞれ、売却先への異動や転職を選んでいきましたが、この時には改めて社員の生活を背負っている責任の重さを痛感しました。

“社長の約束”を公開し、社員との公正な関係性を構築

――再スタートの際は、具体的にどんなところから着手されたのでしょうか？