「つまらない」のド直球で思い知った。老舗の20年後を描くのは、いなくなる現・管理職のはずがない。

株式会社 高田工業所
2040みらいプロジェクト プロジェクトマネージャー
経営企画部長　横山 禮士さん

一般社団法人日本デジタルトランスフォーメーション推進協会
代表理事　森戸 裕一さん

組織の活力が伝わってこない。会社の未来を考えるプロジェクトがスタート

――貴社では20年後の未来を考える「2040みらいプロジェクト」を進められています。どのようなきっかけで始まったのでしょうか？

横山 禮士さん（以下、横山）： きっかけは経営トップの「組織の活力が欠けているのではないか？」という危機感からでした。

そこで、2019年12月に国内・海外子会社も含めた全グループ構成員を対象とした意識調査を行い、その結果からは「組織のビジョンが社員に共有されていないのでは？」という面が見えてきました。しかし、一方で自由記述では本当に多くの前向きな意見があり、これは会社への多くの期待の表れであるとも考えられました。

そこで、ちょうど創業80周年のタイミングだったこともあり、経営トップから 「若手を中心に20年後の創業100周年に向け、組織活力を高めるためのアイデアを出し、会社への提言を作って欲しい」 ということになりました。若手社員が中心となって、このようなことに取り組むのは当社としてはもちろん初めてでしたし、きっかけとなった意識調査を行ったのも、恐らく初めての試みだったと思います。ある意味、経営トップのこの決断はすごいなと思いました。そしてみらいプロジェクトが立ち上がったのが、2020年7月のことでした。

――経営層からはどのようなオーダーがありましたか？

横山： まず、20年後を見据えると、中心になるのは今の若手や中堅の社員です。そういった面からも、彼ら・彼女らが主体的に意見を出してもらいたいと言われました。

そして社長からは直接「高田工業所で働くことに “ワクワク、ドキドキ”を感じられるような提案をしてほしい」と言われました。実際、“ワクワク、ドキドキ”は、このプロジェクトの軸となりましたね。こうしたキーワードがあるのとないのでは、進めやすさに大きな違いが出ていたと思います。

「2040みらいプロジェクト」でまとめられた社内の若手からの提言はホームページにも掲載され、100周年に向けた同社の経営方針や、様々な活動の礎になっている。

――「みらいプロジェクト」に参加するメンバーはどう選出されたのでしょうか？

横山： まずは、自主的に発言しつつも、しっかりと他人の意見にも耳を傾けられ、そしてポジティブに物事を考えられそうなメンバーに、参加を呼びかけました。

とはいえ、私もいろいろな部署の若手と接点が多くはなかったので、社内を良く知っている人たちから推薦やアドバイスをしてもらいました。その上で、年齢や性別、職種などでバランスを取り、人選しました。他にも入ってもらいたい人はたくさんいましたが、泣く泣く16名に絞らせてもらいました。

声をかけたメンバーはみんな、最初は驚いていましたね。全員が私と面識があるわけでもないですし「一体何をするんだろう…」と。しかも、自分の日常の業務で手一杯な上にプロジェクトにも参画することで、不満に思った社員もいたかもしれません。

ですので「会社の未来に向かって、より活力を上げていくために協力してほしい」と素直にお願いしました。アウトプットのイメージが明確にない中での声掛けです。どうしても漠然としたものになってしまいます。

しかし振り返ると 「ゴールが定められていないプロジェクト」に「普段の仕事では接しない仲間と取り組むこと」。それ自体が、私やメンバーにとって貴重な経験 となりました。

はじめて作った未来図に一言…「つまんないね」。

――プロジェクトでは何から始められたのでしょう？