50名もの離職者を見送り、目が覚めた。どん底で見つけた「組織でいちばん大切なこと」

株式会社ゆうぼく
代表取締役　岡崎 晋也さん

1985年愛媛県西予市生まれ。小学校6年時より北海道に移住し、函館工業高等専門学校を卒業。大手化学メーカーに就職し、システムエンジニアとして5年間勤務。2013年に家業である株式会社ゆうぼくに入社。3年間で売り上げを2倍に伸ばしたことなどが認められ、専務を経て2016年代表取締役に就任。2019年11月には、サイボウズ株式会社主催「kintone AWARD2019」においてグランプリを受賞。

地方でも多くの学生が集まる中小企業。その秘密は…

――貴社は地方の中小企業でありながら、若者が集まる企業としても注目されていますね。

岡崎晋也さん（以下、岡崎）： 当社は1980年、愛媛県西予市宇和町という小さな町で、父が創業しました。「はなが牛」というオリジナルブランド牛を、自社牧場で育てています。精肉・加工品販売店として県内3店舗、ステーキレストランも2店舗運営しています。いわゆる「6次産業」を手がける会社です。

新卒採用に取り組み始めたのは2017年からです。とはいえ愛媛県は地方都市ですし、その中でも西予市はかなりの田舎。新卒採用をやっていても、なかなか応募してもらえないんですよね……。そこで当社が注力したのが 「インターンシップ」。 学生にとっても会社にとっても成長につながり、プラスになることを重視して内容を検討し、5日間の牧場運営を通じて、生産・加工・販売までの一連の流れを体験できるプログラムを作りました。

その企画が、株式会社マイナビが運営事務局をつとめる「第3回　学生が選ぶインターンシップアワード」で入賞。全国から361法人482プログラムの中から 「学生の社会的・職業的自立に貢献した」と認められる10社 に選ばれたんです。

現在従業員は正社員が19名、パートを含めると約45名です。新卒入社の社員は8名で、正社員の中では4割以上を占めています。インターンシップでしっかりと当社の価値観を伝えるようにしているので、離職者はほとんどいません。

――そもそも新卒採用に注力されようと思ったきっかけは何なのでしょうか？

岡崎： 僕はアトツギとして2013年に入社したのですが、うまくいかないことばかりだったんです。当時「今いる従業員を変えよう」とさまざまな制度や福利厚生を新設したのですが…、合計で50名もの退職者を見送ることになりました。

その経験を経て、僕は「人は変えられない」という自分なりの気づきを得ました。そこで、採用を見直すことで 「同じ価値観を持っているメンバーを集め、新たな価値観を作っていくほうに注力していきたい」 と考えたんです。

会社のために「改善提案書」を作成。売上は2倍になったものの…

――岡崎社長の入社当時の状況について、詳しくお聞かせいただけますか？

岡崎： 会社の業績は、右肩下がりでした。理由は明白です。精肉売り場には段ボールが山積みになっていて、あえて作業場が見えるように造られたガラス張りの壁は、従業員用のメモで覆い尽くされていました。値札にも、裏紙が使われている。極め付けは、「自社牧場の牛を使った、無添加の加工品」というすごい商品力があるのに、そのことを従業員が知らない。当然、お客様にも伝わっていません。

人材を育成する体制も無いし、労働環境も良くない。人もどんどん入れ替わっていて、ベテランの従業員がいないような状況だったんです。

――その状況を見て、何か対策を取られたんでしょうか？