close

はじめての方はご登録ください(無料)

メニュー

BizHint について

カテゴリ

最新情報はメールマガジン・SNSで配信中

連載:第1回 経営SaaSイベントレポート2021

AIも導入だけでは効果は出ない、成果につなげる3つの視点

BizHint 編集部 2021年7月31日(土)掲載
メインビジュアル

AIをビジネスに導入する動きが昨今目立ちます。高度化するAI に期待する一方、代替による雇用の減少問題への不安も尽きません。AIを導入すると、働く現場で何が起こるのか。その予測と生産性につながるヒントについて、株式会社ビジネスリサーチラボ代表取締役 伊達洋駆さんが語りました。本記事は、同社によるオンラインセミナー『AIとこれからの働き方』の模様についてレポートします。

メインビジュアル

IT導入と生産性向上の間には、必ず通るプロセスがある

情報技術(IT)は主に1970~80年代に産業への応用が試みられるようになりました。ITに投資すれば生産性が高まるという予測から、企業がこぞってコンピュータを導入したことで広く普及したのです。IT導入による生産性向上は、1990年代後半や2000年代に入ると統計上でも確認されるようになりました。

なぜ、導入から生産性向上までにタイムラグがあったのか。それは、ITを導入した組織の中で「何か」が起きた結果、生産性が向上するというプロセスを踏んでいたからです。


このプロセスで言えば、AIを含む高度なITについてはまだ開発と導入の段階にあって、成果が明確に現れている分野はさほど多くありません。つまり、「何かが起こる」段階にいるわけです。

高度なITを導入しても、現場でのプロセスが上手くいかないと生産性は向上しません。ではIT導入後、現場で働く人たちには何が起こるのでしょうか。

ルーティンタスクが代替されて、人の仕事はノンルーティンへと変わる可能性

労働経済学のタスクモデルの研究から、ITが導入された現場ではタスク(作業)の性質が変わることが明らかになっています。ルーティンタスクというのは、記録や計算、選定、並び替え、反復的な顧客サービス、組み立てなど。これらの作業をITが担うようになります。一方、ノンルーティンタスク(非定型業務)は、ITと補完的な関係にありました。

このような変化によって、人が担う仕事の性質が変わる可能性があり、雇用への影響も考えられます。『雇用の未来』と訳された有名なレポートを紹介しましょう。アメリカにおける702の職業がITに代替される確率を算出していますが、47%の職業が66%以上の確率で情報技術に代替される可能性があるとしています。日本でも『半分の仕事はなくなる!?』といった見出しで紹介され、大きな波紋を呼びました。

ただし、このレポートは3つの点から慎重な解釈が必要です。まず、機械学習の研究者が代替可能性を主観的に予測していること。次に、情報技術の価格が考慮されていないこと。技術上は代替が可能でも、高額だと普及しません。最後に、702の職業にない新たな職業が生まれる可能性があること。高度化したITが普及していけば、そこから新しい雇用が創出されます。

「職業の半分がなくなる」というのは言い過ぎだとしても、ルーティンタスクが減ることは事実です。『日本の人事部 人事白書2020』のなかの私が監修したHRテクノロジーに関する調査では、約半数の企業がHRテクノロジーによって人事のルーティンタスクが少し減少したと答えています。

ルーティンタスクが減れば、その時間を人にしかできないノンルーティンタスクに振り分けるようになります。私と慶應義塾大学の山本勲先生が共同で行った営業のAI導入調査では、営業先リストを自動作成するAIを構築したことで、ルーティンタスクの時間を顧客とのコミュニケーションである商談などに充てる事例もありました。


特に日本の労働市場にはOECD諸国と比べてルーティンタスクが多く残っていると指摘されています。ITが進展してAIが導入されていくと、どこかの時点で、今私たちが行っている業務は大きく変化する可能性があります。

ユーザーの利用を促すのは「使いやすい」「役に立つ」「理解しやすさ」

ルーティンタスクを減らすには、その前提として導入したITを従業員がしっかり利用する必要があります。ただし、自社に導入したITを従業員に使ってもらうことは簡単ではありません。

人がITを利用する条件は3つあります。まず、 利用への意図があること。 ITを利用しようと思うから利用する、これは当たり前の話です。次に、利用への意図を高めるために、 有用性への知覚があること。 役に立つと感じるから利用しようと思うわけです。最後は、 使いやすさへの知覚があること。 使いやすいと感じるから役に立つとも思うし、利用しようと思います。特に重要なファクターは「有用性」と「使いやすさ」の2つで、これは現場でユーザーに対して促すことができます。

有用性を促すには、利用した結果のフィードバックがあること。使ってみたけど、効果が分からないシステムでは有用性を感じられません。また、周囲に対する印象が高まったり、より良い地位になったりするなど、ユーザーにとってメリットがあると有用性を感じやすくなります。

一方、使いやすさを促すには「アクセスしやすい」こと。例えば、PCやスマホなど様々な媒体から簡単にアクセスできれば使いやすいと感じます。そして、上司のサポートがあること。上司がITを使うための知識や時間を確保してくれると腰を据えて利用でき、使いやすいと感じます。

その他に、ITシステムで何をどのように処理しているのか、ユーザーがおおよそ理解できると利用されやすい。AIの導入調査でも、複数の会社が「ブラックボックス化」を避ける工夫を行っていました。

ブラックボックス化とは、AIの情報処理で何が起きているのか分からない状態のことです。何を計算しているのか、その意味は何か、などをユーザーが理解しやすいシステムにすれば、技術レベルは下がっても利用されやすくなります。

ITを導入したら放っておいても良いわけではありません。従業員に利用してもらうためには、それなりの工夫が必要です。

限定した役割や人による最終決定など、ITへの嫌悪感を減らす配慮も忘れずに

従業員が積極的に利用すればルーティンタスクは減りますが、それでも、AIの判断に対して嫌悪感を抱く可能性があります。

AIに対して人が嫌悪感を抱くのは、ある心理的な習性に起因します。人は色々な「もの」に対して「心の知覚」を持ち、何でもない図形でさえ、意図や動機、情動、人格といった心を感じます。無機質に処理されるアルゴリズムに対しても、人は心があると感じるわけです。

心の知覚には、 痛みや恐怖などの感情を感じる能力(エクスペリエンス)と思考力・推論力・計画力などの知的能力(エージェンシー) という、2つの軸があります。

この2つの軸で様々なものに対する心の知覚を整理すると、ロボットはエクスペリエンスが人より低いものの、エージェンシーは動物と人の中間程度と認識する傾向がありました。もう1つ、神に対する心の知覚はエクスペリエンスがロボットと同様に低いものの、エージェンシーは非常に高いと認識する傾向がありました。つまり、ロボットのエージェンシーを高めていくと、少なくとも心の知覚という観点からは、神に近づいていくという構造が見られます。

また、軍事や医療など重大性の高い意思決定をロボットが下すことに対して、人は不適切と感じる傾向があります。仮に、意思決定の精度を人よりも高め、例えば、擬人化やキャラ化によって好感度をあげたとしても、ロボットの意思決定に対する嫌悪感は減りません。

2019年のHR総研による調査では、AI面接による合否判定について5割強の就活生が「反対」しています。中には「何を基準にして機械に判断されなくてはいけないのか。企業側は採用に手抜きをしたいからロボットを使うのかと気になる」など、嫌悪感むき出しのコメントも見られます。

AIに対する嫌悪感を減少させるには、AIを助言的な役割に限定することと、人が最終決定を下すことが有効 です。私が採用コンサルティングを行った企業でも、AIの選考結果をそのまま使わずに、人が最後にチェックしていました。これはAIを利用しつつも嫌悪感を減らす、理にかなった方法といえるでしょう。

生産性の効果を出すには「利用したくなる工夫」が必要

AIを含むITを導入して生産性の効果が出るまでにはラグがあります。ITにルーティンタスクを代替させるには、人が利用したくなる工夫が必要です。そして、人はITに嫌悪感を抱く傾向にあるため、助言的な役割に限定したり、重大性の高い意思決定に際しては人がチェックしたりする配慮が要ります。AIを導入した現場で起こりがちな問題を解決するヒントとして役に立てばと思います。

(文:川畑文子 編集:上野智)

バックナンバー (1)

経営SaaSイベントレポート2021

気になる続編を見逃さない!
  1. 第1回 AIも導入だけでは効果は出ない、成果につなげる3つの視点

この記事についてコメント({{ getTotalCommentCount() }})

close

{{selectedUser.name}}

{{selectedUser.company_name}} {{selectedUser.position_name}}

{{selectedUser.comment}}

{{selectedUser.introduction}}

仮登録メール確認