連載：第7回 Hop Step DX～デジタルトランスフォーメーションでつかむ次の成長

業務の効率化と残業時間短縮はDXで！　富山の製菓メーカーの改革

BizHint 編集部 2021年8月23日(月)掲載

富山の名産品「白エビ」を用いた「しろえびせんべい」で知られる、富山県南砺市の日の出屋製菓産業株式会社。同社では、基幹システムのリプレイスを機に社内のDX（デジタルトランスフォーメーション）に着手。その結果、業務の効率化や残業時間短縮を達成しています。中小企業のDXを成功に導くポイントを、専務の川合洋平さん、総務部長の土谷浩幸さん、経営推進本部マネージャーの藤本幸士さんに聞きました。

老舗のおせんべいメーカー、非効率が残っていた

川合洋平さん(以下、川合)： 日の出屋製菓は大正13年創業の米菓メーカーです。国産の原材料にこだわり、使用する米は富山県産米100%。昔ながらの伝統的な製法を守った米菓を作り続けています。また、富山湾の名産「白エビ」など地域の素材を使用した「地産地証」のものづくりを推進しています。

南砺市に本社と工場、立山に工場、大阪、名古屋、東京に営業所、富山県内、金沢、大阪、東京、横浜に直営店があります。

──歴史ある御社が抱えていた課題とは、どのようなものだったのでしょうか？

藤本幸士さん（以下、藤本）： 弊社では、2005年頃から社内ネットワーク上のサーバをファイルサーバとして利用していました。メールやスケジュール等のグループウェアは、インターネット接続で利用できたのですが、基幹系システムやファイルサーバは基本的に社内ネットワーク環境からしかアクセスできず、営業マンは一度出社をして資料を作り、外回り営業に行くなどとても非効率な仕事環境でした。

改革推進を進めた経営推進本部マネージャーの藤本幸士さん

このままでは自社が目指す働き方の実現は難しいと判断し、システムのリプレイスを決めました。これまでシステム関連は総務部が担当していましたが、全社的に注力するため、担当部を経営推進部に変更し、県の採用補助金も活用しながら社内SEに特化した即戦力人材を採用することにしました。

採用したシステム担当者がまず必要性を感じすぐに役員会に提案して進めたことが二つあります。ひとつは基幹システムの更新です。これまで、パッケージシステムをベースに自社用にカスタマイズしたものを20年以上運用してきました。これは設計が古く、データの入出力機能も現状に即していないため、他システムとの連携やデータの利活用化を進める上で阻害要因となります。実際こちらは、まだ切替えについて検討している段階です。将来的には受注・製造・販売管理・請求までを統合して、さらに製菓業界独自の受注システムとも連携させたいと考えています。そのために先に解決しなければならない課題に取り組んでいる状態です。

もうひとつは、社内のグループウェア環境のクラウド移行です。要件として重要視したのは、社内ネットワークへの接続を不要とすること、既存のファイルサーバの容量を格納し、かつ容量の増加にも耐え得ることでした。総合的に検討し、「Google Workspace」へ移行させることにしました。これによりGoogleドライブにファイルを移動し、インターネット環境があれば外部からの閲覧を可能にしました。さらにGoogle Meetで打ち合わせをし、社内の連絡にGoogle Chatを活用しています。このような環境をコロナ禍以前に整えていたため、社会的に急速に進んだリモートワーク化に弊社も対応できたのだと思います。

──クラウドへの切り替えで苦労した点は？

藤本： 実際、細かい点を挙げるとキリがないくらいですが、既存データの移行や社内への周知は苦労したかもしれません。

社員はこれまで使っていたグループウェアに慣れているので、現場からは「前の方がよかった」「やりづらい」などの意見が多く寄せられました。会社としては費用や機能、コストパフォーマンスなどを総合的に判断して導入したのですが、すぐに理解を得るのは難しいですね。

また、食品メーカーは工場の製造ラインを止めることができないので、全員集合型の研修はできません。これが大変だった点かもしれませんね。マニュアルを配布するだけでは伝わらないので、システム担当者が現場に出向いて直接レクチャーしました。