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連載:第8回 新規事業の作り方

多くの経営者が見過ごしがちな「知財経営」の要諦。知財活用での勝ち方、守り方

BizHint 編集部 2020年11月26日(木)掲載
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企業の競争力を向上させ、他社との差別化を図るのに有効とされるのが「知的財産(知財)経営」です。知的財産や特許のことを知らない人はいませんが、それを有効に活用できている企業は多くありません。そんななか、近年、知財を経営の核において成果を積み上げているのが、貝印株式会社。2019年には「知財功労賞・特許庁長官表彰」を受賞、知財を活用した国内外の企業活動が高く評価されました。今回は、貝印で知財経営を推進する上席執行役員・知的財産部長の地曵慶一さんに話を伺います。

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貝印株式会社
上席執行役員 経営戦略本部 知的財産部長兼法務部長
地曵 慶一 さん

大手日用品メーカーにて約23年間、知財・法務の担当、部門長職を経験後、2018年4月に同社へ転職、本年6月より現職。2012年米国ワシントン大学ロースクール IP LL.M.取得。


経営者の多くは、知財活用による利益を実感できていないのでは?

――「知財経営」について、かんたんに教えてください。

地曵慶一さん(以下、地曵): あくまで私の解釈ですが 「知的財産を『強く意識した』経営」 だと考えています。どこの会社でも他社の権利を侵害しない形で企業活動は行っています。例えばビズヒントさんのようなメディア業では、著作権や不正競争防止法、商標法などのチェックをしますよね。そういった意味では知財経営はどこの会社でもやっていると言えるでしょう。しかし 「強く意識して」やっているのかどうか。 そこが大きな違いです。

例えばあるアイデアを基にして製品を作るとしましょう。それが(秘匿性を要する)「技術ノウハウ」だった場合、誰か他社の人に知られた時点で秘密ではなくなり、それはもはや「技術ノウハウ」でなくなりますので、秘密情報として守らなくてはならないとなります。ではどうやって守るのか?何年間守るのか?どこで守るのか?そもそも、なぜ守るのか?秘密として守り続けて本当に自社に利があるのか?こういったレベルまで深掘りし、そのアイデアを守り、また活用することを意識してアクションできているかどうか……それが知財経営の尺度だと思います。

――日本企業での知財活用の状況はいかがでしょうか?

地曵: 諸説あり、一概に語るのは難しいので、あくまで私の解釈として。日本の知財の本格的な歴史は、2002年に公布された小泉政権時の知的財産基本法から始まったと考えています。知財立国宣言も出し、まさにこの年が日本の知財の元年だと言われることもありますね。

背景には、少し前の時期にアメリカが不況から回復したことがありました。その要因に知財の活用があったのです。そこで日本政府は知的財産基本法を成立させ、知財の創造・保護・活用――このサイクルを回すことを目指しました。当時は非常に盛り上がり、「知財バブル」という言葉も出たほどでした。知的財産高等裁判所まで作られましたね。

――その後、順調に発展していったのでしょうか?

地曵: いいえ。リーマンショックがこの機運を下げてしまったと言われています。多くの企業でコストの見直しが行われ、知財、特に特許に関する費用もその対象になりました。結果、各社軒並み特許出願の数を減らし、かつて年間43万件と言われていた日本の出願数は、今や30万件という低調さです。

この結果は、別の見方をすれば、日本は「知財立国宣言」をしたものの、知財の重要性や経営におけるメリットが、多くの経営者に本当の意味で染み込んではいなかったことを表しているのではと考えています。

――「知財経営」には至っていなかったと。

地曵: 「強く意識して」経営に組み込んではいなかったのだと思います。私は 「利益実感」という言葉を大切にしている のですが、「役に立っていなくはないけれど、役に立っている、ともはっきり言い切れない…」という感じでは経費は削減されてしまいますよね。経営者が 「役に立っていると実感できること」が重要 です。

地曵: そのためには「いいものができたから、特許を出願しましょう」だけでは発想が足りません。「将来こんな状況が想定されるから、この特許を取ることで、こんな企業利益が見込まれます」。ここまで考えると、企業の中での特許の位置づけ・意味合いが変わってくるかと思います。

知財の重要性を理解する経営者はなかなかいない

ーー貝印の遠藤副社長に共感し、地曵さんは転職を決意されたそうですね。

地曵: 以前より「知財の責任者で終わる」のではなく、その経験を活かして経営に携わりたいと考えていました。とはいえ、多くの企業では「経営」と「知財」は組織上、直接的に結びついていません。たとえば 「知財ができる役員」という募集はほとんど目にすることがない のが実情です。そんな状況下で貝印は「知財ができる執行役員を探している」というではありませんか。正直、最初は 『そんな会社ほんとにあるの?おかしいんじゃないか?』とさえ思ったほどでした(笑)。

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