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連載:第10回 IT・SaaSとの付き合い方

窓口に行かなくても市民に対応できる 「持ち歩ける」市役所をめざして

BizHint 編集部 2020年7月28日(火)掲載
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前回、大阪府八尾市独自のコロナ禍での「八尾市事業者サポート給付金」のkintoneを使ったオンライン申請のシステム化の取り組みについて、お伺いしました。今回は、窓口での対応がメインである市役所のサービスに、オンラインやWebでの対応という選択肢を増やすことで、市民・民間企業・職員の三方よしを実現しようと目指す新しい市役所のあり方について、松尾泰貴さんと中谷優希さんが語ります。

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「今まで」を脱却し、市民の要望に応えるために

窓口対応は平日のみ17時までという現状

中谷さん

原則として、市役所の窓口対応は平日の8時45分〜17時15分と決まっています。しかも、申請主義なので、大半のサービスが窓口に来ないと受けられません。しかし、コロナ禍では、基本的には市民の方に市役所にあまり来ないようにお願いをせざるをえないので、特に困りましたね。

松尾さん

日中、仕事をされている方はわざわざ平日に休みを取って、市役所に行かないといけない。たった1枚の証明書をもらうためだけに……は利便性が良くありません。コロナ禍では密を避けろと言われているさなか、マイナンバーカードの暗証番号の確認で行列ができ「市役所が一番密だ」と揶揄されたりもしています。

「オンライン申請」という選択肢を選べるように

中谷さん

八尾市のサポート給付金も、当初は窓口に来なくてもよい郵送での申請を推奨していましたが……。ただ、郵送料がかかったり返信用封筒の準備など申請者に負担と手間がかかってしまうんです。市民の方々のアクセシビリティ向上のため、この状況をはやく脱却しないといけません。

もちろん、すべてをオンラインだけにするのではなく、窓口で相談しながら申請したいという方は対面で、24時間いつでもオンラインで申請したいという方はWebで、というように、選択肢に幅を持たせ、色々と組み合わせながら業務を効率化させていきたいですね。

松尾さん

市役所に行かなくても、いつでもどこでもサッと申請して書類がもらえるような「持ち歩ける」市役所を実現させることが、市民サービス向上に繋がるのではと考えています。僕も私用で市役所を利用することがありますが、窓口がわかりにくかったり、待合で延々と待たされたり、その割に無料の駐車券は1時間だけだったり……(笑)。

その時間をよりよいサービスを提供するために使ったほうが有意義ですよね。市民も職員も、気持ちよく利用できるという環境をめざしています。

意外に時間を取られる問い合わせの実態

中谷さん

実は市役所に寄せられる電話での問い合わせは、ほとんどがすごく単純なものなんです。例えば、郵送にまつわる申請では「送料はいくらですか?」という問い合わせがかなり多い。よくある質問をQ&Aにまとめて、PDFをホームページ上で公開しているのですが、見ている方はあまりいません。

簡単な質問にすぐに答えられるようにポップアップで表示されるようなチャットボットなどがあれば良いですね。ちょっとしたことを聞きたい方に手を差し伸べるような仕組みを作っていきたいですね。

デジタルシフトで市民の声をより身近に

松尾さん

サイボウズさんとの連携協定を結んだ最初の頃に、市民の声を施策に活かすという課題をどうすれば解決できるかというワークショップを行いました。人事に掛け合って、最前線の現場にいる職員に研修として組み込んでもらって、日々聞こえてくる市民の皆さんや団体の声をいかにデジタルシフトしていくかを考えてもらいました。

人びとの相談や悩みを解決するのが仕事の本質

松尾さん

僕は自分の担当業務として、企業の相談や悩みを解決する事業立案、ビジネスマッチングを提案することに注力しなければいけません。しかし、庁内業務や自分たちの作った管理業務にさかなければならない時間が多いのも事実です。

これらを簡素化すれば、本来の仕事に集中しながらも定時で帰宅できる職員も増えるのではないでしょうか。庁内で起こる部署間での「情報の分断」という課題解決のためにも、ITツールを用いた仕組みづくりは必要だと考えています。

中谷さん

行政では、議会や政策立案などの「資料づくり」が仕事の比重として大きいんです。Excelなどを使って、いちいち数値を打ち込んでグラフを作るのは案外時間がかかりますし、そういった作業が苦手な人もいます。

kintoneではクリックするだけでグラフを作れますし、件数や減少率など数値もすぐにわかります。画面をスクショするだけで立派な資料になるので、業務のお助けツールとして利用しています。

「これから」の市役所を考える

「開疎」な市役所ってなんだろう?

松尾さん

今後の社会のあり方を「開疎」というキーワードでYahoo!の安宅さんが表現されているように、「密」から「開放×疎」へ移行するのではと思っています。「開疎」な市役所となると、24時間利用できるオンライン申請やQ&Aを充実させる必要がありますよね。

庁内でも少しずつITツールを用いたDXを促進したい

松尾さん

世の中では、DX(デジタルトランスフォーメーション)という言葉も浸透してきましたし、新しい動きもたくさん起きていますが、庁内ではまだあまり意識されていないように感じます。外との情報の格差は補っていかないといけない。

中谷さん

kintoneを使用したオンライン申請を通して、自分の知識をつけることができたので、DXの必要性を強く感じます。部署内でも今回の取り組みはとても好評でした。

今までだと「システム化はハードルが高い」と出来ない理由を探してしまい進展しにくかったのですが、これからは今回の事例をふまえて議論をスタートできるので、少しハードルが低くなったのかなと思います。

松尾さん

僕自身は以前からIT化を促進する呼びかけを積極的にしていましたが、賛同してくれる職員があまりいなかったので、中谷さんやその部署を巻き込めたのは嬉しいです。

中谷さん

緊急事態宣言が出た後、可能な限り在宅勤務という指示が出ましたが、ツールも何も配布されていないので、ほとんどの人が出勤せざるをえなかったんです。在宅勤務が可能だったのは松尾さんくらいです(笑)。普段の取り組みもあり、ITツールを駆使して柔軟に対応されていましたね。

もちろん、すべての業務を在宅でというと難しいですが、もう少しDXを進めて、外からでもアクセスできるような環境を整えていかなければと考えています。

公務員ならではの人件費の捉え方と異動サイクル

中谷さん

「徹夜して人海戦術でやりました!」というのが美談として語られることもありますが、民間企業であれば事業費は人件費込みで考えられるのに、行政では人件費が度外視される傾向があります。

確かにシステム導入自体はランニングコストがかかりますが、結果として、人件費を抑えられるという形でのコストカットができますよね。でも、現状だとみんなのコストの考え方に人件費が入ってないことが多いんですよ。

松尾さん

良くも悪くも、縦割りなので、人件費は事業費ではなく総務費に入っています。行政は販管費等も入らないので、僕らが実働していても事業によっては人件費の計算が入っておらず、ゼロ円の価値ということもあります。

中谷さん

私たちの組織では、3年から5年の異動サイクルで、部署が変わると制度も一変するので、慣れるだけで1年はかかりますし、3年で課題解決までをこなすのはほぼ不可能です。残りの2年間を走り続けたら、また新しいところでスタートできるという考え方もできるので、変わろうとエネルギーを使うより、現状維持でストレスを感じないようにしている人もいるのかもしれません。

この社会の変化をきっかけに、市役所全体が「変わろう!」という機運に乗ってくれればいいなと思っています。

松尾さん

変わろうとするのではなく、変わらないという選択肢を選んでしまっているんですよね。庁内で交渉したり、ターゲットを見定めて目標を立てたり、小さなプロジェクトを考えたり……ということが苦手な職員も多く、去年やってたことをそのまま流したり、目の前の業務を捌くだけになっている。

業務改善できるところはITツールやシステムをどんどん導入して、本来時間を割かないといけない業務に注力したうえで、残業もなくなればベストです。

何かを変えたからといって、給料があがるというわけではないですが(笑)、市民との関わりの手段が変容していくなかで、双方が喜びや幸せを感じられる環境をつくっていきたいですね。


(取材・文:山國恭子 撮影:濱田智則 編集:上野智)

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