デジタル変革の投資を最大化するには事業部間の連携が必須。競い合いは業績低下につながる恐れも
アクセンチュアの最新調査「デジタル変革の投資を最大化する5つの指針:部門の枠を超えたコラボレーションがもたらす効果」によると、デジタル変革(DX)に取り組む多くの企業が、主要事業部間の連携不足によりプロジェクトへの投資効果を十分に得られていないことが判明しました。経営幹部のうち、日本企業の72%(グローバル全体で75%)が、「デジタル変革において、事業部門同士が協力し合うのではなく、むしろ競い合うことが多い」と回答しており、部門間調整によって発生する無駄なコストが増大し、収益を引き下げている現状が伺えます。
デジタル投資を増やした日本企業でコストに見合う利益が得られていない
多くの企業で、特定技術に対する投資が重複することがあります。これは往々にして、部門間の協力と連携が欠如していることが原因で、結果として無駄なコストを生んでいます。
2017年から2019年にかけて企業がデジタル変革への投資を増やしたことで、日本企業のコストは5.4%(グローバル全体で約6%)上昇しました。これらの日本企業は、デジタル変革への投資によって年間収益を13.2%(グローバル全体で11.3%)増加させることを見込んでいましたが、実際には平均5.3%(グローバル全体で6%)の増加にとどまりました。
調査では日本の経営幹部の72%(グローバル全体で64%)が、「デジタル関連の投資が企業の収益を引き上げることはない」と回答しています。
チャンピオン企業の特徴
今回の調査では、部門の枠を超えたコラボレーションに成功している企業を「チャンピオン企業※1」と定義づけ、その特長を分析しました。チャンピオン企業は調査対象の日本企業の13%(グローバル全体で22%)で、デジタル変革によって高い価値を生み出すために、事業部間の連携に注力しています。
※1以下の2つの要件を満たした企業を「チャンピオン企業」と定義しています。 1) 2017年から2019年に、部門の枠を超えたデジタル変革投資の取り組みが収益に及ぼした影響が業界平均を上回っている。 2) 同3年間の収益成長率が同業他社を上回っている。
チャンピオン企業のデジタル変革による収益は、その他の企業の2倍
2017年から2019年に事業部門のデジタル変革を推進した結果、チャンピオン企業(※1)はその他の企業に比べて大幅に業績を向上させたことが分かりました。日本のチャンピオン企業のデジタル変革による収益は27.7%増加しており、その他の企業(11%)の2倍以上にのぼります(グローバル全体ではチャンピオン企業27.1%に対してその他企業6.6%で、4倍の収益)。
チャンピオン企業のEBITはその他の企業の2.7倍
また日本のチャンピオン企業は、その他の企業のおよそ1.6倍(グローバル全体1.5倍)もの投資をデジタル変革に向けて行っており、EBIT(支払金利前税引前利益)は19.8%(グローバル全体27%)増加しています。一方、その他の企業のEBITは7.3%(グローバル全体2.1%)に留まっています。
チャンピオン企業が取り組んでいること
チャンピオン企業では、すべての部門責任者が課題を把握している
チャンピオン企業では、事業戦略の中に全社規模でのデジタル変革の実行計画を組み込んでいます。また、すべての部門責任者が課題を把握し、解決に対する責任を負っているようです。日本のチャンピオン企業の80%(グローバル全体82%)は、「デジタル変革全体を統括し、各プロジェクトを成功に導く経営幹部がいる」と回答しています(その他の日本企業72%、グローバル全体66%)。
チャンピオン企業では、部門間連携を促すプロジェクトに取り組んでいる
チャンピオン企業では、IoTデバイスの管理やエンジニアリングデータのデジタル化など、従業員同士のつながりや部門間連携を促すプロジェクトを優先して取り組んでいます。またチャンピオン企業では、デジタルソリューションとプラットフォームの相互運用を実現しています。グローバルのチャンピオン企業の71%が、「複数のデジタルプラットフォームを連携してコミュニケーションを活性化している」と回答しています。
また、事業計画を推進する情報技術と、製造や運用を制御する運用技術の連携に関して明確なルールを策定し、実践しています。日本のチャンピオン企業では、スマート工場・設備保全(50%)、デジタルスレッド(製造全工程のデジタル化、45%)、クリーンモビリティ(環境負荷の低いモビリティ、40%)といった分野に優先して取り組んでいるようです。
調査概要
調査方法
調査レポートは、公開されている財務情報のほか、R&D、エンジニアリング、生産、サプライチェーンの各部門の企業幹部1,550名 を対象としたアンケート調査に基づいて作成しています。アンケートは、年商10億ドル以上の企業(11カ国14業界)を対象に2020年2月に実施しました。
調査対象業界
航空宇宙・防衛、自動車、自動車部品、化学、消費財・サービス、ハイテク、産業機器、ライフサイエンス、医療機器&テクノロジー、金属・鉱業、石油・ガス、その他天然資源、半導体、公益事業
調査対象国
日本、オーストラリア、ブラジル、カナダ、中国、フランス、ドイツ、イタリア、スペイン、イギリス、アメリカ
プレスリリースhttps://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000253.000019290.html
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