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連載:第10回 老舗を 継ぐということ

完全年功序列、日本一綺麗を謳う青果仲卸に求職者が殺到。伝えるのは「○○ないこと」

BizHint 編集部 2020年6月3日(水)掲載
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京都中央卸売市場内にある青果の仲卸業、万松青果株式会社。卸売市場での取引高が年々減少し、仲卸業者数も減少している中、万松青果はこの10年間増収増益を続けています。 「完全年功序列・家族主義・日本一綺麗な仲卸」を標榜するレガシーな業態でありながら、求人募集の際には応募が殺到するといいます。その背景や人材に対する考え方について、専務取締役の中路和宏さんにお話を伺いました。

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万松青果株式会社
専務取締役 中路 和宏さん

京都市出身。23歳から5年間、築地の青果卸売会社でセリ人として勤務後、家業の万松青果株式会社に入社。「従業員を幸せにしたい」という想いを胸に、社長である弟さんと二人三脚で様々な改革に取組む。また「取引先の力になりたい」と中小企業診断士の資格を5年前に取得し、現在は経営者とコンサルタントの2足のわらじで活躍中。


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「夫を面接に行かせます!」。従業員30名の会社の求人に応募が殺到

――貴社の求人募集時には多くの求職者が面接に訪れたと聞いています。

中路和宏さん(以下、中路さん): はい。前回の募集時には2ヵ月で40名の方に面接に来ていただきました。募集が終わった後も当社のホームページを見て「まだ面接できますか?」 と連絡をいただいた方もいました。

同じ時期、同業者では事務スタッフを募集しても応募が全く来なかったと嘆いておられましたので、本当に有難いことだと思っています。

――応募される方の動機はどういったものが多いのでしょうか?

中路さん: 当社のホームページに記載している経営理念や会社の考え方に共感して応募される方が多いですね。応募者本人ではなく、奥様が電話で「夫を面接に行かせますので!」と連絡をいただくこともありました。後日、面接に本人がやってきて「家内からいい職場が見つかった、と聞いて来ました!」と言うのです。あまりにも面白かったので即採用しました(笑)。

実はこれと全く同じパターンで入社した従業員がもう1人います。これらの出来事を通じて、少なくともホームページを見ていただいたその奥様方にとって、当社は 『自分の夫に働いてほしいと思える会社』 として映っているのだろうな、と感じました。

ここまで来るのにいろいろありましたが、結果としてすごくよかったなあと思っています。

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青果仲卸の常識を覆す万松青果のユニフォーム。従業員は、多岐にわたるデザインから好きなものを選べる。

――人材については以前から順調だったのでしょうか

中路さん: いえいえ。従業員が次から次に辞める時代が続き、本当に苦労しました。私自身も30年前の入社以来、長年の間、社員と折り合いが悪くて毎日会社にいくのが嫌で仕方がありませんでした。周りは自分より年上の人ばかりで、自分の考えが全く通じなかったからです。

私は「挑戦したい!変革したい!」と考える人間でしたので、先鋭的な取り組みを進めるのですが、何をやってもすべて裏目。従業員は次々と辞めていきますし、衆目の中で罵倒されることもありました。夜も眠れず本当に苦しい日々で、家内には「今日で会社辞めるから……」と、度々弱音を吐いていましたね。

――最終的に辞めずにここまで頑張ってこられたのは何故でしょうか?

中路さん: 一番大きいのは、後から入社してきた弟の存在ですね。弟は私にとって初めての味方でした。弟は私がやろうとすることに賛同してくれて、「一緒に頑張ろう」という気持ちが生まれました。弟と私は性格やキャラクターが全く違うのですが、 「目指すところが同じ」というのは本当に大切なこと だと思いました。

近年、私は取引先の力になりたいと思い、社長業のかたわら中小企業診断士の資格取得を目指すことを決意したのですが、勉強との両立はさすがに難しかったので、弟に必死に頼み込んで社長を引き受けてもらいました。私にとって、弟の存在は本当に大きくて、心から感謝しています。

――今振り返ると、従業員が辞めていく原因は何だったと思われますか?

この記事についてコメント(4)

  • 投稿を見させていただき、とても勉強になりました。ありがとうございます。
    私がまさに中路さんの若い頃の状況と同じだなと思っています。
    私は、義父の会社(社員20名程)に入社しており、義父は入社後すぐに亡くなっており、4年目で取締役として経営を行っております。変革をしようと思っていますが、年次が上の方が多くおり、うまくいかないことばかりです。私も自分がやりたいことを押し付けているのかもしれないなと気づきました。もう少し、社員にとって何が良いのか悩んで何をすべきか考えてみます。
    また、弊社は、評価制度らしい評価制度はなく、全員で売上を上げて頑張ろうという形でやっていたが、社員のモチベーションが低く、上げるために、成果主義の評価制度を導入しようと思ったのですが、まさにコメントに書いているように、それを導入して「社員全員が本当に幸せになったのか」ということを考えるべきだと感じました。
    また、途中に記載していた「この仕事をしたくてこの会社に来る方は、ほとんどいない」という言葉で、私は、マズローの承認欲求の中でもレベルを上げてもらうために、成果主義を入れようとしたのですが、その前に大事なことは、一人ひとりが全員をフォローできるという「文化」を築き上げないといけないなと思いました。
    多くの気づきをいただき再度、御礼をいたします。
    2020年09月05日
    • 森本さま
      ありがとうございます。
      コメントを読ませていただきました。
      私は「経営者は社員のために働き、社員はお客様のために働く」
      という全く当たり前のことをしてきただけです。
      全てのことに関して、私は常に「社員の期待を上回る」ことを考えてきました。
      時がたつにつれ、私のその姿を見ている社員が「お客様の期待を上回る」ことが徐々にできてくるようになりました。
      まだまだ道半ばではありますが、私が考えてきた「理想の会社」になりつつあると思っています。
      結局、社員は「好きか、嫌いか」で判断します。
      まずは「社員のことを好きになり、自分の持っていない部分を認めて尊敬する」ことだと思っています。
      「うちの社員は凄い!」
      今、私は本当にそう思っています。
      2020年09月19日
  • 素晴らしい理想とそれに向けたアクション。似たような境遇で勝手に励まされた気持ちになりました。笑
    世間では成果主義や年功序列・終身雇用の崩壊が叫ばれているが、まだまだ年功序列・終身雇用を求めている人は多いと思う。
    2020年06月12日
    • 山本さま、コメントいただき有難うございます。
      中小企業における成果主義などの評価制度は、果たして「何のために」導入されたのか。また、それが会社に導入されたことによって売上・利益が上がり、そのおかげで「社員全員が本当に幸せになったのか」を考える必要があると思います。中小企業における成果主義などの評価制度の真の目的は、「頑張っている社員の給料をアップするため」ではなく、「頑張っていないと経営者が思う、社員の給料を下げるため」、そして人件費の総支給額を抑えるために経営者のご都合主義で導入されていることも多いのではないかと考えています。大企業向けの本を読んで、中小企業にそのまま当てはめても、実際には難しい面も多いのではないでしょうか。まあ、私が天邪鬼であることが一番の理由かもしれませんが(笑)。
      2020年06月15日
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