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連載:第3回 流通小売の未来

セブン-イレブンの改革10年を振り返る。マーケットの変化にコンビニはどう対応してきたか

BizHint 編集部 2020年4月1日(水)掲載
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コンビニが改革に迫られています。マーケットは少子高齢化、単身者・共働きの増加が顕著となり、加盟店の売上増加はもちろん、食品廃棄ロス削減なども喫緊の課題となっています。これからコンビニの商品開発や物流システムはどこに向かうのか?スーパーでは決してマネできない大胆な打ち手の数々を、店舗数トップのセブン-イレブンの改革10年を振り返りながら解説します。

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少子高齢化、単身者、共働きの増加

店舗数トップチェーンのセブン-イレブンは長年にわたって「あいててよかった」をキャッチフレーズに、“欲しいときに、欲しい商品を、欲しい量だけ”提供してきた。24時間年中無休で、即食性の高い商品を、欠品させず、十分な量を確保して運営してきた。その機能は現在も受け継がれている

それに加え2009年からは「近くて便利」を前面に掲げる。マーケットの変化だ。 少子高齢化、単身者の増加、共働きの増加。この3つの変化に対応することで成長戦略を推進している。

共働きの比率は年々増加。それに対応した売場づくりが求められる

第1に高齢者にとってコンビニの「近さ」は非常に便利である。特に近年は高齢者による交通事故が社会問題となり、免許の自主返納が求められている。カーショッピングが困難になった高齢者が頼りになる店として、コンビニはさらに身近な存在になる。

第2に単身者のニーズ。コンビニはこれに従来から応えてきた。弁当や惣菜などのデイリーフーズは1人から2人用に量目を設定している。このマーケットは継続して押さえていく。

第3に共働きの増加。女性の就業率が上昇し、遠くのスーパーよりも、近くのコンビニで夕夜間の食事をそろえるニーズが高まる。その需要をコンビニが担っていく形だ。

3つのマーケットを狙った「近くて便利」。09年から18年までに変化はさらに進行した。65歳以上の人口は22.6%から28.1%となり、この比率は世界最高だ。高齢化に加え核家族化も同時に進行し、世帯人数は2.62人から2.28人へと0.34人減少、共働き世帯は同様に54.5%から67.0%へと12.5%も伸長している。

この変化に対応する形で、セブン-イレブンだけではなく、ファミリーマートやローソンもマーチャンダイジングを変化させてきた。例えば、夕食の食卓にのる高品質な「惣菜」類の拡充。袋に入ったハンバーグなどは、家庭では作れない味と、手ごろな価格で利用者の支持を集めた。個食用のレンジで調理できる惣菜は、高齢者や単身者、共働き世帯には便利な商品となった。

マーケットの変化に商品の「買われ方」も大きく変化

こうしたマーケットの変化に対応しながら店舗拡大を図ってきたコンビニ業界だったが、19年春に起こったのが加盟店の24時間営業に対する“反乱”。同調する加盟店も少なからずあった。その根源を探ると『不振店の増加』に辿り着く。人件費を主とするコストの伸びに売上と利益が付いていけない。 売上と利益が追い付かない大きな理由は、変化するマーケットに、コンビニのマーチャンダイジングが対応できていないこと だ。

旧来のコンビニの主要客の典型はこうだ。20代の男性客が残業後に自宅近くのコンビニに立ち寄る。まず入店すると雑誌売場で漫画を手に取り、次に奥のウォークインから缶ビールを1本取り出し、店内をぐるりと回って、大盛りの弁当を選び、最後にレジでたばこを注文する。80年代から90年代にかけて、コンビニの成長期を支えた典型的な客層である。

近年、セブン-イレブンで最も売上を伸長させたカテゴリーが冷凍食品。売場も拡張して強化している

セブン-イレブンが17年に公表したカテゴリー別の販売数量の変化。07年度と16年度を比べると、雑誌は37%、酒類81%、たばこ94%と低調なのに対して、 弁当・惣菜などのデイリー商品は122%、カウンター商品232%、冷凍食品562%(ロックアイス除く)と伸長している。いわゆる「買われ方」に大きな変化が見られた。

特に冷凍食品の売上は、ここ数年を見ても、さらに勢いを増している。デイリー商品の売上の細目は公表されていないが、既存の米飯、調理パン(サンドイッチ)、調理麺に加えて、家庭の食卓にのる惣菜類がオンされていると見られる。コンビニで購入される商品が明らかに変化しているのだ。また、同じ米飯でも、近年はチルド温度帯の商品が女性客を中心に支持を集めている。

冷凍食品と惣菜といった、過去に注力してこなかったカテゴリー、またチルド温度帯の米飯といった、過去に扱いのなかった商品が近年は脚光を浴びている。

大きな流れでいうと、 コンビニ大手チェーンは、商品開発の主戦場を、より低い温度帯へとシフトしている のだ。米飯温度帯はチルド温度帯へ、そのチルド温度帯はマイナス温度帯へと移行して、新たなマーケットを開拓しようとしている。これはどういうことか?

はじめに説明しておくと、コンビニは大きくは5つの温度帯で商品を扱っている。
温かい順に、
1.加温(50℃~80℃以上)
2.常温(室温)
3.米飯温度帯(20℃前後)
4.チルド温度帯(10℃以下)
5.フローズン温度帯(-20℃以下)
となる。

加温の商品には、カウンターで販売している揚げ物(フライドチキン、フランクフルト、フライドポテトなど)、中華まん、おでんなどがある。常温の商品は、店内ゴンドラに置いてある食パン、菓子パン、和菓子、焼き菓子、カップ麺など。その下の米飯温度帯は、おにぎりや弁当、手巻き寿司など。チルド温度帯は、チルド弁当、調理パン(サンドイッチ)、調理麺(そば、うどん、パスタ)、サラダ、惣菜、生デザート、日配品など。フローズン温度帯は冷凍食品(惣菜、麺類、米飯)などだ。

変化の一つは米飯の主力温度帯の変化だ。かつての米飯は全て20℃前後の米飯温度帯で管理していた。20℃前後と常温に近く、販売期限が製造後25時間程度、店頭に並べてから15時間程度で売り切っていた。しかし、セブン-イレブンは09年より10度以下で管理するチルド弁当の販売を一部エリアでスタートさせ、10年に全国に拡大した。当初は米の味が米飯温度帯の商品と比較して、どうしても劣るため、具材をご飯にのせて食べる商品に絞っていた。カレー、麻婆丼、牛丼、中華丼といった丼物であった。その後、米の味を徐々に改良し、ご飯とおかずを別々にしたセパレートタイプも販売できるようになる。 販売期限も製造後、約75~99時間に延長することができた。

10℃以下のチルド温度帯で管理された弁当が主流となりつつある(セブン-イレブンの売場)

セブン-イレブンは、米飯温度帯とチルド温度帯の弁当について、各々の優位性を以下のように挙げている。

米飯温度帯弁当の優位性

・即食可能(温めなくても食べられる)
・焼き具材(炭火などによる高温加熱)
・炒め具材(チャーハンなどIH料理)
・揚げ物(唐揚げなどの食感を維持)

チルド弁当の優位性

・長鮮度(保存性、食シーンの拡大)
・使用食材の拡大(半熟卵、野菜を使用)
・煮込み料理(長時間調理が可能)

これまでのコンビニは、即食ニーズと利便性(コンビニニーズ)に重点が置かれてきた。しかし、これからのコンビニは、即食ニーズに対する食卓ニーズ、コンビニニーズに対するスーパーマーケットニーズへの対応も必要になってくる。

米飯温度帯からシフトする「チルド弁当の優位性」

その意味では、チルド弁当の第1の着目点は、家庭の冷蔵庫で2~3日は保存でき、頻繁に買物できない高齢者、子供を育てながら外で働く忙しい女性などに適していること。2~3日に1度の買物で済ませてきたスーパーマーケットの代替機能をコンビニが持つことができるのだ。

第2の着目点は、セブン-イレブンの16年1月の調査によると、米飯温度帯弁当とチルド弁当の男女購入比率は、米飯温度帯が男性67%、女性33%、対してチルド弁当が男性52%、女性48%。同年の女性来店比率が47%だから、弁当のくくりにおいては、チルド弁当が女性から多く支持を得ている。その理由としてセブン-イレブンは、長鮮度に加えて、野菜を多用した健康感にあると考えている。チルド温度帯は、野菜のシャキシャキ感を維持することができるのだ。

第3の着眼点は「廃棄ロスの削減」。実は現在、この廃棄ロスの削減に最も注目が集まる事態となっている。ここ数年、SNSやネットメディアで、コンビニ恵方巻の大量廃棄が話題になった。チェーン本部が大量廃棄を前提とした指導をしているのではないかと批判も集まった。恵方巻を契機に、毎日の弁当やおにぎり、サンドイッチなども数万円分が毎日廃棄され、負担のほとんどを加盟店オーナーが担っていると指摘され、チェーン本部への批判が相次いだ。

折しもSDGsを国も企業も目標に掲げる中で、食品廃棄の削減は客商売の次元に留まらず大きな政策目標でもある。その意味では、 米飯温度帯からチルド温度帯へのシフトは、加盟店の懐に優しく、チェーン本部の環境対策としても理にかなっており、コンビニの利用客や購買動機の変化にも対応できている。

ただし、「温めなくても食べたい」ニーズは依然として大きい。例えば、飲食店や小売店の少ない行楽地にコンビニ弁当を持ち込む場合は、おにぎり同様に米飯温度帯の弁当が便利である。チルド弁当は「温めなくては食べられない」ので機動的な動きには向かないのだ。 チルド弁当同様に伸長する冷凍食品も同様のメリットを持っている。冷食は商品の改変を除けば、食品廃棄ロスは限りなくゼロに近くなる。利用者も冷凍庫に長期保存できるので、使い勝手の良い商品といえる。

おかずにも酒のつまみにもなる、セブン-イレブンの「おかづまみ」シリーズ

一方で、冷凍食品の販売は、半額セールを常態化させているスーパーマーケットとの差別化を図る必要がある。コンビニは業態特性上、ディスカウントができないため、品質が高く、コンビニに適したオリジナルの商品(プライベートブランド)の開発が求められている。

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