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連載:第7回 慣習に囚われない 改革の舞台裏

ゼロからのリスタート。ピザハットが投資ファンドと挑む「IT×身の丈」の逆襲劇

BizHint 編集部 2020年3月4日(水)掲載
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日本ピザハットは2017年6月、日本KFC(ケンタッキー・フライド・チキン)ホールディングスから投資会社であるエンデバー・ユナイテッドに譲渡され、2019年4月に日本ピザハット・コーポレーション株式会社として生まれ変わりました。大規模な組織である日本KFC傘下を離れたことで、まさに「社内のすべてが変わった」と語るのは同社・マーケティング部長の小田寛さん。経営に参画した投資ファンドとの関わりや、社員・組織の変化などについて、生々しいエピソードの数々を語っていただきました。

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日本ピザハット・コーポレーション株式会社
マーケティング部 部長 小田 寛さん

1979年京都生まれ。同志社大学卒業後、2001年、日本ケンタッキー・フライド・チキン(KFC)株式会社に入社。ピザハット部門に配属となる。ピザハット店長、スーパーバイザーを経て、2009年より本社部門にて業務企画、関東エリア統括長、マーケティング部などを歴任。2017年6月、日本ピザハット・コーポレーション株式会社、コーポレート部長。本社機能の立ち上げ、組織構築、システム改革などを遂行。


大企業子会社の慣習を捨てた。「身の丈にあったやり方」へマインドセット

──日本KFCから離れて2年が経ちました。社内で大きく変化した部分はありますか?

小田: すべてですね!(笑)……どれから話しましょう?

──なるほど(笑)。では、多くの業界で課題となっている「人材」についていかがでしょうか?

小田: はい。昨今、外食産業での人材採用は特に厳しくなっていますが、当社もその例に漏れません。

そういった状況に対して、当社として大きく変えたことの1つが、「新卒採用を止める」ということでした。新卒採用のために毎年数千万円かけて募集をしたり、大規模なセミナーを実施するといった活動は止めて、『お店のアルバイトを社員にする』ことに注力するようにしました。

──社内で反対はなかったのでしょうか?

小田: 最終的に経営会議で決定しましたが、大きな反対はありませんでしたね。むしろ「それが合理的だよね」と。新卒採用についてあらためて話をした結果、それまでは 「惰性で続けていた」ことに気付いた のです。

すでに何かしらのきっかけからピザハットで働いていて、ピザハットを愛してくれている意欲・能力がある仲間を、社員として育成・採用する方にシフトしたほうが我々らしいし、時代にマッチしているよね、と。

実は、この 「新卒採用を止める」決断ができたことが、KFCの子会社でなくなったことによる1つの大きな変化 なんです。KFCはご存知のように大企業ですが、ピザハットが新卒採用をしていたのは「KFCがやっていたから」という側面があったことは正直否定できません。

『新卒採用』という、いわば大企業の土俵で戦うことは、ピザハットとして得策ではないと判断したのです。 我々には我々らしい戦い方がある、「身の丈に合った」やり方をしよう、とマインドが切り替わりました。 自分たちでそういった決断、アクションができるようになったことは大きな変化と言えると思います。

──「身の丈に合った」とは具体的にどういうことでしょうか?

小田: KFC傘下では、いわゆる『大企業の仕組み』で動いていました。広告を展開するにも大手の広告代理店を介して大々的に行い、社内システムも大規模なものを使用し、社内のルールもキッチリカッチリが徹底されてるという具合です。ピザハットとしての意思決定においても、KFC側にパスをした後、「どの案件が、どこで、誰が、何を判断するために止まっているか……」も見えない状態でした。

それが今は、すっかりスリムになりました。様々なものがデジタルに移行し、結果を逐次検証してPDCAを回す。社内の業務システムはKFCから借りていた大規模なシステムからOBIC7(統合業務ソフトウェア)に変え、サーバもクラウドに。時代に合わせて仕組みを柔軟に変えられるようにしました。 会社としての意思決定も本当にすばやくスムーズになり「変革に頭からNoを言わない」「まずはやってみる」といった社風に変わっています。

高価だったものがより安価に代用できるのであれば、そこで浮いた費用を現場の改善や、人材育成・教育に回すような考え方です。 「ゼロからのリスタート」に近い感覚 がありますね。

──そういった変革はピザハット内部から上がってきたのですか?

小田: いえいえいえいえ。我々だけでは絶対にできなかったと思います。誤解を恐れずに言えば、「おいしいピザを作る!」ことしか考えていなかった我々が「OBIC7」という選択肢を思いつくことなどありませんから(笑)。

これらは投資会社であるエンデバー・ユナイテッドのサポートのおかげです。コンサルタントの方々をはじめ 「経営のプロの知見」を取り入れたからこその変化 です。

「自分たちはいなくなる」。投資ファンドとの関わりで気づかされたこと

──「経営のプロ」の知見…印象的なものはありますか?

小田: 本当に細かい話ではあるのですが「メール」の取り扱いについて。以前はセキュリティの観点から、パソコンに送付されるメールを社用携帯に送信・転送することは原則できませんでした。その理由は「情報漏洩のリスク」があるから。

しかし、エンデバー・ユナイテッドの考えは「クイックに動いて得られる売上・利益と、それができない時の損失を比較してみてください。社用携帯に転送をすることのメリットを考えれば、それをした上で、どうすれば情報漏えいリスクを回避できるかをまず考えるべきでしょう。」というものでした。セキュリティは大事ですが、売上も同様に大事です。

「リスクだけ考えて行動を制限する」ではなく、『リスクとメリット。それらを天秤にかけて行動を決める』。 その判断力と習慣を身に付けるようにアドバイスされたことが印象的でした。

さらに驚いたのが、人材確保。

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