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連載:第5回 IT・SaaSとの付き合い方

高速バスWILLERを支えるITによる安全運行と運転士育成。「子どもに自慢できる職場に」二代目の思い

BizHint 編集部 2020年2月17日(月)掲載
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高速バスWILLER EXPRESSの運行を支える4つの合弁会社の1つ、ベイラインエクスプレス株式会社。採用難・人材不足が叫ばれる運輸業界にあって、低い離職率と着実な採用増で増便・売上拡大が進んでいます。背景にあるのが、二代目社長・森川孝司さんの就任を機に始まった社内改革。ITを活用した安全運行・運転士育成、社員が快適な事務所の建設・移転など、WILLER EXPRESS本体・運輸業界に先んじて邁進する改革の中身を聞きました。

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ベイラインエクスプレス株式会社
代表取締役 森川 孝司 さん

1979年、神奈川県生まれ。祖父、父が経営陣を務めた中日臨海バス株式会社に就職。運転士として技能を磨いた後、同社の管理職に。2012年、同社とWILLER EXPRESS株式会社との合弁会社として設立されたベイラインエクスプレス株式会社に移り、その後、同社の代表取締役社長に就任。


見たくない情報に目を向ける。安全を追求するためのIT・データ活用


――事業内容と社長就任の経緯を教えてください。

森川孝司さん(以下森川): 当社はWILLER EXPRESSの高速バスの運行を担っています。WILLER EXPRESSは本体以外に、合弁会社4社と協同でバスを運行しているのですが、当社はそのうちの1社。WILLER EXPRESS株式会社と中日臨海バス株式会社の合弁会社で、2012年に設立されました。

中日臨海バスは私の家業でもあり、そこで私もバスの運転士をしていました。ベイラインエクスプレス株式会社の設立に合わせ移籍し、運行管理の仕事などを経て、前任の社長だった従弟の後を継ぐ形で2014年に社長に就任しました。

――WILLER EXPRESSの運行会社は、それぞれ個性があるのでしょうか?

森川: WILLER EXPRESSの運行基準・安全基準を満たすことは大前提ですが、内部の取り組みには個性が出てくると思います。その中で当社は、安全のための「先進的な取り組み」への感度が高いと自負しています。

例えば、当社のバスは「モービルアイ(Mobileye)」という安全運転の補助システムを装備しています。前方車両や周囲の障害物との距離などをもとに、運転士に様々なアラートを発して安全運転に寄与します。ドライブレコーダーとも連携し、アラート履歴はもちろん急発進や急加速など様々な運転データが記録されます。 モービルアイはWILLER EXPRESS本体でもまだ採用していません。 (2019年12月時点)

モービルアイやドライブレコーダーのデータは、Salesforceと連携することで誰もが見やすい形にしました。運転士ごと、路線ごと、時間帯ごと…様々な分析が可能です。 運転士それぞれの運転の傾向がわかりますし、組織として取り組むべき課題も明確に なりました。

モービルアイのアラートを集計して改善のポイントを探す。運転士ごとの傾向もわかる。

――WILLER EXPRESS本体も採用していないものを先んじて取り入れる理由は何ですか?

森川: WILLER EXPRESSの運行において、当社は『助っ人稼業』という立ち位置です。もし僕が逆の立場だったら「安全品質が高い会社」「強力な助っ人」に助けてほしいと思います。なので、本体の基準よりもさらに高い安全品質を追求しようと考えていますし、それによってWILLER EXPRESSのサービス全体に良い波及効果が出ればと思っています。

モービルアイやドライブレコーダーなどのツールを導入すると、それまで見えなかったものが「見える化」されます。「見たくなかったこと、聞きたくなかったこと」も含めてです。運転士の中には導入を嫌がる方もいましたが、淡々と導入を進めました。絶対に「安全につながる」と思ったからです。

モービルアイは2019年8月に導入して4か月ほどが経ち、とりあえずの数字・データが揃ってきました。その結果、アラート時のデータなどから逆算して「車間距離は1.2秒以上あける」という当社なりの指標ができました。今度はこの指標を徹底し、あらためてデータを取っていきます。運転士が意識することで、車間距離1.2秒以上をキープできるようになるはずです。一方で、各運転士が1.2秒を割った回数や場所が記録されるので、それをもとに新たな対策につなげていきます。

データや安全を運転士に徹底させるのは、帰社後の1対1の面談

――運転士にはどうやって意識させるのでしょうか?

森川:「毎回の帰社後の一人ひとりとの面談」 です。バス会社でも珍しい取り組みだと思いますが、運転士が帰社すると、教育課の担当者が面談し、その日の運転を振り返ります。モービルアイやドライブレコーダーのデータを見ながらです。アラートなどがあれば録画もされますので、録画は必ず確認しています。

この取り組み以前、会社に戻った運転士は備品を返却して、次の勤務日を確認して帰宅、それだけでした。最初は面談を嫌がったり、イライラしたりする方もいましたが、面談を続けるにつれ、雰囲気が変わってきました。

WILLER EXPRESSでは、バスの運転士の運行を事務所で見守ってサポートする「運行管理者」がいるのですが、この面談を繰り返すことによって、 運転士が運行管理者や会社と一体となって運転をしているという感覚を持つようになってきた のです。あんなことがあった、こんなことがあったと、運転中の話が分かち合える仲間がいるんだ、という気付きが生まれました。

長距離バスの運転中、運転士は何も話すことなく仕事をしていますから「その日あったことを話す場、相手」があると嬉しいものです。今では帰社後の面談を楽しみにしている方もいます。

もちろん、雑談で終わってはいけません。その日の運転データをもとに「より危険を回避するためのポイント」を的確に伝え、運転士に意識してもらうことが面談の担当者としては大切です。こういった場面でも、両者の良好な関係性はプラスに寄与するものと思います。

会社ってこんなことでつぶれちゃうのかな…。安全への「徹底」を誓う

――運行管理者についてもう少し教えていただけけますか?

森川: 運行管理者はどの会社にも存在しますが、当社の場合、 運行管理者が「データ等を見ながらリアルタイムで運転士をサポートする」 点が大きな違いだと思います。 例えば、 WILLER EXPRESSではFEELythm(フィーリズム)を活用 しています。運転士が耳たぶに装着し、脈波の傾向から眠気を察知したら振動で運転士に知らせるものです。それはそれで有効な安全対策の一つではあるのですが、当社ではそのアラートがあった場合に、社内にいる運行管理者が「大丈夫ですか?」とすぐに運転士に声をかけるようにしています。

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